サッカー

特集:第70回早慶クラシコ

早慶クラシコに臨む「選手兼主務」ふたりが語る大学サッカー

副務になって間もない2年生の秋に、早慶クラシコの準備で中園(右)と塩木は初めて顔を合わせた。その時、先に声をかけてきたのは中園だったという

7月12日、神奈川・等々力陸上競技場で早稲田大学と慶應義塾大学のサッカーの定期戦「早慶クラシコ」があります。早慶ともに選手兼主務の部員がいます。事前の話題第二弾は、多忙を極めるであろう二人へのインタビューです。早大ア式蹴球部主務でFWの中園健太郎(4年、早稲田実業)と慶大ソッカー部主務でDFの塩木康平(4年、成城)。主務として選手として、彼らの目指すものについて聞きました。

7月12日にサッカー定期戦・早慶クラシコ 「自分ごと化」してもらうための奮闘

チームのため、3年生で副務に

――早稲田の中園さんは幼稚園、慶應の塩木さんは小学生のときにサッカーを始めたそうですが、大学でのサッカーはそれまでと大きく違いましたか。

中園:力の差を見せつけられましたね。高校と大学はこんなに差があるなんて。今年4月21日の天皇杯の予選準決勝で、初めてトップチームの公式戦に出ました。相手は東京ユナイテッドFCでした。出たといっても、最後の1、2分だけ。悔しさしかなかったです。試合に出る以上、活躍したいじゃないですか。チームは1-0で勝ちましたけど、高校のときはメインプレーヤーとして1年生からトップチームに入ってたのに、大学では最上級生になってもこういう立場なのは、やっぱり悔しいなって思います。

中園(中央)は中学生の時にFWになり、上背を生かしたプレーを展開(写真提供・早稲田大学ア式蹴球部)

塩木:僕は最初、下のチームに混ぜてもらってプレーをしてきたんですけど、その中でも下手な方だったので、トップチームは相当レベルが高いってことを痛感させられました。でも練習の強度とかキツさについていけない、とは感じなかったんですよ。そこだけは負けてないという自信はありました。去年の夏合宿で淺海コーチ(友峰、現・監督)に認めてもらって、2軍に上げてもらいました。それでトップチームとも試合ができるようになったんですけど、4-1で負けるなど、関東リーグのプレッシャーの中で戦ってる選手たちは強いって思い知らされてます。

――どういう経緯で主務をやるようになったのでしょうか。

塩木:2年生の時にミーティングをして、どういう人を副務に出そうか、どんなチームになりたいかを考えて、みんなで決めました。副務の人は、4年生になったら主務になります。同期には下級生からトップチームで出てる選手が多い、という印象が僕にはありました。そういう意味では自分は下のカテゴリーだったし、真面目さとかひたむきさを評価してもらって副務に推薦してくれる人もいました。副務になったとき、マイナスな感情はなかったですね。正直「自分しかいないな」と思っていたところもありました。俺がやるしかないな、と。

中園:早稲田も同じです。自分たちの代にマネージャーがいないので、選手から出すしかなかったんです。2年生のときに同期全員で集まって、どういうチームが理想かという話をしました。投票で5人に絞って、そこから誰が副務、のちに主務をすべきか。僕に決まったときは、多少は嫌だなと思ったんですけど、何か新しいことに取り組めたら、という思いもありました。僕は幼稚園の年長のときに姉の影響でサッカーを始めたんですけど、副務になった時に姉も「いいじゃん!」って喜んでくれました。いつも自分の味方でいてくれる姉に影響されて育ってきたところがあるんで、それでやる気になったってのはありましたね(笑)。

主務もピッチに立てば選手、背中で示す

――選手兼主務だと、すべての練習に参加するのは難しいと想像します。

中園:仕事が多い時期は練習後に自主練をしてますけど、ミーティングがあると、自主練もできないから困りますね。だから1回ずつの練習でアピールするしかない。主務は全体を統括する立場で、何か起きたら自分が責任をとらないといけない。会計は副務がやりますけど、普段の練習とか、取材対応とかイベントとか。早慶クラシコが一番デカいイベントです。いろんな人が動いてるんで、それをまとめて、外部の方々と連携して運営してます。

