甲南大学・奥野由萌 短距離決勝の常連、ラストイヤーは個人種目もリレーも優勝を意識

甲南大学の奥野由萌(4年、彦根翔西館)は昨年、日本選手権女子100mで決勝に進むなど飛躍を遂げた。1年目から主要な大会に出場し続け、迎えるラストシーズン。個人種目もリレーも〝優勝〟を強く意識している。
高校進学の際とは異なる基準で、甲南大学へ
滋賀県甲賀市出身の奥野は小学3年の時、双子の弟と一緒に陸上のクラブチームに入った。「近所の友だちが『陸上をやる』と言って、『じゃあ自分もやりたいな』と」。自ら積極的にというよりは、友人についていく形で競技生活が始まった。最初から基本的に短距離だった。
3歳の頃から水泳も習っていたが、中学で選んだのは陸上部。「水泳は背泳ぎとか平泳ぎとか、基本的なものを学べたらいいと思っていたので、やるなら陸上かなって」。そこから地道に練習を積むことでタイムが伸びていった。中学3年時、100mの自己ベストは「12秒34でした」。当時の全日本中学校選手権の参加標準記録が12秒53だから、全国大会に出場できるレベルにまで成長したこととなる。

高校は自宅近くのところと迷った末、片道1時間半をかけて彦根翔西館に通うことに決めた。県外の強豪校からも誘いの声が届いていたが、「滋賀の中で続けたい」という気持ちが上回った。彦根西高校と彦根翔陽高校が統合した彦根翔西館の歴史はまだ浅く、奥野の世代は4期生。「顧問の先生も棒高跳びが専門で、いい雰囲気でした。もし強いところに行ってしまったら、リレーメンバーの争いもきつくなる。中学時代の私からしたら、仮に『選ばれない』となると、陸上へのやる気が下がってしまう気がして……。だったら滋賀で自分の実力を出せる高校に行きたいと思いました」
のびのびと過ごす中、3年時には全国高校総体(インターハイ)女子100mで6位入賞を果たした。「もっと強くなるためには、強い選手がたくさんいるところじゃないとダメなのかなと。伊東浩司先生に教わりたいとも思いましたし、オリンピックに出た青山華依さんとも一緒に部活をしたいと思って、甲南に進みました」。高校進学の際とは異なる基準で、大学の志望先を決めた。

メイクやネイルの自由さも魅力
甲南大女子陸上部の雰囲気は「自分に合っている」と言い切る。「先輩後輩という関係性もないですし、メイクやネイルも自由なので、そこも魅力です」
学生個人選手権や日本インカレなど、大学陸上の主要大会では、いつも髪色と爪が鮮やかだ。ネイルは月に1回ほどのペースで、季節によって色を変えたり、その時の流行を採り入れたりする。「ネイルとかメイクをしていたら自分のテンションが上がるから、競技に対してもやる気が出るんです」
ちなみに「On your marks」の声がかかり、クラウチングスタートの姿勢に入って両手をトラックに置いた時も、自身のネイルが目に入ると「あ、可愛い!」と思うそうだ。ピストルの音を聴くために集中しきっていると想像していたから、これは意外だった。

「勝負できるようになりたい」心を新たにした日本選手権決勝
甲南大では1年目から主な大会に出場し、結果も残している。ルーキーイヤーは学生個人こそ100mは準決勝、200mはB決勝までだったが、U20日本選手権は200mで当時の自己ベスト24秒43(-1.0m)をマークして優勝。2年目から大学の大会では100m、200mともに決勝進出の常連となり、日本インカレ女子100mでは藏重みう(3年、中京大中京)、岡根和奏(4年、龍谷大平安)とともに表彰台を独占した。
「高校までは全然ウェイトトレーニングをやってこなくて、基本的に走っていたんですけど、大学ではウェイトと走ることの二つをバランス良く取り組むことで成長できている部分があるのかなと思います。1年の時は足もヒョロヒョロだったんですけど、筋肉がちょっとずつ付いてきて、走りでも使えてきていると思います」
3年目の昨年は、日本選手権決勝の舞台にも立った。結果は11秒83(-0.5m)で6位。「一つの目標としていた部分ではありましたけど、今は『あの場で走る』というより『もっと勝負できるようになりたい』と思っています。出られた達成感というよりは、一つの通過点ととらえています」。着地した際に足が流れてしまう傾向があるため、体幹トレーニングを重視することで克服し、タイム向上につなげようとしている。

どこかにまだ弱い部分がある、克服した先に
今季の大学陸上シーズンは9月に東京で世界選手権が開催される影響もあり、日本インカレが6月開催となる。奥野は日本インカレや日本選手権(7月)、日本選手権リレー(7月)といった大舞台に照準を合わせて、グランプリにも出ていく。「リレーは昨年3連覇できなかったので、また優勝して卒業したいと思っています。まずはリレーメンバーに入るため、部内の争いを勝ち抜けるようにしないといけないです」
個人種目については決勝の常連であるものの、まだ優勝のタイトルをつかんだことはない。「昨年の日本インカレは200mで2位、100mで3位でした。どこかにまだ弱い部分があると思っているので、4年生の意地というか。気持ちの面でも強さを出して、個人種目も100mと200mで優勝というところを強く意識したいです」
大学ラストシーズンは表彰台の真ん中、一番高いところに立つことを狙う。

