法政―関西学院、立命館―早稲田 甲子園行きの切符をかけた二つの東西決戦は激戦必至
アメリカンフットボールの全日本大学選手権は11月30日と12月1日に準決勝があり、法政大学オレンジ(関東1位)と関西学院大学ファイターズ(関西2位)、立命館大学パンサーズ(関西1位)と早稲田大学ビッグベアーズ(関東2位)が対戦する。今年は「魅力のある試合を増やしたい」と関東、関西からの選手権出場枠が「3」に増え、初めて甲子園ボウル以外で関東勢と関西勢の対決が実現した歴史的なシーズンだ。準々決勝では前評判を覆して早稲田が関西大学(関西3位)を31-28で下した。ともに東西対決となった準決勝2試合は激戦必至。12月15日の決勝・甲子園ボウルへの切符を手にするのはどの2校か。準決勝、決勝は1クオーターの正味時間がこれまでの12分から15分に延びるため、選手層の厚さも含めた総合力勝負の側面が強くなる。
総合力は関学、法政は序盤にたたみかけて活路を
【法政―関学】(11月30日12時@東京・スピアーズえどりくフィールド)
甲子園ボウルでは昨年まで9度対戦し、関学の5勝3敗1分け。近年では2021、23年と続けて関学が40点差で勝っている。今回も総合力で関学が上回ると見るが、法政は願ってもないリベンジのチャンスに燃えている。
関学はリーグ最終の立命館大戦と選手権初戦の慶應義塾大学(関東3位)戦は無理をせず、ベースのプレーに終始。多くの下級生をフィールドに送り出して経験値を積ませた。次の戦いはリーグ戦の関大戦以来で、戦術・プレー面ともに本気のファイターズが見られる。その関学にとっての不安要素は二つ。まだ修羅場を経験していない1年生QB星野太吾(足立学園)がどんな展開でも持ち前の冷静さを貫けるのか。そして慶應戦でももろさをのぞかせたパスディフェンスだ。
いつものことだが、法政オフェンスには今年も一発タッチダウン(TD)の脅威が常にある。リーグ戦で10TDのRB廣瀬太洋(4年、駒場学園)、WRにはビッグプレーメーカーの高津佐隼世(3年、佼成学園)に阿部賢利(2年、法政二)、須加泰成(3年、足立学園)。そして昨年の甲子園ボウルで大けがを負い、復帰してきたエースQB谷口雄仁(4年、法政二)。選手権初戦の中京大学(東海)戦のスロースターターぶりを見ると、初戦の前からかなりの時間を割き、関学戦に向けての準備を重ねていたのではないかと想像できる。
法政としては牧野海舟(4年、法政二)らのOL陣が体を張ってQB谷口を守り、谷口が思いきって投げ込んで先制点を奪いたい。関学ディフェンスも新たなパスカバーを導入してくるだろう。そこの勝負だ。1本に終わらず2本以上の差をつけ、DL山田晋義キャプテン(4年、日大鶴ケ丘)らのディフェンス陣が踏ん張って関学のエースRB伊丹翔栄(4年、追手門学院)を自由に走らせなければ、面白い展開になる。初めての修羅場が来たとき、関学のルーキーQB星野は平常心でプレーできるか。4年生の多いOL、TE、RB陣が1年生を奮い立たせるようなプレーで引っ張れるか。
エースQBの真価問われる立命、関大戦で化けた早稲田
【立命館―早稲田】(12月1日13時@大阪・ヤンマースタジアム長居)
試合会場の大阪・ヤンマースタジアム長居はかつて、サッカーの日韓ワールドカップの試合会場(当時は長居スタジアム)だった。2002年6月14日にはフィリップ・トルシエ監督の率いる日本がグループステージ第3戦でチュニジアと対戦。森島寛晃と中田英寿のゴールで2-0と快勝し、グループHの1位通過が決まった。アメフトの試合会場としても関西学生リーグやXリーグのビッグゲームが開催され、阪神甲子園球場が改装中で使えなかった2007、08年は甲子園ボウルの舞台にもなった。そこでパンサーズとビッグベアーズがぶつかる。甲子園ボウルでは2002年、10年、15年と3度対戦し、すべて立命が勝っている。
今回も選手層の厚さを考えたときに立命館が優位と考えられるが、早稲田は選手権初戦の関大戦で、リーグ戦とはまったく違うチームに化けた。オフェンスの最初のプレーでスクリーンパスを受けたRB安藤慶太郎(3年、早大学院)が独走TD。OLを信じてポケットにとどまると腹をくくったQB八木義仁(4年、早大学院)のパスもさえ、24-7での折り返しに成功した。後半は関大ディフェンスにアジャストされたが、ディフェンス陣が一発TDを許さず、3点差で逃げ切れた。リーグ戦では爆発力のなかったオフェンス陣が四つもの一発TDを生み出した。決して偶然ではない。綿密なスカウティングとプレーコールの巧みさが下支えしている。関大を下し、立命に挑む状況にRB安藤は「こんなに楽しいことはない」と笑った。
接戦になった場合の立命館はQB竹田剛(3年、大産大附)次第だ。リーグ戦の関大戦ではリードされて焦り、心も体もがんじがらめの状態でプレーしていた。その後は仲間とともにオフェンスを進める楽しさに立ち戻ってプレーすることで調子を取り戻し、関学戦では得意のロングパスで流れを呼び込んだ。負ければ終わりの一戦で接戦になったときも、竹田が伸び伸びとプレーできるか。エースとしての真価が問われる。