陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

平林清澄は5区? キムタイと佐藤圭汰は1区? 箱根駅伝「トークバトル」で探り合い

出走区間が注目される國學院大の平林清澄(左)と城西大のヴィクター・キムタイ(いずれも撮影・佐伯航平)

2025年1月2、3日に開催される第101回箱根駅伝のチームエントリーが発表された12月10日、「箱根駅伝トークバトル」が東京都内で行われた。前回大会で5位以内に入った青山学院大学、駒澤大学、城西大学、東洋大学、國學院大學の5監督が参加。目標順位や他大学の区間配置予想を語り合った。

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「前半から攻めのレースを」「後半勝負に」

トークバトルでは最初に、恒例となっている「目標順位」と「どんなレースをしたいか」が各監督に尋ねられた。連覇を狙う青山学院大の原晋監督は「総合優勝をめざしていきたいと思っております」と高らかに宣言。展開については「前半から攻めのレースをして主力級を並べていきたい」と話した。

第100回大会で史上初となる「2季連続3大駅伝三冠」を狙ったものの、2位だった駒澤大学の藤田敦史監督はフリップに力強く「優勝」と記した。「青山さんに力負けをしたところがございましたので、今回はそのリベンジ。挑戦者として思い切ったレースをしたいなと思います」

「挑戦者として思い切ったレースをしたい」と語った駒澤大の藤田監督(以下すべて撮影・井上翔太)

前回大会で史上最高の3位に入った城西大学の櫛部静二監督は「総合4位」と書き、括弧書きとして「できれば3強超え」。先手必勝が大事になるとし、さらに「できれば」と前置きした上で、1区には今季の出雲駅伝、全日本大学駅伝と連続で区間賞を獲得したヴィクター・キムタイ(3年、マウ)を起用したいと明かすと、他の監督陣を含めて会場がざわついた。

継続中では最長の19年連続でシード権を獲得している東洋大学。酒井俊幸監督の目標順位は「4位」だった。「前回大会は4位で、今回は前回以上をスローガンに掲げてますので最低4位と書かせてもらいました」。どんなレース展開にしたいかという設問には「その1秒をけずり出せ」というチームスピリットを引き合いに「それを体現できる走りをめざしたいと思います」。

今季の出雲と全日本を制し、大学初の「三冠」を狙う國學院大學の前田康弘監督は、もちろん「優勝!」。展開には「粘りからの攻め」と書いた。他大学の監督から〝先手必勝〟の声が上がる中でも「往路はしっかり粘り、後半勝負に持っていきたい。5区平林(清澄、4年、美方)で攻撃します」。これには、原監督が「マジすか!?」と驚きを隠さなかった。

青山学院大の原監督は、往路から主力級の選手を並べる方針を明かした

駒澤大学・佐藤圭汰は「十分間に合うぐらいのレベル」

次に、出席した5チームのチームエントリーメンバー16選手をモニターに映しながら、区間配置の予想を語り合った。仮に國學院大の平林が5区ならエースが集う「花の2区」は誰なのか。コーディネーターを務めた前・神奈川大学監督の大後栄治氏が質問すると、前田監督は「平林かもしれないです。2人欲しいですね」と煙(けむ)に巻いた。

キムタイは本当に1区なのか。注目が集まった城西大のポイントは、〝山の妖精〟と呼ばれ、5区の区間記録保持者・山本唯翔(現・SUBARU)の後任だ。櫛部監督は「山の妖精が羽ばたいていったので、斎藤(将也、3年、敦賀気比)かヴィクターか。1区も5区もヴィクターで行きたい」と願望を語った。

駒澤大のエントリーメンバーでは、ケガの影響で出雲と全日本を回避した佐藤圭汰(3年、洛南)の現状に注目が集まった。藤田監督は「もう練習は開始しています。十分に間に合うぐらいのレベルには戻っています」と順調ぶりをアピール。「もしかしたらヴィクター1区であれば、佐藤圭汰1区もあると思います」。これには原監督が「僕もそう思っている」と同調。「故障あがりの選手は単独で走るより、10kmぐらいまで(他の選手に)ついて、10kmから勝負に出た方がいい。朝8時のスタートはビル影に隠れて気温も上がらないので、練習量が少なくてポテンシャルが高い選手は1区だろう」と語った。

主将でエースの篠原倖太朗(4年、富里)については「2区」を予想する声が多かった。駒澤大時代から藤田監督の1学年後輩で、親交も深い前田監督は「藤田さんと長い付き合いなので分かるんですけど、篠原君は2区ですね。5区は山川君(拓馬、3年、上伊那農業)で決まってます。原さんに突っ込まれたときの顔で、これは結構正解だと思います」と切り込んだ。

長年の付き合いから藤田監督の性格を見抜く國學院大の前田監督

青山学院大の注目ポイントは前回2区で区間賞を獲得し、今年の全日本4区で区間新を打ち立てた黒田朝日(3年、玉野光南)。原監督は「箱根の山に朝日を上らせたいのは本音のところであるんですけど、やっぱり2区ですよ」。大後氏がこれに「5区もあるな」と反応。原監督は今季好調の鶴川正也(4年、九州学院)も5区の可能性があるとし、夏合宿恒例の坂タイムトライアルでは黒田がトップ、次点が鶴川だったと明かした。

「箱根から世界へ」を体現

大会の理念は「箱根から世界へ」。近年は箱根駅伝を経験したランナーが、学生のうちからマラソンなどに挑戦して、世界陸上やオリンピックを狙う例が増えている。原監督は今大会で黒田が区間賞を取った際には、来年2月24日に予定される大阪マラソンに出場させる考えを明らかにした。今年の大阪マラソンは國學院大の平林が優勝しており、前田監督によると平林は来年9月の東京世界陸上出場を狙うべく、次回の大阪マラソンも出走する予定。酒井監督によれば、東洋大の梅崎蓮もエントリーする方針だという。

区間エントリーは12月29日。特に有力校は選手層が厚いだけに、監督たちはギリギリまで頭を悩ませることになりそうだ。

各大学の監督たちは「箱根から世界へ」を体現すべく指導にあたっている

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