塩木:主務はいろんなことをやらないといけないんですけど、僕自身は難しさをあまり感じたことがないんです。確かに練習する時間は短くなってしまいます。でも僕の場合は1、2年生で練習しすぎてけがをしがちだったので、副務になってバランスがとれた気がします。

塩木(中央)は昨年の夏、Bチームにまで上がってきた(写真提供・慶應義塾体育会ソッカー部)

――選手兼主務だからこその面白さを感じることはありますか。

塩木:僕は「主務をやりながらプレーもさせてもらえてる」という気持ちが大きくて、チームへの感謝の気持ちが芽生えてきた気がします。いまはBチームに上げてもらって、トップチームにも関われるところにいます。あきらめてたわけじゃないけど、1年生のときには想像できなかったですね。2学年上の主務の方は一時期トップチームにいましたけど、公式戦には出てませんでした。でも7学年上には主務でトップチームのレギュラーだった人もいます。僕もトップチームの公式戦に何とか出たいです。

中園:責任感が大きくなりました。チームに対しての愛じゃないですけど、気持ちが大きくなりましたし、練習でも試合でも、自分が代表として戦ってるというのをピッチ内外でもアピールしないといけない。プレー中は選手ですから、主務だからといって適当なプレーはできません。その意味でも、自分が背中で示さないといけないという意識はありますね。

同じ境遇だった先輩からのアドバイス

――両校とも、昨シーズンも選手兼主務がいらっしゃったと聞きました。その先輩からの教えや、影響を受けたことはありますか。

中園:アキ君(秋葉遼太)はしゃべるよりも、行動で示してくれる人でした。スタメンで試合に出てたし、早慶クラシコでも1万8000人近くを集めてて「これだけ頑張ったら結果がついてくるんだな」って思ってました。自分も頑張らないといけないな、あれが基準だなって。いいモデルです。力を入れるところは入れて、抜くところでは抜く。僕は自分で抱え込みたくないタイプなんで、手伝ってくれる下級生もいるし、そういうところは頼るようにしてます。自分はちゃらんぽらんなんで(笑)。

塩木:中園さんは僕にないものをもってるなと思うんですよ。僕は周りを巻き込むのが下手で、仕事をうまく振るのが下手で、自分でやっちゃおうと思うタイプ。そこは見習わないといけないって。慶應の主務だった松井(隆明)さんは夜遅くまでパソコンに向かってる姿がかっこいいなと思ってました。就活もしながら早慶クラシコの統括もしてて、部員たちには弱みを見せない。自分もそういう風にならないといけないなって。そんな松井さんから見ても、僕は一人でなんとかしちゃうタイプに見えちゃったようで「責任者はお前だけど、パンクする前にヘルプを出さないといけないよ」と言われたことがありました。

同じ主務兼選手だからこそ、分かり合えること、そして負けたくないことがある

――早慶クラシコが迫ってきました。どんな気持ちでこの日を迎えようとしてますか。

中園:早稲田が7連覇してるんで、それを途絶えさせないようにというのが自分たちの目標です。自分としては部員にしろ、観客にしろ、全員が楽しめる場を提供したい。主務で早慶戦に出る選手はなかなかいないので、可能性があるなら狙いたいです。作り手側として全力でやってきて、いろんな人の思いも知ってますし。やりがいを感じられたので、みんなで早慶クラシコをつくってこられてよかったなって、もう感じてます(笑)。

塩木:慶應は2部リーグの前期はトップできてます。慶早戦では7連敗中ですけど、今年こそは、最後こそは勝ちたいです。選手として出られたらすごいことなんですけど、僕はBチームで、トップチームに所属できてないので……。もし中園さんが出てくれたらうれしいですけど、でもやっぱり悔しいかな。運営側としてはみんなが楽しめることもそうですけど、何とか無事に終われたらいいなと思ってます。

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