法政大SF南雲昇太 関学を破っての甲子園ボウル「今年は自信を持って日本一に挑む」
アメリカンフットボールの全日本選手権準決勝、法政大学と関西学院大学の試合は、11月30日にスピアーズえどりくフィールドで行われた。事前の見立てでは関学大優位と見る向きが多かったが、法政大のディフェンスが関学大のオフェンスをを抑え込んで終始優位に立った。ディフェンスの最後尾を守るSFの南雲昇太(4年、法政二)は、素早いリアクションからの突き刺すようなタックルで、チームを牽引(けんいん)した。甲子園ボウルでは、力強いラン攻撃で関西リーグとここまでの全日本トーナメントを制してきた立命館大と対戦する。
リベンジを果たした準決勝で好タックル連発
準決勝となるこの試合は、法政大にとって特別な意味を持つ試合だった。関学大は昨年の甲子園ボウルで21-61と、歴史的な大敗を喫した相手。法政は緻密(ちみつ)な準備と成長した守備陣の活躍で、鮮やかなリベンジを果たした。
DLとLBは関学大のエースRB伊丹翔栄(4年、追手門学院)のランを徹底して押さえこみ、DBは厳しいチェックでWRを自由にプレーさせなかった。10-10で折り返した後半、ファンブルやインターセプトなど流れを渡しかねないミスもあったが、その局面で得点を許さずにペースを握り続けた。
法政は4クオーター終盤に17-17の同点に追いつかれ、試合は延長タイブレークに。先攻の法政は、フィールドゴールで3点を先取し、関学の攻撃に。1度は反則でピンチに陥ったが、関学大のランへの徹底した潰しでTDを許さなかった。3点のリードを守り切って、2006年の甲子園ボウル以来18年ぶりに関学大を破り、甲子園ボウル出場を決めた。
「振り返ると昨年の甲子園ボウルは準備不足の面が否めなかったですが、今年は関学のオフェンスの対策を春から徹底してやってきました。今日はその成果が実を結んだんだと思います」
南雲は落ち着いた口調で試合を振り返る。ランを封じるフロントの働きと、セカンダリーの的確なタックルがしっかりとかみ合って、関学大に主導権を渡さない展開を作り出した。
この1年間、特にタックリングには力を入れてきた。「1対1の場面で確実に仕留める能力が不足していると感じていたので、そこを重点的に鍛えてきました」。その成果は、関学戦で確かに現れた。アグレッシブなタックルを連発した南雲のプレーぶりは、これまでの試合同様に抜群の存在感だった。
主将も務めた野球は高校まで「大学ではアメフト挑戦」
南雲がアメフトを始めたのは、大学入学後。それまでは野球に打ち込んできた。小学校6年生のときに「西武ライオンズジュニア」のセレクションを受けて、約600人の応募者の中から18人の合格者に選ばれた。当時は身長155cmとまだ体も小さく、体が出来上がってる選手が多い中で、身体能力の高さを評価されての合格だったという。
法政二高に進んでからも野球を続け、ポジションはサード。3年時には主将も務めた。しかし、この年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、夏の甲子園は開催されなかった。
「元々野球は高校までって決めていて、大学ではアメフトに挑戦しようと思っていました」。当時を振り返り南雲は言う。高校同期のアメフト部にも仲の良い友達がいて、野球部の先輩で大学からアメフトを始めていた人もいたが、そういう影響よりも、アメフトそのもののカッコ良さに引かれたことが大きかったと言う。「アメフトを知ったのは『アイシールド21』がきっかけで、NFLとかを見ていたわけではないんですけど。防具とか付けるのが、野球とは違ってかっこいいなと思っていました」
小さい頃から二人三脚で野球に取り組んできたという父の修信さんが振り返る。
「西武は親子の夢だったので、受かったときは本当にうれしかったですね。息子はとにかく練習をやらないと不安な性分で、小さなときからずっと努力をしていました。本人は全く努力していると感じてないんですけどね。父親としては六大学野球をしてほしい気持ちもありましたが、本人が『自分でやりたいことを決められる最後の機会だから』と言うので、アメフトを始めることを後押ししたいなと感じたんです」。そんな父は今、関東学生連盟のカメラマンとして大学生の写真を撮っている。
昨年は甲子園ボウルでインターセプト
法政大オレンジに入部してからは、コーチの指示でCBについた。1年時は試合に出る機会がなかったが、SFに転向した2年時から頭角を現し始める。
「多分、(コーチは)元々2年目くらいからSFにするイメージだったんだと思います。体も結構大きかったので、ヒットすることについてはそこまで難しさを感じませんでした。ただ、戦術面は結構難しくて、長島(佑作、24年卒)さんやコーチによく教えてもらいました」
主力としてスタメンに定着した昨年は、甲子園ボウルでインターセプトを決める活躍があった一方で、チームは大敗を喫していた。
「去年は個人的にはやれてるなって部分もありましたが、チーム全体として見れば準備不足もあったと思っていて、今年はその部分をしっかりとやり切った上で、自信を持って試合に臨めました。試合前の段階から、メンタルも去年とは全然違ったと思います」
南雲は、確かな手応えをつかんでいた。
2度大敗した甲子園ボウルでの雪辱誓う
元高校球児。甲子園への思いを聞くと、南雲はこうこたえた。
「ずっと野球をしてきましたが、実は甲子園とか見ているタイプでもなくって。そんなに特別な思い入れとかはないんですよね。意外と野球をやってない人とあまり変わらないのかなって思います」
一方で、甲子園ボウルでこれまで2回大敗を喫してきたことへの思いは強い。
「1年生と3年生で出させてもらって、どちらも大差で負けてしまって良いイメージはあまり無いです。でも今年は関西のチームに勝った上で、自信をつけて甲子園ボウルに挑めるので、今までとは違った形で臨んで日本一をつかみたいと思います。1対1では絶対に負けません」
改めて、南雲に法政フットボールの魅力を聞いた。「プレー中にも個性を出せるのが法政のフットボールの魅力だと思っていて、そこからアサイメントやサイン以上のプレーが生み出せるところですね」。これも、最後尾を守る南雲の存在があってこそかもしれない。
最後の甲子園ボウル、対戦相手は立命館大学。主将の山嵜大央(4年、大産大附)が率いる強力なランニングアタックに対して、法政大の守備陣が真正面から仕掛ける。