駒澤大・篠原倖太朗が5000mで屋外の日本選手学生新!出雲駅伝へ、チームに勢いを
9月28日に新潟市のデンカビッグスワンスタジアムであった「Yogibo Athletics Challenge Cup 2024」の男子5000mで、駒澤大学の篠原倖太朗(4年、富里)が13分15秒70をマークした。6月末に同じ会場で青山学院大学の鶴川正也(4年、九州学院)が出した屋外での日本選手学生記録、13分18秒56を塗り替える好タイムだ。
3000mを7分台で通過し、手応え
レースには19選手が出場。駒澤大の大八木弘明総監督が世界をめざすランナーを育成するプロジェクトで、篠原も参加している「Ggoat」のメンバー、田澤廉と鈴木芽吹(ともにトヨタ自動車)のほか、昨年このレースを13分22秒01で制した中央大学の吉居駿恭(3年、仙台育英)らがスタートラインに立った。
2周目に入ると集団は縦1列となり、日本選手では吉居が2番手につけた。その後ろに中野翔太(Honda)、鈴木、田澤と、近年の大学駅伝界を盛り上げたメンバーたちが続き、篠原も前方でレースを進めた。最初の1000mを2分36秒、次の1000mを2分38秒で通過。ここで鈴木が2番手に上がり、吉居が後退。篠原も前を追い、鈴木の背後にピタリと付いた。
3000m通過時のタイムは7分54秒。この時点で大八木総監督は、篠原が13分20秒を切る可能性を感じたという。「今までは3000mで離れていた。この日は付いていたので、ここから我慢してくれたら20秒を切れる」。篠原は「3000mまではかなり余裕度もあった」とこれまで以上の手応えを感じていた。
残り2周あたりから走りはやや重くなったが、先頭から大きく引き離されることはなかった。2着の鈴木とは約2秒差の3着でフィニッシュし、タイムを確認すると、両腕を上げ下げして会場をあおるようなポーズで喜びを表現。「練習はできていたんですけど、ここまで行くとは思っていなかったので、地力が上がったかなと思っています」と振り返った。
来年以降「また優勝したい」と思ってもらえるように
年始の箱根駅伝を総合2位で終えた後、篠原はラストシーズンで主将に就任することが決まってから、個人よりもチームのことを優先している。「今までは先輩たちにいい思いをさせてもらったので、今度は同級生や後輩たちにいい思いをさせたい。特に後輩たちには、来年以降『また優勝したい』と思ってもらえるような経験をさせてあげたいです」
Ggoatのメンバーが海外合宿に行く際も、篠原はチームに残り、夏合宿も駒澤のメンバーと過ごした。「自分がいなくなっちゃうと、『(練習を)引っ張る選手がいないなぁ』と思ったので残りました」。篠原の練習メニューは大八木総監督から与えられ、それをチーム内で行う際は、他の選手たちを後ろに付かせる。「久しぶりに自分が付くレースをしたので、ちょっと楽だった」というのも、この日の好タイムにつながった一つの要因のようだ。
そのチームは、田澤や山野力(九電工)が最上級生として出雲・全日本・箱根の学生3大駅伝「三冠」を達成した2シーズン前や、鈴木が主将を務めて出雲と全日本を制した1年前に比べると、「あまり勢いがない」ことを篠原も認める。5月の関東インカレは男子2部10000mとハーフマラソンで入賞者を出せず、「タイム以上に順位で勝負しなければいけないところで、そもそも出るべき選手が出ていないということもあったし、思ったより(結果は)悪かった」と危機感を覚えた。
10月14日に今シーズンの3大駅伝幕開けを告げる出雲駅伝に弾みをつけるためにも、この日のレースは重要だった。9月29日には日本体育大学長距離競技会(日体大記録会)があり、駒澤大のメンバーも出雲駅伝の出走選考を兼ねて出場する予定だ。「これで勢いに乗ってもらえたら」と篠原も仲間の奮起に期待している。
出雲ではチームとして優勝、個人として区間賞を
出雲ではチームとして優勝、個人としては区間賞を狙う。「エース区間では『爆発的な記録』というか、後ろとの差を離したり、前との差を詰めたり、区間新記録を狙ったりということは、しっかりと担うので、他のつなぎの区間の選手には自分の走りをしてほしい。それがチーム共通の認識としてあります」。そして、ゆくゆくはオリンピック出場をめざすというキャリアプランについても語った。
「来年の東京世界陸上は、行けるところまで5000mと10000mでやってみたいですし、ロサンゼルス・オリンピックはトラック種目で、その後のブリスベンはマラソンで出たいと思っています」
トラックで世界と戦うには10000mで26分台という現時点では驚異的なタイムが求められる。「5000mで12分台近くまで行かなかったら、26分台は出ない。13分30秒を楽に通過できるようなトレーニングが必要です。オリンピックを走る選手たちを見ていると、刺激になりますよ。徐々に練習の成果が試合にも表れてきている」と大八木総監督。その数字や言葉から、篠原が見据えている〝世界〟のリアルが伝わってきた。