山梨学院大学が「想像以上」の箱根予選会3位 大崎悟史・新監督が変えた、選手の意識
第101回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月19日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園の21.0975km
1位 立教大学 10時間52分36秒
2位 専修大学 10時間53分39秒
3位 山梨学院大学 10時間54分06秒
4位 日本体育大学 10時間55分58秒
5位 中央学院大学 10時間56分01秒
6位 中央大学 10時間56分03秒
7位 日本大学 10時間56分53秒
8位 東京国際大学 10時間58分53秒
9位 神奈川大学 10時間59分12秒
10位 順天堂大学 11時間01分25秒
10月19日の第101回箱根駅伝予選会で山梨学院大学が3位に入り、5年連続38回目の本戦出場を決めた。2008年の北京オリンピック男子マラソン代表で、今季からチームを率いる大崎悟史監督にとって、最初の挑戦でつかんだ箱根路。3位通過に「まったく予想してなかったです。想像以上ですね」と驚きを隠さなかった。
村上大樹主将「公園内で上げるイメージで」
レースプランは、5月の関東インカレ男子1部ハーフマラソンで連覇を果たしたケニアからの留学生ブライアン・キピエゴ(2年、カプカテット)と留学生を除いた中で10000mのタイムが最もいい平八重充希(3年、鹿児島実業)、徳田秋斗(4年、福岡第一)が個人走。他の選手たちは集団走だった。集団の先導役を務めた主将の村上大樹(4年、青森山田)は「気温が高かったので、集団もぐちゃぐちゃしていて、ちょっと走りづらかったところもありました。接触が怖かったので、後ろの方に待機してスローペースで入って、後半に足が残るように。市街地で1回落ち着かせて、公園内で上げるというイメージで話していました」と明かす。
スタート前の午前9時で気温23.2度。湿度も高く、日差しもあり、スタートから25分後の午前10時で24.2度に上がる厳しいコンディションだった。山梨学院大勢は、早々に抜け出した留学生集団でキピエゴが先頭争いを繰り広げ、市街地に出た10km地点を6位で通過。国営昭和記念公園内の15km地点は3位と、描いたプランがはまり、着々と順位を上げていった。
キピエゴは日本大学のシャドラック・キップケメイ(2年、イリギタリティ)に続く全体2位でフィニッシュ。チーム2番目は、集団の中で力をためていたルーキーの阿部紘也(1年、中部大一)で45位だった。「最終的には集団走のメンバーが、前で何人かゴールできた。1年生の阿部紘也は、まさか。あとはメンバーに入るか微妙だった4年生の土器屋(快都、四日市中央工業、111位)も頑張ってくれた。10番目のところも最後によく粘ってくれたと思います」と大崎監督は選手たちをねぎらった。
選手たちに根付かせたジョグの大切さと自主性
昨年は第100回の節目で予選会通過校が10から13に増え、山梨学院大はギリギリの13位だった。東京国際大学をわずか3秒上回った前回から1年、今回は3番目に名前がアナウンスされた。大崎監督が「選手には『通ればいいよ』と言っていたのですが、まさか3番とは」と言えば、村上は「昨年はヒヤヒヤする結果発表の時間でしたけど、今回は速く呼ばれてホッとしています。1年間やってきたことが、しっかりと結果として出た」。名前を呼ばれたら、まず一礼しよう、とチーム内で共有していたが、それ以上に喜びが勝り、先にみんなで叫んでしまった。それぐらい、うれしかった。
年始の第100回箱根駅伝を総合23位で終えた後、チームは新体制になった。飯島理彰監督がスカウト担当となり、コーチだった大崎氏が監督に昇格。選手の指導や強化方針は「好きなようにやっていい」と引き継がれたことから、練習メニューや合宿地も大崎監督がガラリと変えた。
特に選手たちに対して意識付けしてきたのは、ジョグの大切さだ。「ゆっくりのジョグをするんだったら、やらなくてもいい。(1kmあたり)4分とか4分半ぐらいのジョグがベースになるから、どんなときもそういう感覚で走ってほしい」と大崎監督。平坦(へいたん)だけでなく、アップダウンが多いジョグも採り入れた。長野県の車山高原が中心だった夏合宿も、大崎監督の発案で車山と菅平、河口湖の3回に変更した。
選手の自主性も、これまで以上に求めるようになった。当初は朝だけ練習して終わりという日を作った際、選手たちに「休んでいいの?」という戸惑いも見られた。だが、今では「補強だけの日」を作っても、自分が必要な補強トレーニングをそれぞれが考えて取り組めるようになった。「自主的にやってくれるという意味では、改革ができています。選手自らやってくれる雰囲気に、どんどん変わりました」と手応えを感じている。
本戦の抱負は胸を張って「シード権獲得を」
夏合宿から「この1本に集中しよう」と、箱根予選会のレースだけを見据えて仕上げてきた。「練習の所々で大切なポイント練習を外さずにやってこられたんです。質の高い練習ができたので、選手は記録が残る試合に出ていないですけど、自信をつかんでくれたんじゃないかな」と大崎監督。予選会の3週間前には気温25度の夕方に、レースを想定した16km走を行っていたことも、暑さへの抵抗感が薄れる一因となった。
予選会で想定以上の好成績を残せたこともあり、本戦では2016年の第92回大会以来となるシード権獲得が目標になる。本戦での抱負を聞かれた村上は、「胸を張って『シード権獲得』と言えるかなと思います。でも、ここで安心していたら足元をすくわれてしまう。すぐに切り替えて、本戦に向けてもう一度本気で取り組んでいきたい」。10000m28分台の溝永怜央(3年、報徳学園)ら、予選会で出走できなかった選手もいる。全員の力を結集させれば、名門復活も夢ではない。