陸上・駅伝

特集:第101回箱根駅伝

帝京大学、箱根駅伝の目標は“チャレンジ”の総合3位 山中博生「新しい帝京の姿を」

箱根駅伝に向けて調整する帝京大学駅伝競走部。総合3位を目標に掲げる(すべて撮影・浅野有美)

箱根駅伝に18年連続で出場する帝京大学が12日、大会に向けて練習拠点の八王子キャンパスで会見を開いた。10日に発表されたエントリーメンバー16人が登壇し、意気込みを語った。第101回大会のチーム目標は総合3位。「新しい帝京」を見せるべく闘志を燃やす。

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 山中博生・小林大晟・福田翔ら力のある4年生

今季の帝京大は出雲駅伝8位、全日本大学駅伝8位と、安定した結果を出している。学生3大駅伝の集大成となる箱根駅伝の目標として「総合3位」を掲げた。

主将でエースの山中博生(4年、草津東)は「(青山学院大学・駒澤大学・國學院大學の)3強が強いのはわかっているが、そこにチャレンジしていく意味で“新しい帝京”の姿をお見せできれば」と、目標に込めた思いを語る。出雲ではけがなどで主力選手を欠いたが、全日本以降は足並みがそろい始め、チームにも勢いがあるという。

中心戦力は4年生。山中は今年5月の関東インカレ男子2部10000mで28分04秒54の帝京大記録をマーク。出雲で1区区間4位、全日本は2区区間4位と、エースとして存在感を放った。

箱根は2区が濃厚だ。前回も同じ区間を走ったが緊張もあって後半で伸び切れず区間16位に終わった。今回は「しっかり勝負できる区間にしていきたい」と闘志を燃やす。「前半から突っ込むのが自分の強みなんですが、それ以降の粘りについて、昨年よりもグレードアップした姿を見せていきたいです」

主将でエースの山中。2区を希望し、他校のトップランナーと勝負する

小林大晟(鎮西学院)は前回大会で復路のエース区間と呼ばれる9区を担い、区間3位と躍動。その経験が自信につながった。今季の全日本では2年連続となるアンカーを務め、4大会ぶりのシード権獲得に貢献した。「プレッシャーがかかる場面でも自分の力を発揮できるのが強み」と自負する。

今回も9区を任される可能性が高く、小林自身も希望している。「復路のエースとして後ろに僕がいることで、みんなが安心してくれたらうれしいし、プレッシャーがかかる場面でチーム目標の順位を決定づけられる走りをしたい。区間賞を狙っています」と力強い。

ラストの箱根を迎える小林。9区を希望し、区間賞も狙っている

ハーフマラソン1時間02分03秒の帝京大タイ記録を持つ福田翔(世羅)は、最初で最後の箱根路に満を持して臨む。2年次の出雲で学生駅伝デビューを果たすも箱根の出走はなし。今季は出雲6区8位、全日本7区8位といずれも後半の重要区間で結果を残している。「全日本は箱根に向けていい収穫になりました」と笑顔を見せる。

これまでは全日本後に調子を落とすことが多かったが、今年は調子を維持することはもちろん、上げすぎないことも意識してきた。ラストランは憧れである1区を希望している。中野孝行監督も「福田を前半に使いたい」と展望を語る。福田は「やっと箱根を走れるという思い。『4年間応援してくれてありがとう』と気持ちを込めて、最後、悔いのないように走りたい」と意気込んだ。

福田は最初で最後となる箱根で感謝の走りを見せる

最上級生では副将の高島大空(かなた、流経大柏)や林叶大(かなた、小豆島中央)、黒木浩祐(小林)も学生駅伝初出走をうかがう。「自分の中で最高の状態でここまで来ることができました。当日までにもっと調子を上げていきたいです」と高島。林も「チーム目標である過去最高順位に貢献できるような走りをしたい」と、それぞれ思いを口にした。

