陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

日本体育大は77年連続の箱根駅伝出場 分須尊紀主将が目指した「全員でやる」チーム

主将の分須(80番)を中心に集団走を展開する日体大の選手たち(すべて撮影・藤井みさ)

第101回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月19日@陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園の21.0975km

1位 立教大学   10時間52分36秒
2位 専修大学   10時間53分39秒
3位 山梨学院大学 10時間54分06秒
4位 日本体育大学 10時間55分58秒
5位 中央学院大学 10時間56分01秒
6位 中央大学   10時間56分03秒
7位 日本大学   10時間56分53秒
8位 東京国際大学 10時間58分53秒
9位 神奈川大学  10時間59分12秒
10位 順天堂大学  11時間01分25秒

10月19日に開催された第101回箱根駅伝予選会で、日本体育大学が77年連続77回目の本戦出場を決めた。4位で日体大の名前が呼ばれると、選手たちは一礼したあと、涙を流しながら抱き合って喜びを表現した。

「4位、日本体育大学」に緊張がほどけて

「日体大がいない箱根駅伝はない」。日体大は前身の日本体育専門学校が1949年の第25回大会で箱根駅伝に出場して以来、連続出場記録を途切れさせずにきた。近年は第94回大会の4位を最後にシード権を獲得できておらず、毎年予選会にまわっている。

日体大の特徴はペースを守った集団走。この日もレースがスタートすると、山口廉(4年、大牟田)と平島龍斗(3年、相洋)が日本人大集団の前方に位置を取り、他の選手は少し後方で集団となって走った。10km地点での通過順位は2位、15km地点でも2位をキープ。しかし暑さもあってか、集団は次第にばらけ始め、17km地点ではすべての選手がバラバラに走るような形になった。

チームトップでゴールしたのは、総合16位で山崎丞(3年、中越)。次いで19位に平島、33位に田島駿介(3年、旭野)と3年生がチーム1〜3位を占めた。しかし10番目の西槇駿祐(4年、学法石川)は201位。10人がゴールに入った順では9位で、チーム内に張り詰めた空気が流れた。

チーム内トップ、総合16位でゴールした山﨑

緊張に押しつぶされそうな表情で結果発表を待つ選手たち。「第4位、日本体育大学」とコールされると、天をあおぐ選手も。全員で一礼したあと、選手たちは人目をはばからず号泣、しばらく涙を止めることができなかった。

玉城良二監督「10人目がとにかく粘ってくれた」

玉城良二監督はこの予選会に臨むにあたり、まったく不安はなかったと話す。チームの好調ぶりを示すように、目標は3位通過。過去のデータから気温が高かった時もあったため、想定はしていたが「それよりももっときつかったですね」と想定外だったことを明かした。

後半が集団走でなかったことについてたずねると「(集団が)崩れてしまったんです。この暑さの中でペース設定をキツく感じた者が離れてしまったということですね」と、意図したレース展開ではなかったと話した。15km地点まではほぼ通過は間違いないと確信していたが、17km地点あたりで選手の状態を見た時は「(本戦出場が)危ないのでは」と思ったという。

日体大の名前がコールされた瞬間、感極まる選手も

「10人目の西槇がとにかく粘ってくれたことが4位通過の要因にもなりました」と玉城監督は選手の頑張りをたたえつつ、「部員全員でこの大会を振り返って、全日本大学駅伝もありますので。全日本、箱根としっかりと確実に課題を克服していきたいと思います」とさらなる進化を誓った。

分須主将が声をかけ続けた「みんなでやろう」

主将の分須尊紀(4年、東農大二)は「チーム目標が3位以内で結果としては4位だったので、あと一歩届かなかったところは満足していないです。ですが76年続いてきた伝統を77回目もつなぐことができて、その部分でまずはほっとしています」と正直な気持ちを口にした。

レース中、想定よりも集団が崩れてしまい、レースが終わった後には玉城監督やコーチから「ボーダーラインだろう」と言われていた。「今年は本当に危ないんじゃないか……」。76年続いた伝統を途切れさせてしまうのでは、と大きなプレッシャーを感じていた選手たち。「(4位と)想定よりも早く呼ばれたので、一気に全員の緊張がほどけた感じですね」。分須は少しはにかんで答えた。

「77回のプレッシャーは大きかったですね」と玉城監督。選手たちは感情をあらわにした

分須は過去3回予選会に出場しているが、1年時はチーム12人中12位、2、3年時は10位といずれも二桁順位だった。それが今年は総合81位、チーム内5位でゴール。「今年は4年生としても、主将としても必ず最低限チーム内でも前でゴールすることが自分の役目だと思っていたので、そこは達成できてよかったです」

一方で課題も浮き彫りになった。暑さと湿度もあり、非常にタフなレースになった。「速さより強さが求められたレースになったと思うんですけど、そこに関しては特に4年生が(強さが)少し欠けていたのではないかなと思いました」

分須はキャプテンとしてこの1年、「チーム全員でやろう」ということを大切にしていた。今回の予選会でも出走するのは12人、結果として残るのは上位10人。だがその結果をつかみとるために、「みんなでサポートに回って、みんなで戦おう」といった言葉がけを常日頃から心がけてきた。

集団がばらけても一人ひとりがしっかりと走り切ったことが、4位通過の要因になった

「今日もスタートする寸前まで、他のメンバーが選手に寄り添ってサポートしてくれていました。自分の思い描いているチームができてきているのではないかと思いました」とこれまでやってきたことへの手応えを口にした。

全日本でシード権を獲得し、箱根へ自信を持って

日体大は11月3日の全日本大学駅伝には3大会ぶりの出場となる。ここでしっかりシード権を獲得し、自信を持って箱根駅伝本戦に臨みたい、6位以内に入りシード権を獲得したい、と分須は力強く目標を掲げる。そのためにはもっとチーム内の競り合いが必要ではないか、とも考えている。

今回14人のエントリーメンバーは、4年生が10人、3年生が4人と上級生のみ。「下級生ももちろん頑張ってくれているんですけど、『やっぱり3、4年生だよね』と思われているところもあっての今日の結果だったので、もう少し走るべき者が走るような、そんな競り合いが練習の中でももう少し必要ではないかなと思いました」

チーム内2位だった平島。レース序盤から積極的に前方で走った

以前、大エースとしてチームを引っ張った藤本珠輝(現・ロジスティード)に取材した際、「日体大は集団走を得意としているがゆえに、復路の単独走になった時にうまく走れないのが課題だ」と話していたことがあった。そのことについてどう思うか? と分須にたずねてみると、「チームの戦略として、予選会までは夏合宿中もずっと集団走に取り組んでいます。予選会を通過してからの期間でなんとか単独走の練習に取り組むんですが、毎年ちょっとそこが間に合わないという感じもあります」とした上で、今年は全日本大学駅伝があるため、この日の予選会に出場せず、全日本の準備に集中しているメンバーもいると明かす。

「今日の予選会からも全日本は何人か走ると思いますが、そこから外れた選手は箱根に向けてしっかり早い段階から準備していくつもりです」。復路に加え、往路の1、2区も課題だと言うが、「そこについても全日本大学駅伝を経験して、箱根駅伝につなげたいと思います」と話した。

77回目もつながった伝統。「チーム全員で」このあと2つの駅伝へと臨む。

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