京産大・壹岐元太 2度目の日本インカレは「表彰台めざす」壹岐姉妹の弟、全国舞台へ
持ち前の加速力でシーズンインから存在感を示し続けている京都産業大学・壹岐元太(3年、石部)は、力強い表情を見せた。9月19~22日に川崎市で開催される日本学生陸上競技選手権大会(日本インカレ)。自身2度目の出場となる今大会の目標は「表彰台」と意気込んだ。
5月に自己ベスト、6月は日本選手権に初出場
壹岐の存在が広く知られるようになったのは、5月の関西学生陸上競技選手権大会(関西インカレ)がきっかけだ。男子200mに出場すると、準決勝で関西学生記録に迫る20秒70をマーク。決勝では惜しくも2位に終わったが、これまでの自己記録を約0秒2更新する準決勝のタイムに、「正直、『まさかここで自己ベストが出るとは』という感じでした」と驚きを口にした。
その後も勢いはとどまることを知らず、6月の全日本学生個人選手権大会では200mで6位と、全国規模の大会で初めての入賞。続く7月の西日本学生陸上競技選手権大会(西日本インカレ)では初制覇を果たすなど、今や関西のみならず、全国区で注目を集めている。
さらに6月には、大学入学時からの目標であった日本選手権に200mと400mの2種目でエントリー。初出場にもかかわらず2種目ともに予備予選を免除され、予選からの出場となった。「緊張で靴ひもが結べないくらい手が震えました」。憧れの舞台に立ち、初めて感じた会場の独特な雰囲気。悔しくも両種目とも予選敗退に終わったが、「大事な場面で自分の走りができないといけないと感じた試合でした」と、来年の同大会へ向けリベンジを誓った。
姉のいちこ・あいこを追いかけ、陸上の世界へ
壹岐にとって今年の日本選手権は、陸上を始めるきっかけとなった人物とともに出場を果たした特別な1戦となった。
壹岐が陸上を始めたのは、12歳のとき。6歳上のいちこ(現・ユティック)、3歳上のあいこ(現・大阪ガス)の姉2人が陸上をしていたことがきっかけで、短距離種目を始めた。それまで野球や水泳など他のスポーツも経験してきたが、「陸上が一番続いていますね」と明るく話す。
しかし、これまでの競技人生が常に順風満帆だったというわけではない。2人の姉が「壹岐姉妹」として全国で大きく注目される中で、壹岐元太本人は結果が出ないことが多かった。
「中学生の時は全く成績を残せていなくて、全部予選敗退でしたね。高校でも1、2年生が出場できる近畿ユースという大会で400mに出て、1度4番になっただけでした」
高校生最後の夏も、200mで近畿インターハイに出場したものの準決勝敗退。全国の舞台に姿を見せることはなかった。
京産大進学が転機 仲間と競り合い成長
転機となったのは、京産大への進学だ。
「大学進学はどうしようかと考えていた時に、声をかけてくれたのが京産大でした。なので、他の選択肢はなかったです」
近年の京産大・短距離ブロックは層が厚く、リレーメンバー争いが熾烈(しれつ)。練習から切磋琢磨(せっさたくま)し合える環境や、頻繁に起こるリレーメンバーの入れ替わりは刺激的だ。特に、高校時代からの同級生である田中颯(3年、石部)の存在は大きい。
関西インカレでは、男子200mで田中が優勝、壹岐が準優勝と、京産大として目標に掲げていたワンツーフィニッシュを達成。男子4×400mリレー(マイルリレー)の決勝には、チームのWエースとして出場した。
心強い仲間や、最大のライバルの存在について、「部員のみんなと練習していて楽しいですし、充実しています。競り合うこともできるので、とても良い環境だと思います」と笑顔で語る。
感じ始めた重圧をパワーに変えて
春先から自己ベスト更新や全国規模の大会への出場などを経験し、手応えを感じ始めた一方で、プレッシャーを抱えることもある。「エントリーランキングが1番だったりすると、『勝ち切らないと』と思うことが増えました」と壹岐。いつも通りの自分の走りができれば勝てると言い聞かせ、レースに臨んでいるという。
現在、壹岐は3年生。迫るラストシーズンへ向けて、日本インカレで結果を残し、弾みをつけたいところだ。
「去年はハムストリングスを痛めていて、緊張もしていたので、自分の走りが全然出せませんでした。今年は良い緊張感を持ちながら、万全な状態で挑みたいです。そのために、けがをしないというところが一番大事だと思っていて、なおかつ調子も上げていきたいです」
大学卒業後も陸上を続けたいという壹岐。今後について「タイムはもちろんですが、大会での成績を重視してきたいと思っています」と強く意気込む。
関西から全国で活躍できる選手へ。プレッシャーを力に変え、大一番に臨む壹岐元太から、目が離せない。