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大東文化大・山内ジャヘル琉人 再三の肉離れから復帰し、夢に向かうラストシーズン

度重なるけがから復帰した大東文化大の山内ジャヘル琉人(すべて撮影・井上翔太)

昨年のインカレ前に右ハムストリングの肉離れを発症して以降、戦列を離れていた大東文化大学の山内ジャヘル琉人(4年、仙台大明成)が、自身のラストシーズンで復活してきた。8月下旬に開幕した第100回関東大学バスケットボールリーグ戦で、ここまで全試合スタートから登場。チームの得点源になっている。

全員が「プライド」を持っているディフェンス

9月4日の専修大学戦。チームの立ち上がりは良くなかった。相手のエース・介川アンソニー翔(2年、開志国際)や上村大佐(たいすけ、4年、能代工業)に3ポイントを沈められ、あっという間に2桁までリードを広げられた。山内はコート上で「もう1回集中しよう」と鼓舞。13-21で第1クオーター(Q)を終えると、続く第2Qから本領を発揮した。

山内が自らドライブで切り込み、バスケットカウントを獲得して点差を縮めると、品田真吾(4年、土浦日大)の3ポイントシュートが決まって逆転に成功。山内と同じく、けがで春シーズンを棒に振った田中流嘉洲(3年、中部大第一)も加わり、その後も確実に得点を重ねた。第2Qだけで31点を稼いで44-32で折り返すと、後半も逆転を許すことはなく、80-65でリーグ戦5勝目を挙げた。

専修大戦の前半、難しい体勢からシュートを放つ

両チーム最多の25得点だった山内は試合後、率直に総括した。「最近のゲームはいつも、前半の入りで様子見をしてしまって、自分たちのバスケットに持っていくまで時間がかかってしまう。今日は徐々にディフェンスの強度を上げて、自分たちの武器であるトランジション(攻守の切り替え)のバスケができていた。ディフェンスに関してはみんな、プライドを持っていて、この夏にはリバウンドと走ることをたくさんやってきたので、それを最初から出すことが今は課題になっています」

小学生の頃から本気で「プロになりたい」

山内の名が知られるようになったのは、仙台大明成で過ごした高校時代だろう。新型コロナウイルスの影響が最も大きかった2020年末、ウインターカップの決勝で東山(京都)との大接戦を制し、自身はベスト5に選ばれた。華々しい競技生活を送ってきたようにも見えるが、中学までは目立った存在ではなかったと言う。

アメリカ・カリフォルニア州で生まれ、1歳の時に親の仕事の都合で沖縄に移り、育った。バスケを始めたのは小学2年のとき。NBAの古いビデオを見せてもらったのが、きっかけだ。「マイケル・ジョーダンなどを見て、本当に面白いスポーツだなと。『僕もこういう選手になりたい』と思うようになって、小学生の頃から『プロになりたい』と本気で思ってました」

小学生の頃からプロバスケプレーヤーになる夢を追い続けている

そこから、バスケに没頭した。小学生の頃の遊びと言えば、公園にあるコートでのバスケ。知らない人たちから「3対3やらない?」と話しかけられることもあれば、その逆もあった。インターナショナルスクールのチームと練習試合が組まれたというのも、「バスケ王国」と呼ばれる沖縄ならではのエピソードだ。ただ、中学時代は「全然結果を残せず、悔しい思いも、つらい思いもたくさんしてきた」。プロになるという夢のため「プレーヤーとして一番成長できるのではないか」と考え、当時仙台大明成のヘッドコーチを務めていた佐藤久夫氏に自らを売り込み、入部がかなった。

離脱している間、自分の体を見つめ直した

大東文化大では頭角を現すのが早く、3年時にはFISUワールドユニバーシティゲームズや李相佰盃といった国際舞台も経験。世代を代表する選手に成長した矢先の肉離れだった。何度か再発してしまい、3年の終わりに予定されていたB1川崎ブレイブサンダースへの加入(特別指定選手)が見送りに。春の関東大学バスケットボール選手権(スプリングトーナメント)にも出場できなかった。

離脱している間は、自分の体を見つめ直し、得られるものも多かったと山内は言う。睡眠は「普通にしっかり取る」ことを目標に、なかなか寝られない時は昼寝で補う。食事に関しては、夜は自分で作る。「最近は毎日一緒なんですけど、ささみと納豆と野菜と、白米とみそ汁」。簡単なメニューだが、継続すると体の調子が整っていくことを実感している。

離脱している間にトレーニングの意味や食事と睡眠の大切さを思い知った

その間、チームも成長を遂げていた。スプリングトーナメントは山内と田中がいない状況ながらも3位となり、山内は「みんなにとって自信になったんじゃないかなと思います。チームとして(2人が抜けていたことを)ネガティブにはとらえていないです」と仲間への頼もしさを語った。

2人が復帰した今、めざしているのは2019年以来となるリーグ戦制覇と2017年以来となるインカレ優勝だ。「4年生として最後の集大成なので、個人としてもですけど、まずはチームとして成長することにフォーカスして、優勝をめざします」。中学から高校に進む際、自ら道を切り開いてきたように、大学ラストイヤーも突破力を発揮して、チームを頂へと導く。

田中流嘉洲もリーグ戦から復帰、チームとして優勝をめざす

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