野球

天理大・石飛智洋 大社高校の活躍に「元気もらった」勝負のラストシーズン過ごす力に

天理大の中心打者・石飛智洋は島根県出雲市出身(全日本大学選手権以外はすべて撮影・沢井史)

天理大学の石飛智洋(4年、出雲西)は春の阪神大学野球リーグ戦で首位打者(5割2分8厘)に輝き、外野手部門でベストナインを獲得した。6月に行われた全日本大学選手権では1回戦の東京農業大北海道オホーツク戦と、続く八戸学院大学戦で打ちまくり、2戦で「打率10割」をマーク。チームは4試合を戦ってベスト4まで勝ち進み、石飛自身は大会の特別賞を受賞した。

少しの不安を抱えながら開幕

「もう一度やろうと思ってもできないほど、出来過ぎでした」と当時を振り返る。特に2回戦の八戸学院大戦では3打席連続で二塁打を放ち、バットを振れば勢いのある打球が外野手の頭を越えていくほどの状態だった。

全日本大学選手権2回戦で3打席連続の二塁打を放ち、初戦から7打席連続安打・1試合3二塁打・1イニング2安打の大会タイ記録3つを達成(撮影・西田哲)

大学ラストシーズンの秋季リーグ戦も、「4番」という立場は変わらない。ただ、8月にけがをしたことで、少々の不安を抱えながら開幕を迎えていた。

「8月頭の練習中に、右太ももの裏を肉離れしてしまって。何とかオープン戦には出られたんですけれど、試合中に悪化して、その後は様子を見るために実戦から遠ざかった時期もありました」。回復してくると、Bチームのオープン戦に少しずつ出場しながら、様子を見てきた。しかし、本調子からは遠かった。

全日本大学選手権で、7打席連続安打、1試合3二塁打などを評価され、特別賞を受賞した(撮影・西田哲)

開幕カードの関西外国語大学戦は初戦で3打数1安打、2回戦は2打数2安打だった。いずれも途中交代し、まだ万全と言える状態ではなかったが、数字上はまずまずの滑り出しと言える。続く第2節の関西国際大学戦では一回、1死一、二塁から右前適時打を放ってチームを勢いづけた。

「(相手バッテリーは)インコースが多いと思っていたので、そこを狙いました。少し詰まったんですけれど、抜けてくれて良かったです。とにかく自分のバッティングをしようと。しっかり打ち返すことだけを考えて打席に入りました」と試合後は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

関西国際大学戦で適時打を放ち、チームを勢いづかせた

大社の甲子園出場にいても立ってもいられず……

島根県出身の石飛。今夏の第106回全国高校野球選手権大会で快進撃を見せ、ベスト8まで勝ち進んだ大社高校からは大きな力をもらった。「もう、すごい刺激を受けました。同じ出雲市民としてうれしかったです」。〝石飛〟という名字は出雲に多く、大社を率いたのも石飛文太監督だ。

石飛は出雲西高校に在学中、大社と何度も対戦したことがある。同じ地元出身選手としては、いても立ってもいられず、初戦の報徳学園(兵庫)戦を甲子園で観戦した。春の選抜大会準優勝校に勝ち、その後も創成館(長崎)、早稲田実業(西東京)と甲子園常連校を破っていく姿に「すごく元気をもらいました」。

ラストシーズンで気合が一層入っている石飛だが、チームは手負いの状態にある。春に主将を務め、中軸を担っていた下林源太(4年、天理)が左肩を手術し、秋のリーグ戦復帰が難しい。他にも万全ではない選手が多数いる。

天理大学・下林源太主将「全員で束になって戦う」時に厳しく、時に仲間と改善策を考え
故障者が多い分、石飛のバットに一層の期待がかかる

絶好調だった6月の状態をめざして

自身もけがの状況を見ながらの開幕ではあったが、第1節を終えて「ようやく状態が上がってきた」と手応えを感じている。中心打者としては、ここからが本領発揮だ。「最後のシーズンなので悔いのないようにやりたいですし、また神宮で試合がしたいです。しっかり自分の役割を全うして、8連覇をめざす上で少しでも力になれたらと思います」

絶好調だった6月の感触は「自分の中に残っています。この秋もそこをめざしていきたいです」と語気を強める。有終の美を飾るシーズンとするために、もう後には引けない。石飛が見据えるのは、春に続くリーグ優勝だけだ。

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