薩摩おいどんリーグ2025 「応援団長」の里崎智也さんが試合解説、始球式で捕手も

鹿児島県でキャンプを実施する大学、社会人、プロが参加する交流戦「薩摩おいどんリーグ2025」が2月22日~3月9日、鹿児島県内の8球場を舞台に行われた。今年は、元プロ野球選手で野球解説者の里崎智也さんが「応援団長」に就任。3月1、2日に現地を訪れ、試合を解説したり、講演会に登壇したりして盛り上げた。
鹿児島は「酸いも甘いも味わった地域」
3月1日午前、里崎さんが鹿児島空港に降り立った。おいどんリーグを現地で見るのは初めてという。「大学生、社会人野球、そしてプロの皆さんの試合を見るのが楽しみです」と、約50km先の薩摩川内市総合運動公園野球場へと向かった。
里崎さんにとって鹿児島県はゆかりがある場所だ。所属していた千葉ロッテマリーンズは、40年近くにわたり鹿児島市の県立鴨池野球場(現・平和リース球場)を中心に春季キャンプを行っていた。新鮮な海の幸や名物の黒豚など食事がおいしく、温泉で英気を養い、休日はゴルフを楽しんだという。「酸いも甘いも、野球人生の前半を味わった地域でもあります」と笑顔で語る。

おいどんリーグは事務局が試合日程を組み、各チームに球場と対戦相手を提供する。チームにとってはキャンプ中に練習試合を組むのも一苦労だが、その負担がない。また、地域やカテゴリーの枠を越えて対戦ができ、実戦を通してチームの仕上がり具合を確認できる。「いろんなチームと練習試合をして試せることもあるし、レベルが高い中で競い合うことは選手たちにも大きな影響があると思います」と、里崎さんは参加側のメリットを説明した。
講演会に登壇、人生における選択の重要性を説く
薩摩川内市総合運動公園野球場では中央大学対福岡ソフトバンクホークス(3軍)の試合が行われた。この球場は以前、千葉ロッテマリーンズの2軍が春季キャンプで使用し、里崎さんにもなじみが深い。
始球式に登場し捕手を務めた里崎さん。バッターボックスに入った中学生男子硬式野球チーム「薩摩川内ボーイズ」の少年は「里崎さんに普通では聞けない練習方法を聞けて貴重な時間でした。すてきな思い出になりました」と目を輝かせた。
解説中は、帝京大学時代のキャンプ経験や1軍で定着する選手の特徴について言及。「ドラフトはアマチュア時代の通信簿。未来を測るものではない。(プロに)入ってしまえば横一線。そこでどういう結果を出していくかが大事。最後は打てるかどうか。キャッチャーの評価は打つか勝つかなんですよ。(帝京)大学時代も打つことと勝つことを意識していました」と語った。

夕方は鹿児島市の城山ホテル鹿児島での講演会に登壇した。「エリートじゃなくてもトップに立てる思考術」と題して講演し、約200人が熱心に耳を傾けた。
里崎さんは人生における選択の重要性を力説。「強いところよりも出られるところ」を基準に進むべき道を選択してきたという。
「有名ブランドの大学に行ったはいいけれど、試合に出られなかったら就職先に困る。ちょっとレベルは落ちるかもしれない。でも自分のレベルに合わせて、もしくは自分のレべルよりちょっと下のところに行って試合に出て結果を残していけば、チームとしての結果は出ないかもしれないけれど、個人としての結果を履歴書に書いて就職先を探すこともできる」と、自身の経歴も踏まえて話した。
富士山の登頂を例えに出し、「小田原の海抜0mから登っていいし、途中まで車で行ってもいい、静岡ルートや山梨ルートもある。お金があるならヘリでもいい。手段は幾通りもある。人生もそう。自分が頂上に行けるルートを選べばいい」と力を込めた。「自分が1位になれる選択肢を選びながら、自分の夢や目標を手に入れてもらいたい」と締めくくった。

「裾野の大事なところを鹿児島から作り上げている」
2日目は、1軍時代に汗を流した平和リース球場を訪問。「(2軍のキャンプ場だった)湯之元から出世して1軍のキャンプ場に来られるかがポイントでした。宿舎はサンロイヤルホテルでした」と、思い出を振り返った。
日産自動車九州とJR東日本の試合前には両チームの監督にインタビューし、注目の選手やおいどんリーグへの期待などを聞き出した。解説中は前日の講演会の内容を振り返りながら、「自分の武器を見つけないといけない。その武器が他の人より秀でているとチャンスが広がります」と話した。

球場ではおいどんリーグ実行委員会の小薗健一実行委員長との対談も行われた。
「大学や社会人野球のアマチュアがあるからプロが盛り上がる。裾野の大事なところを鹿児島から作り上げている。それを見て実感して体感するとより熱く感じますね」と感想を述べた里崎さんに、小薗委員長は「鹿児島は大学、特に企業チームの野球との縁が薄くなっている。そういう土地柄で(参加チームを)お迎えして役に立っているんだろうかと疑問があった。いまのお言葉は非常にありがたい」とほほえんだ。
参加チームは一昨年37、昨年42と年々増え、今年は54チームに上った。里崎さんが「(参加チームが)100になったらどうします? 大隅半島攻めていきましょう?」と水を向けると、小薗委員長は「いつか離島で試合をやれたら」と構想を明かした。
おいどんリーグでは野球の普及活動にも取り組んでいる。今回も期間中、中学生のベンチ入り体験やグローブ作りなどが行われた。
里崎さんは、「人口少子化もあり、特に地方では野球人口が減ってチーム数が減っている。その中で日頃なかなか触れ合うことがない大企業の野球チームが来ている、東京の大学の野球チームが来ているとなると、それにあこがれて身近になって、自分も野球をやってみようとなる。野球普及でも大きな役割を果たしていると思います」と話した。

2日間の滞在を終えた里崎さんは、「参加チーム数が増えすぎて困るくらい全国に浸透していけばさらに良い環境になっていくと思う。いままで知らなかった方、知っていた方も含めて、鹿児島で行われているおいどんリーグに注目してもらって、足を運んで現地で見てほしいと思います」と今後の発展に期待を込め、鹿児島空港を後にした。
