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エースQBは仲間を信じ、関関戦に臨む 関西大・須田啓太と関西学院大・星野秀太

エースQBとして関関戦に臨む関西大の須田啓太(左)と関西学院大の星野秀太(合成、撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は10月26日、東大阪市花園ラグビー場で4勝1敗の関西大学カイザーズと、5戦全勝の関西学院大学ファイターズが顔を合わせる。関関戦の注目ポイントの一つが両チームのエースQB(クオーターバック)がどんなパフォーマンスを見せるかだ。関大は昨年の年間最優秀選手でキャプテンの須田啓太(4年、関大一)。関学は昨年の甲子園ボウル最優秀選手の星野秀太(3年、足立学園)。須田は背水の陣で臨んだ前節の立命館大学戦で堂々とオフェンスを引っ張り、勝利に導いた。星野はけがで出遅れたが、前節の京都大学戦でようやく今シーズン初出場を果たし、3シリーズだけだったが12回中10回のパスを通した。それぞれ信頼する仲間たちとともにオフェンスを進めると誓う。

昨年の甲子園ボウルで躍動した星野は最優秀選手に選ばれた(撮影・北川直樹)

星野は高3のとき、須田から大きな影響を受けた

昨年の関関戦はリーグ最終戦だった。関大が5勝1敗、関学が6戦全勝。16-13で関大が勝ち、立命館大も含めた3校同率優勝に。昨年は全日本大学選手権に進めるのが1校だったため、キャプテンによる抽選の末に関学が選手権へ。前人未到の甲子園ボウル6連覇を成し遂げた。その関関戦、星野はけがで途中退場を余儀なくされていた。シーズン後、星野が須田にメッセージを送ると、須田は「来年はお互い万全の状態で戦おう」と返した。星野はそれがうれしかった。「来年は1試合通して出られるようにしよう」と誓った。実際はこの春にもけがをして秋シーズンは出遅れたが、関関戦には間に合った。

前節の京大戦に後半から出た星野は三つのシリーズを2度のタッチダウンにつなげ、悪い流れを断ち切った(撮影・篠原大輔)

星野は須田から大きな影響を受けてきた。高3のとき、須田が大学1年生から秋のリーグ戦に出ているのに驚いた。そして全日本大学選手権の西日本代表決定準決勝で立命館大に17-18と敗れたときの須田の言葉が心に刺さった。須田は号泣しながら同じオフェンスの先輩に「ごめんなさい、僕のせいで」と言っていた。「すごいと思いました。1年生でこれだけの熱量を持ってプレーできる選手ってなかなかいない。僕もこういう選手になれたらいいなと思いました」と星野。そして自らも関学で1年生から試合を任されて成長してきた。

須田の1年生の秋は立命戦を1点差で落として終わった。「ごめんなさい、僕のせいで」と泣いた(撮影・北川直樹)

昨年の関関戦は星野のフットボール人生で大きなターニングポイントになった。「無理をする場面じゃないのにサードダウンで『自分がどうにかしないといけない』と思ったり、『ここでフレッシュ取ったらカッコいいやろな』と思って突っ込んだりした結果、うまくいかなかった。そのうえにけがをして途中退場してしまったので、すごく反省しました」。そこから自分自身のクオーターバッキングを見直した。そしていま、勝負の関関戦を前に、こう誓う。「一番の目標は最後までフィールドに立ってチームを勝たせることです。自分自身がカッコつけたプレーをしたりとか、うまくやろうと思ったら自滅することが多いので、レシーバーをうまく使って、OL(オフェンスライン)を信頼して鼓舞して、RB(ランニングバック)に丁寧にハンドオフして。周りをうまく生かして、オフェンス全体で勝とうと思ってます」

前キャプテンから須田に届いたメッセージ

須田も今シーズン2度目の大一番を前に、こう言っている。「僕が目立たなくてもいい。レシーバーには溝口もいますし、岡本もいる。ランニングバックには阪下もいる。頼れる仲間がいっぱいいるので、自分はしっかり彼らを信じて思いっきり腕を振り続けるだけだと思ってます。勝てればそれでいい」。星野に対しては「関学のQBなので、全国のQB全員から注目されてると思います。僕よりも年下で勝つことがマストのチームに入って堂々とプレーできているのを見ていると、ほんとにすごいなと。リスペクトの気持ちはあります」と話す。

昨秋の関関戦、須田はパスで257ydを稼いだ(撮影・北川直樹)

関大が秋のリーグ戦で立命館にも関学にも勝ったのは、61年ぶりに甲子園ボウルに出た2009年が最後だ。今シーズンは第2節で近畿大学に足をすくわれ、須田も負傷。キャプテンは2試合休んで立命館との戦いに臨み、チーム一体となって下馬評を覆す勝利をつかんだ。その試合後、昨年のキャプテンだった横山智明さんからメッセージを受け取った。「立命と関学両方に勝った代のキャプテンになれ!!」。須田は言う。「そのときまで全然意識してなかったんですけど、今度勝ったらそういうことになるので、そうなれたらいいなと思いつつ、目の前の一戦に集中というか、その中でも1プレー、1プレーに腹をくくって、覚悟を決めて腕を振り抜くだけやと思うんで、やるべきことを地に足つけてやりたいと思います」

背水の陣で臨んだ前節の立命館大戦に勝ち、関大はようやく一つの塊になってきた(撮影・篠原大輔)

心も体も強くなって帰ってきた星野

星野はこの春、秋と試合に出られない間、同じQBで弟の太吾(だいご、1年、足立学園)を育てることに注力した。一方で大村和輝監督に言われて大学の近くの甲山(かぶとやま)を駆け上がり、心と足腰を鍛えてきた。「弟を育てるのはすごくいい経験で、弟の反省も自分に生かしました。山は走り始めて20分から30分で上のお寺に着くんです。一人なんでサボろうと思ったらいくらでもサボれたけど、グラウンドで練習してる仲間に迷惑をかけてると思ったらサボれなかった。走ることで、無でいられるようになりました」。スクワットの数値も上がった。心も体も強くなって、星野は帰ってきた。

さあ決戦だ。須田と星野は信頼する仲間たちとつくってきたオフェンスで、戦い抜く。

関学QBの星野兄弟(前列)は来る日も来る日もパスを合わせてきた仲間と3強対決に臨む(撮影・篠原大輔)

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