陸上・駅伝

特集:第95回箱根駅伝

箱根駅伝 学生連合「これから一丸で」

選手全員揃っての集合写真。学生連合チームの箱根駅伝がはじまる

11月24日、慶應義塾大学日吉陸上競技場にて関東陸連主催の「10000m記録挑戦競技会」が開催された。箱根駅伝まで2カ月を切るなか、レース形式で他大学の選手と走れる数少ない機会だ。ここに今回の関東学生連合チームの選手が多く出場した。

夢の舞台を目指して

学生連合は箱根駅伝予選会に出場し、出場権を得られなかった大学に所属する選手のうち、予選会で上位の成績を残した選手から選ばれる。長らく「関東学連選抜チーム」という名前だったが、2015年の箱根駅伝から「関東学生連合チーム」へと名称が変更されている。

監督を務めるのは、箱根駅伝予選会で12位となった麗澤大の山川達也監督。自身も箱根駅伝への出場は初めてとなる。山川監督は、エントリーされた16人のうち、箱根を走るメンバー10人の選考方法を「予選会の成績上位から8人、残りの2人は10000m記録挑戦競技会の成績で決める」とした。従来は予選会の成績のみでメンバーを決めている監督も多かったが、山川監督は「チーム全体のモチベーションを考えたときに、この選考方法がいいかなと思った」と、予選会からすぐの時期に選考方法についても決めたのだという。

全員の名前が書き込まれたたすき。魂が入った

競技会では、予選会の成績の下位8人のうち、5人がPB(パーソナルベスト)を出す快走。箱根駅伝出場のモチベーションがより「ニンジン」になっていると実感した。

ただ出るだけでなく、一つでも上を

競技会のあと、学生連合チームは全員が集まってミーティングを開催。その後山川監督に話を聞くことができた。自身初の箱根駅伝についての目標についてこう語る。

写真撮影にもすこし緊張した面持ちで応えてくれた山川監督

「ここ最近学生連合は苦しい結果が続いてますが、とにかくまずチーム一丸となって戦えるように。ただ出るだけではなく、一つでも上を目指せるように、いいチームをつくっていきたいと考えてます。このチームは飛び抜けた外国人がいるわけでもないので、まずは往路で流れをつかむために、強い選手、調子のいい選手を配置して、復路では一つでも順位を上げていきたいなと思います」

大学は青山学院大の原晋監督と同じ中京大で、選手としても監督としても縁がなかった箱根駅伝。今回が初めての出場となる。「しっかりここで経験して、自分のチームに還元していきたいと考えてます」と前向きだ。しかし全員が違う大学出身ということもあり、「チーム」としてまとめることの難しさも感じているようだ。

この日初めて話すという選手同士もいて、初々しい自己紹介も

「今回は4年生が多いチームなので、力のあるなしに関係なく、積極的に思いを語ってもらったり、選手同士のコミュニケーションをもっと取れるようにしたりしていきたいです。チーム一丸といってもいままで会ったことがないメンバーもいて、まだ『この方法でというのは見つかってないんですが、できるだけ私自身も選手とたくさん会話したいと思ってます。運営管理車に乗って、後ろから何を話したらいいか? と困るようではいけないので、一つでも響く言葉を見つけていきたいなと考えてます」

1984年生まれの山川監督。選手と年齢も近く、真摯に選手と向き合おうという気持ちが伝わってきた。

「4度目の正直」東大・近藤の思い

学生連合の中でも特に注目されているのが、東大4年の近藤秀一だ。昨年は10人のメンバーにエントリーされながら、直前でインフルエンザにかかり、箱根を走ることはかなわなかった。

「去年は振り返ってみれば、疲れもあって体調が下降気味だったなと思います。今年はしっかりと体調も整えていきたいです」

卒業後はGMOアスリーツに入り、競技を続けることも決まっている。「今までは一人で練習することも多かったですが、これから他の選手と一緒に練習できること、そして今までとは違ったトレーニングができることにワクワクしてます。だからこそ、学生陸上を未練なく終わりたいなと思います。今日は自分としても不甲斐ない結果で、いまのままでは『あいつに任せようと思える選手になれない。自分としても自信を持って戦えるように、ほかの選手からも信頼されるようにしっかり準備していきたいです」

近藤はこの日29分41秒02と、自己ベストより30秒近く遅いタイムだった

将来を見据えてしっかりと話す口調が印象的だった近藤。山川監督も「学生連合に選ばれるのは4回目と聞いているので、後悔がないように、その先につながるような走りをしてほしい」と期待する。

「夢のまた夢」の舞台がここに

4years.がもうひとり注目したのが、上智大4年の外山正一郎だ。もし箱根本戦に出場できれば、史上初めての上智大箱根ランナーが誕生となるが、今回の記録会では30分56秒24とふるわなかった。悔しい結果になったのでは、と話を向けると、「悔しさは全然ないんです」と意外な言葉が返ってきた。

「たしかにタイムは納得いかないものになってしまったんですが、中高と無名だった自分がこの箱根駅伝の舞台に関われているということ自体がすでに、夢のまた夢のような状況なので。選んでもらった時点で満足しているところもあります」

こういった取材の機会も「全部が楽しい」と語る外山

陸上の強豪校とくらべて、授業と練習の両立は難しいものがあるし、練習環境も十分ではない。市民ランナーに混じって代々木公園の織田フィールドや、皇居で走ることもあるという。実は昨年留年して、「4年生だけど大学は5年目なんですよね」とはにかむ外山。「夢のまた夢」の舞台に関われることになったが、この学生連合チームにはもとからの知り合いも多く、不思議なめぐり合わせを感じるという。

「文字通り最上級生だからこそ、出走できなかったとしてもチームを盛り上げていきたいなっていうのは思ってます。そして自分を見て、後輩が興味を持ってくれて、いつか箱根駅伝を走りたいと思ってくれたらすごくうれしいですね」

学生連合は12月7~9日の合宿などを経て、正式に箱根駅伝を走る10人を決める。個性豊かなメンバーが集まるチームに注目して見ていきたい。

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