魂を書く 関西大・松山奈央【わっしょい新編集長】

野球部のキャンプ取材で、シャッターを切り続けたカンスポの松山新編集長

体育会系の部と同じように、各校の大学スポーツ新聞も新体制へと移行しました。大学スポーツ新聞の活動は、たいてい3年間です。4years.よりもさらに短い期間に青春をかけ、大学スポーツの現場にいちばん近く、いちばん長く寄り添うのです。同じ大学の仲間のプレーに涙を流しながら写真を撮り、また思い出して泣きながら原稿を書きます。大学スポーツの中には、大学スポーツ新聞という生き方も含まれていると思うのです。さあ、春はそこまで来ています。4years.が提携する大学スポーツ新聞の新編集長にラストイヤーへの思いをつづってもらう連載「わっしょい新編集長」をお届けします。

いちばん印象的な試合を問われれば、昨年5月の準硬式野球部の4年生が引退した試合を挙げる。全国出場をかけたトーナメント大会で、9回1失点の熱投を披露したのは、1年間チームを率いてきた主将。しかし結果は、0-1で完封負け。みんな目を真っ赤に腫らした涙の引退試合だったのに、空は清々しいほど晴れ渡っていた。

印象的だったのは、試合後のスタンドで、魂がどこかへいってしまったかのようにぼーっとどこかを見つめる一人の選手の横顔。「撮らなきゃ」。無心でシャッターを切った。最後のインタビューを済ませ、部室に帰ってその日の写真を見返すと、涙が止まらなかった。心に穴があいたような気がした。それと同時に、引退した4年生が後輩に託したものを見届けようと思った。そしてその数日後、どこかを見つめていたその選手が、新キャプテンに就任した。

何かを目指して一生懸命になれる人は、最高にかっこいい。私がカメラを向けるのは、誰より真剣でひたむきな表情だ。記事に残すのは、その一戦にすべてを捧げてきた選手たちの魂だ。誰より近くでその姿を見ているのは、彼ら彼女らの表情や魂を、ほかの人に伝えたいからだ。

私たちは選手がホームランを打っても、喜びで跳ね回ることはない。選手がゴールを決めても、仲間と抱き合うことはない。喜びや悔しさの涙を、袖で拭うことはない。その瞬間を収めるため、シャッターを切り続ける。文字に起こすために、情景や人々の表情を目に焼きつける。一緒に喜んだり、泣いたり、騒ぎたい気持ちをグッと抑えこむ。

カンスポ編集部員とソフトボール取材に行ったときの松山編集長(右端)

カンスポに入部してから、がむしゃらに走り続けてきた。ぽっと出の私が、勝手に試合に行き、好きに写真を撮って記事を書く。「誰のためにやってるんだろう」。目まぐるしい毎日の中で何度もそう思った。そんな気持ちを振り払おうと、また無我夢中で走り出した。試合に足を運ぶと、だんだんみんなが顔や名前を覚えてくれる。いつしか私の呼び名は“カンスポさん”から“奈央ちゃん”になった。一つひとつの小さなよろこびが、エネルギーになっていた。

私たちが取り上げるのは、試合中の様子や結果だけではない。全員にそれまでのストーリーや思いがあり、何かを抱えて競技に打ちこんでいる。その何かを拾い、言葉にするのがカンスポとしての役目だと思っている。「自分たちはいなくてもいい存在」。先輩の言葉をたまに思い出す。いなくても試合は成り立つし、誰かが困ることはない。そんな私たちが必要とされるにはどうすればいいのだろうか。学生新聞にしかできないこととは何か。正直、その答えは見つかっていない。それでも、「取材してくれてありがとう」という選手やスタッフの言葉に何度も救われてきた。必要としてくれる人は確かにいる。

アイススケート部の宮原知子選手(3年、関大)の大学ラストイヤー。ガンバ大阪加入が内定しているサッカー部の黒川圭介選手(3年、大阪桐蔭)の活躍。バレーボール部女子の春リーグ連覇への道。神宮出場をかけた野球部の戦い。テニス部の王座優勝の夢。挙げればきりがないほど、今年もたくさんの感動の瞬間が待っている。後輩には、心から「KAISERS」を愛し、全力で追いかけてほしい。3年生で引退となるカンスポで、私の学生記者としての終わりは近づいてきている。寂しがっている暇はない。

大学スポーツの魅力を伝えるため、きょうもカンスポは走り回る。

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