サッカー

流通経済大・根本健太 大学で急成長を遂げたセンターバック 浦和レッズでの活躍誓う

184cm、81kgという恵まれた体形に加え、ヘディングの打点の高さを「絶対的な武器」と誇る(すべて撮影・杉園昌之)

2025年度から浦和レッズに加入が内定している流通経済大学の根本健太(4年、東京学館)。昨年4月にパリ・オリンピックを目指すU-22日本代表に選出され、あっという間に大学トッププレーヤーへ上り詰めた。J1・J2の計9クラブからオファーを受けた注目タレントの魅力はどこにあるのか――。

絶対的な武器はヘディング

184cm、81kgのがっちりした体型のセンターバックは、ただサイズが大きいだけではない。打点の高さには、目を見張るものがある。関東大学1部リーグでは、競り合いで負ける気がしないという。根本は背筋をすっと伸ばして、はっきり言う。

「自信は100%以上あります。ヘディングは、僕の絶対的な武器」

学年を重ねるごとにジャンプ力を計る数値を向上させてきた。当初は踏み込み足の左右で跳躍力に差があったものの、意識して取り組むことで改善。より長所が生きるようになった。

無論、プロに評価されたのは、空中戦の強さだけではない。最終ラインの中央に入るディフェンダーでは、貴重な大型の左利き。ジェフユナイテッド市原・千葉のジュニアユースに所属していた中学校時代は左サイドバックでプレーした経験もあり、パスは長所の一つ。長短を織り交ぜ、サイドチェンジ、縦パスと自在に操る。左足の鋭い正確なキックは、大学の入学前から磨きをかけてきた。

「高校に入ってセンターバックにコンバートされ、ロングパス、差しパス(前線に入れる縦パス)が自分でも得意だと認識するようになりました。自主練習でも対角に蹴る長いボールを多く蹴ってきました」

7軍相当のチームからスタート

成長をつぶさに見てきた流通経済大の中野雄二監督は、地道な努力に目を細める。

「大学でストロングポイントをしっかり伸ばしたと思います」

東京学館高校時代は、まったくの無名。全国大会に縁はなく、個人としても脚光を浴びることはなかった。毎年、複数のプロ選手を輩出する強豪大の門を叩いてからも、すぐに芽が出たわけではない。入学当初は、250人を超える大所帯のなかで埋もれていた。トップチームに最も遠い7軍相当のカテゴリーからスタート。3年前の自分を苦笑しながら振り返る。

「プロを目指していましたが、正直、4年生までに試合に出場できればいいな、と思っていたんです。本当に1年生の頃はそれくらいのレベルでしたから」

オリンピック代表監督から受けた高評価

転機が訪れたのは、2022年の冬。千葉市内で合宿を張っていた日本代表の関係者から、中野監督のもとに1本の連絡が入る。代表の守備陣にケガ人が出たため、「トレーニングパートナーとして流通経済大の選手を一人貸してもらえないか」という相談だった。突然の申し出だったこともあり、「レギュラーでなくても、下級生でも構いません」と。そこで名前を呼ばれたのが、当時1年生の根本だった。少しずつ実力を伸ばしつつあったものの、まだ3軍相当のCチームに所属。リーグ戦の出場経験もなかった。

「びっくりしましたね。たまたま、僕だったので。代表に行くと、酒井宏樹さん(現オークランド=ニュージーランド)、上田綺世さん(現フェイエノールト=オランダ)たちがいました。練習試合では谷口彰悟選手(現シント・トロイデン=ベルギー)と交代で入り、西尾隆矢選手(現セレッソ大阪)とセンターバックを組んだんです。あのときは思いのほか、自分のプレーを出せたと思います」

JFA夢フィールドのピッチサイドで見ていた代表関係者たちは目を丸くし、「流経大のあの選手は何者なんだ」という声が上がった。視察に訪れていたパリ・オリンピック代表の大岩剛監督の目にも留まり、中野監督にすぐに報告が入った。

「大岩監督から『すごく、いいですね』と言われ、代表スタッフにも高い評価を受けていました。『どのような選手なんですか』と聞かれたんですよ。それもあって、うちでもトップチームに引き上げ、そのレベルまで育てないといけないと思いました」(中野監督)

高校時代は無名の存在ながら、大学3年次には、U-22日本代表に選出された

U-22日本代表で大きくなったスケール

2年生になると、センターバックのレギュラーに抜擢され、2022年度の関東大学リーグは開幕戦からスタメン出場。同シーズンは1部リーグの残留争いに巻き込まれ、個人としてももがいていた。己をコントロールできず、メンタル的にも苦しんだが、「プロになるためには、このままではダメだ」と自らを鼓舞。自分にベクトルを向けて、課題のアジリティー、ポジショニングの向上に努めた。周囲のレベルが上がれば上がるほど、考える力がついたという。3年生からは守備の要として存在感が増し、23年4月にはパリ五輪を目指すU-22日本代表に初選出。海外遠征も経験し、さらにスケールが大きくなった。同大学OBの伊藤敦樹、安居海渡らの獲得に尽力した浦和レッズの担当スカウトは自己改善する力に舌を巻く。

「無名の存在からはい上がってきたメンタルは魅力の一つ。自ら考えて、修正できる。代表合宿に行くたびに新しいことを吸収し、うまくなっていった。左足のフィードとともに考える力は評価に値します」

「プロはゴールではなくスタートライン」

「少しでも早く試合に出場できるようにしたい」と意欲をにじませる

気づけば、プロ注目のタレントに成長し、計9クラブからオファーが届いていた。最終的に浦和と鹿島アントラーズに絞り、熟考した末に多くのOBが在籍するクラブを選んだ。キャンプに参加し、ベテランの宇賀神友弥、安居らの話を聞いたことも大きかったという。先輩たちの人間性にも惹かれたのだ。

「チームの雰囲気が良くて、ここに入れば、自分のプレーを出せるな、と思いました。そして、何よりもレッズのサポーターに魅力を感じました。実際、埼玉スタジアムに足を運んで実感しました。熱量はアジアでも一番なのかなと。僕もあのピッチでプレーしたいと思ったのは大きかったです」

ただ、タレント軍団の浦和で新人がレギュラーを獲得するのは簡単ではない。大学サッカーは残り約2カ月。中野監督もプロを見据え、夏以降は根本をあえて厳しく指導している。

「現状のままでは、浦和で試合に出場できないと思います。それは本人にも正直に伝えているんです。あと1ランク、2ランクはレベルを上げさせて送り出したい。伸びしろはありますからね」

本人もJ1でのプレーを念頭において努力を惜しまない。浦和の現状もチェックしており、センターバックのポジションが手薄になっていることも頭に入っている。自らに言い聞かせるように決意を口にする。

「プロはゴールではなく、スタートライン。少しでも早く試合に出場できるようにしたい。チャンスを生かす、生かさないかは自分次第です」

力のこもった言葉には、あふれる意欲がにじむ。試合後、ジャケットを着込み、バスに乗り込んでいく大きな背中には、プロ内定選手の風格が漂っていた。

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