陸上・駅伝

特集:第93回日本学生陸上競技対校選手権大会

立教大・小川陽香が女子10000mV 取り組む意識変わった”ライバル”との練習 

自身2度目の10000mレースでインカレを制した立教大の小川陽香(撮影・藤井みさ)

第93回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子10000m決勝

9月19日@Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu(神奈川)

優勝 小川陽香(立教大2年)33分04秒54
2位 野田真理耶(大東文化大2年)33分05秒34
3位 永長里緒(大阪学院大4年)33分06秒32
4位 前田彩花(関西大2年)33分10秒38
5位 柳井桜子(日本体育大3年)33分10秒91
6位 白川朝陽(筑波大1年)33分12秒57
7位 不破聖衣来(拓殖大4年)33分12秒79
8位 原田紗希(名城大3年)33分13秒35

陸上の日本インカレ初日、9月19日にあった女子10000m決勝で立教大学の小川陽香(2年、順天)が初優勝を飾った。今季は春先にケガがあり、10000mのレースは昨年11月以来、通算2度目。それでも結果を残せたのは、ライバル校の夏合宿に参加させてもらったことが大きかったと語る。

ラスト1周でスパートを仕掛け、勝ちきる

レースは序盤から、2年前の今大会を制した拓殖大学の不破聖衣来(4年、健大高崎)が集団を引っ張り、小川は大東文化大学の野田真理耶(2年、北九州市立)に次ぐ3番手につけた。「前の方でレースを進めることが好きなので、2、3番手でいたいということは考えてました。10000mという点では、他の選手よりも圧倒的に経験が少ないので、先輩たちの力を借りて粘る走りを常に意識していました」と小川は言う。

14人、10人、8人と先頭集団の人数が徐々に減っていき、ラスト1000mあたりから小川は「どこで仕掛けようか」と考え始めた。競技場内のビジョンで確認すると、自分の後ろには、まだ他大学の選手たちがついていることがわかった。

レースは拓殖大の不破(右端)が引っ張り、小川は集団の前方につけた(撮影・藤井みさ)

「ここで仕掛けても勝ちきれないから、もう少し我慢」と思いとどまり、実際にスパートしたのは残り1周の鐘が鳴ったあたりだった。野田や大阪学院大学の永長里緒(4年、筑紫女学園)とのラスト勝負を勝ちきり、右腕を斜め上に伸ばして人さし指を突き上げながらフィニッシュ。野田と握手を交わして、お互いをたたえ合った後、「すごくうれしい気持ちです」と素直に喜びを口にした。

ケガから復帰後、気付かないうちに落ちた強度

ルーキーイヤーの昨年は、4月の学生個人選手権と翌5月の関東インカレの女子5000mで日本人トップの2位に入るなど、充実したシーズンを送った。11月の「10000m記録挑戦競技会」で初めて10000mのレースに出場し、32分29秒14。高校の先輩で女子1500mの日本学生記録を持つ道下美槻(現・積水化学)が卒業した今季は、名実ともにエースとなるはずだった。

ただ、春先に左ひざの腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)を痛め、1カ月程度走れない状況が続いた。「少しジョグをして、また痛くなってということを繰り返していました」。5月の関東インカレは欠場し、6月の学生個人選手権は5000mで18位に終わった。

ラスト1周を迎えたところでスパート。このまま勝ちきった(撮影・藤井みさ)

回復後も、思うような結果につながらなかった要因を自分なりに分析している。「自分で少しブレーキをかけるようになってしまったのかなと。立教大学は少数精鋭で10000mを専門にしている選手も少ないので、練習では1人になることも多いんです。そこで、自分は全力で走っているつもりでも、仲間と競り合いながらやるより、ちょっと落ちてしまう部分もあって、気付かないうちに練習の強度も落ちていたのかなと思います」

殻を破るきっかけを与えてくれたのは、ライバルでもある大東文化大学だった。小川が練習で思い悩んでいることを知ったチームから、夏合宿やポイント練習への参加を誘われた。「なかなかないことだと思います。監督の心の大きさに感謝です」

そこで競り合っていたのが野田だった。「私の状態がしっかり戻るためには、野田さんについていく必要がありました。『ライバルには負けられない』と練習からより一層集中して取り組めるようになったんです」。駅伝強豪チームにある「常に勝負を意識する」空気を肌で感じると同時に、自身の甘さも痛感した。「練習をもっとやらなきゃいけないと痛感させられましたし、『自主性』も良いところがあるんですけど、自分が甘えてしまうと、ただのマイナスになる。そこは意識が変わりました」

レース後「友だちで、仲間で、ライバル」と言う野田(10番)とたたえ合った(撮影・井上翔太)

駅伝シーズンへ、名実ともにエースに

思えば、小川が尊敬する道下は「超ストイック」だった。「美槻さんがいたときは、常にその背中を追いかけていて、『美槻先輩のような選手になるには、これぐらいやんなきゃいけない』という指標が目の前にありました。自分の感覚として覚えてはいるんですけど、どうしても薄まってしまうところもあります」。その姿勢を思い起こす意味でも、大東文化大で一緒に練習した経験は大きかった。

10000mの2日後にあった女子5000m決勝は4位。優勝を飾った後、疲労の残り具合によって出場を判断する考えを明かしていたが、きっちりと結果も残した。今後は昨年初出場を果たした全日本大学女子駅伝(杜の都駅伝)に向けた戦いが始まる。「チームの人数自体がかなりギリギリなんですけど、チーム一丸となってめざしているところがあります。エースとして、チームに貢献できる走りをしたいです」。ケガから復活し、今や名実ともにエースとなった。

今後はチームとして2年連続の全日本大学女子駅伝出場をめざす(撮影・藤井みさ)

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