駒大エース高橋潤哉、鍛錬と信頼の決勝弾
前後期は6試合で4引き分けと勝ちきれないゲームが続き、目標のインカレ出場には白星がほしい駒大に対し、今節次第で2部降格が決まる国士大。勝利に飢えた両者の思いがぶつかる一戦となった。
互いに気持ちを切らすことなく粘りあい、0-0のまま時計が動いていった。そして後半のアディショナルタイム、ついに試合が動いた。駒大のFW矢崎一輝(2年、駒大)が縦パスに反応して抜け出すと、ペナルティエリア内で相手GKと交錯。主審は迷わずホイッスルを鳴らし、駒大がPKを得た。
エースFWに勝利を託す
誰よりも早くボールに駆け寄り、つかんで離さなかったのが、FW高橋潤哉(3年、山形ユース)だった。ここまでチームトップの6得点を挙げてきた絶対的エースは、矢崎に一声かけてペナルティースポットへ向かう。
高橋は大きく深呼吸し、一点集中。「整理する時間」と試合後に本人が語ったように、蹴るまでの時間は相当あった。駒大を応援する者すべてが、背番号9のひと蹴りに勝利を託した。
ここまでの緊張感を振り払い、落ち着いて決めた。この1点で勝利。高橋は今シーズン7ゴール目で、キャリアハイとなった。「矢崎が粘ってくれたし、自分を信じてくれた味方のおかげ」と、仲間への率直な思いを口にした。
実は、ここまで公式戦通算で17ゴールの高橋が大学でPKを蹴るのは3年目にして初めて。今シーズンの駒大でPKキッカーを務めていたのは、主将のMF大塲淳矢(4年、藤枝東)だった。この日、高橋がボールをセットしようとしたとき、大塲は彼の元へ歩み寄った。「本当は自分が蹴るつもりだった」と大場。高橋は大塲に「蹴りたい」と伝えた。普段から居残りでシュート練習をする高橋の姿を見ていたキャプテンは「落ち着いて蹴れば絶対に入る」と声をかけ、PKキッカーを譲ったという。
「いつかチャンスが来ると信じてた」
相手の徹底マークにあうこともあった、GKの好セーブに阻まれることもあった。1カ月以上ゴールから見放されていた高橋。「でも、やり続けてればいつかチャンスが来ると信じてた。今日はPKだったけど、このゴールをいいきっかけにしたい」と、ここからの貢献を誓う。
日ごろから「チームの勝利に貢献できるゴールを奪う」と語るエースの決めた決勝弾。駒大にとっては3試合ぶりの白星であり、この1勝が持つ意味は大きい。
リーグ戦も残り4試合。次節の専大戦は集中応援日となり、大勢のお客さんがスタンドに訪れる。インカレ出場を争うライバルを相手に連勝すれば、チームにさらに勢いが付くのは間違いない。しかし高橋は「やるべきことは変わらない。次までベストを尽くしてやっていきたい」と大きなことは口にしなかった。
日々の取り組みでチームの信頼を得たエースは8年ぶりのインカレ出場のため、ライバルチームに牙をむく。