柴戸遼太・島田晃希ら3年生の本領発揮なるか

“強い4年生”頼りでないのが今季のチームの特徴だ。下級生にも実力者がそろう。エントリーされた3年生6人のうち、柴戸遼太(大分東明)、島田晃希(高田)、尾崎仁哉(東海大福岡)が箱根を経験している。

柴戸は1年次4区区間12位、2年次3区区間9位と奮闘。10000m28分26秒97、ハーフ1時間03分10秒とチーム内でトップレベルのタイムを持ち、上位争いを繰り広げるポテンシャルがある。今季前半は左ひざを痛め、出雲は出走できず、全日本も万全ではなかった。箱根に向けては距離を踏み、スタミナをつける練習を重ねた。本番は3区か4区に起用される可能性が高いが、柴戸自身は4区を希望している。

入学時から最終学年で自分がチームを牽引(けんいん)するという目標を持っている。「自分が来年チームを引っ張って、今年以上のチームをつくるという気持ちでやっていきたい。箱根駅伝で結果を出してチームの士気が続くように頑張りたいです」

1年次から箱根を経験している柴戸。本人は4区を希望している

島田は前回大会8区区間8位。今季の全日本はねんざが完治しない状態で出走したが、1区でトップと5秒差の9位で山中に襷(たすき)をつないだ。箱根の希望区間も1区で、「いい流れで2区につなぐことが目標です。区間5番以内、先頭と5秒以内で入りたいです」と気合は十分だ。

尾崎は粘り強さが持ち味。前回大会で山登りの5区を担ったが、監督からは「オールマイティーな選手になってほしい」と言われてきた。今季は出雲2区6位、全日本3区13位と着実に経験を積んでいる。「自分が走りたいのは往路で、5区でリベンジしたい気持ちもありますけど、復路でどれだけ追いかけるかというのもチームにとっては重要になります。どこでも行ける準備はできています」と頼もしい。

同学年では今季の出雲で5区を走った鎗田大輝(市立船橋)や1年次に出雲1区を経験している藤本雄大(北海道栄)、1年次の学生個人3000m障害で3位に入った山口翔平(県立西京)も名を連ねている。

今季の出雲で学生駅伝デビューを果たした楠岡由浩(慶誠)と廣田陸(北海道栄)の2年生にも注目だ。

5000m13分55秒84のタイムを持つ楠岡は全日本で6区区間4位と好走。チーム順位を11位から9位に上げ、シード権をたぐり寄せた。箱根でも楠岡の活躍がチームの鍵を握るかもしれない。10000m28分41秒73の廣田は全日本4区区間11位と力走し、期待の戦力だ。

ハーフマラソン1時間03分02秒の記録を持つ浅川侑大(2年、洛南)や、全日本に続いて1年生で唯一エントリーされた小林咲冴(しょうご、樹徳)の起用も気になるところだ。

世界一諦めの悪いチームが正月の箱根路で飛躍を誓う

 11月の記録会で5人が自己ベスト更新

箱根のチーム最高成績は2000、2013、2020年の総合4位。「箱根駅伝総合3位」は新チームが始動したときから狙ってきた目標だ。

中野監督は「目標は絵に描いた餅ではなく、クリアすることを考えないといけない。口に出すだけじゃなくて行動としてやりなさい」と言い続けてきた。山中ら4年生を中心に最終ゴールに向けたプロセスを細かく設定。それを着実に踏んでいくことで、夏を過ぎたころから結果が出るようになった。出雲、全日本と安定した成績を残し、中野監督は「彼らがしっかり準備しているから」と説明する。全日本直後の日本体育大学長距離競技会10000mでもエントリーメンバー5人が自己ベストを更新し、上がり調子だ。

恒例の伊豆大島合宿も終え、本番まで残り3週間。チームの士気は高まっている。総合3位の目標達成へ、「新しい帝京」を体現する走りを期待したい。

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