バレー

新生慶大バレー、王者早大への挑戦は一歩届かず

12位に沈んだ昨秋の悔しさを胸に、新生慶大が始動した

春季関東大学男子リーグ1部 第2日

4月7日@神奈川・日本体育大学健志台キャンパス米本記念体育館
慶應義塾大 1-3 早稲田大

キュッ、キュッ。桜が舞う道を歩いていくと、ボールと靴底が奏でる軽やかな音がだんだんと近づいてくる。今年もこの季節がやってきた。春季リーグ戦、新チームで臨む初めての大会の開幕だ。慶大は昨年の秋季リーグ戦で最下位に沈んだ。チャレンジャーとして下剋上を狙う今シーズン、第2戦で早くも王者ワセダとの勝負に挑んだ。

打倒ワセダの気迫に満ちて

4月6日にあった日体大との初戦。慶大は第1セットこそ先取したものの、その後はブロックの戦略を逆手にとられた上に、大黒柱の主将・マルキナシム(4年、川越東)が不調に終わり、1-3の逆転負けを喫した。マルキは「チームが負けたのも自分の責任」と表情を曇らせていた。

それから一夜明け、第2戦の相手は昨年度4冠の王者早大だ。だが、慶大の選手たちからは不安な様子など一切感じられない。それどころか「宿敵ワセダに一矢報いる」という気迫がひしひしと伝わってきた。観客席には両校の応援団が駆けつけ、声を大にしてエールを送る。いよいよ、試合開始だ。

早大戦で躍動した1年生のミドルブロッカー降小雨

第1セット、慶大はジャンプ、フローターともにハイレベルな相手サーブや、今年の春高バレーでも活躍した早大の新戦力、大塚達宣(1年、洛南)の鋭いバックアタックなどに苦しめられ、19-25で落とした。

第2セットも序盤から失点を重ねたが、ズルズルとはいかなかった。慶大の新星、降小雨(じゃん・こさめ、1年、慶應)が高校時代からの先輩、セッター吉田祝太郎(3年、慶應)のトスを正確に打ち抜き、サイドアウトを取っていく。シーソーゲームで迎えた20-18の場面からは、高さと幅のあるブロックでプレッシャーをかけ続けてミスを誘い、一気にセットポイント。最後は、マルキの復活を印象づける強烈なスパイクが決まり、慶大がこのセットをものにした。

届かなかった1本

第3セットは勢いに乗った慶大と、王者の意地を見せたい早大がぶつかり合い、大荒れの戦いとなった。立ち上がりに慶大がクイックとブロックを決めたかと思うと、早大も負けじと2連続得点。その後も好プレーが続出し、サイドアウトを1回で切れたのは2度ずつだけという、壮絶なブレイクの取り合いになった。どちらに流れが傾いてもおかしくない雰囲気が漂う中、先に20点に到達したのは早大だった。しかし慶大も食い下がる。19-23からマルキのバックアタックや降のサービスエースなどで怒涛の4連続得点。ついに追いついた。だが、ひっくり返せなかった。相手のセットポイントの場面でスパイクがネットにかかる痛恨のミス。23-25で激闘の第3セットを落とした。

早大戦で復活を印象づけたエースのマルキナシム

王手をかけられた第4セット、慶大はクイックを封じられ、Wエースのマルキと副将の富澤太凱(4年、慶應)にトスが集中。単調な攻撃に終始してしまった。相手のミス以外にほとんどブレイクの糸口を見つけ出すことができないまま、試合終了。第2、第3セットが好調だっただけに、悔しい敗戦となった。

王者の背中を捕らえかけた。第3セット、もしスパイクがネットにかからなければ……。そんなことを考えてしまう。だが、選手たちは違った。「最後を取りきれなかったところにウチの弱さがある」。試合後、マルキ主将は迷うことなくこう話していた。あと少しのようで、まだ手が届かない。慶大は、その力の差を痛感した。だかもちろん、手応えもある。チームで強化してきたブロックは王者のアタッカーを苦しめ、降のクイックは相手コートを切り裂くように何度も決まった。上位の大学と渡り合うだけの力は持っているはずだ。

春はすべてのチームが新体制で臨む。どのチームもまだ「可能性の原石」を磨いている途中だ。何が起こるか分からない。実際、昨秋10位の学芸大が昨秋2位の日体大を、昨秋9位の駒大が昨秋4位・インカレ3位の明大を、それぞれ撃破している。このリーグ戦は大混戦となるだろうか。「必ずいい結果を残したい」。そう意気込むマルキ主将を中心に、慶大バレー部もこの戦いに挑む。その「原石」たちが輝きを見せる日は、そう遠くないはずだ。

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