陸上・駅伝

ニュージーランド帰りの青学・𠮷田圭太、「留学のおかげ」で自己ベスト

走り終わったあと、笑顔を見せる𠮷田(すべて撮影・藤井みさ)

ホクレンディスタンスチャレンジ第5戦 網走大会

7月22日@北海道・網走市営陸上競技場
男子5000mA組 10位 𠮷田圭太(青山学院大学)14分0秒74

7月22日に北海道・網走であったホクレンディスタンスチャレンジ(以下、ホクレン)網走大会の男子5000mA組に、青山学院大学の𠮷田圭太(3年、世羅)が出場した。時おり風速6mの強風が吹く厳しいコンディションの中、粘りの走りを貫いた。

中4日、キツくても粘れた

7月8日に約5カ月に渡るニュージーランド留学から帰国したばかりの𠮷田は、早速17日にホクレン北見大会に参戦。ここで5000m13分49秒33の自己ベストを出した。中4日での出場となった網走大会、5000mA組のターゲットタイムは13分40秒。ペースメーカーがついた。

アレックス・チェロノ(トヨタ自動車)とメシャク・ムングティ(NDソフト)がペースメーカーよりも前に出た。𠮷田は初め、この二人に次ぐ集団の中ほどでレースを進めた。東海大の關颯人(4年、佐久長聖)と専修大の長谷川柊(4年、八海)が前に出ていく。𠮷田も國學院大の浦野雄平(4年、富山商)とともについていった。残り4周となったところでペースメーカーについた先頭集団が抜け出し、𠮷田は荻久保寛也(城西大4年、三郷工業技術)、市川孝徳(日立物流)とともに、少し離れて第2集団を形成した。最後はこの二人に遅れ、後ろからスパートしてきた秦将吾(大塚製薬)にも差され、10位でのフィニッシュとなった。

時折強い風が吹きつける中で、粘りの走りを見せた

「北見がよかったので、あまり期待はしてなかったです。状態的にはあまり体が動かない感じで、それでも粘れたのはよかったと思います」。想像以上に風が強く、2000mぐらいからずっとキツいと感じていたという。「そこから体を動かそうと意識したら動き始めたんですけど、ちょっと遅かったですね」。先頭についていけなかったレースを、そう振り返った。

留学先で例年より走り込んできた

前述の通り、ニュージーランド・ネルソンでの約5カ月の留学から帰国したばかり。在籍する地球社会共生学部のカリキュラムで、2月後半に海を渡っていた。時差は3時間でも、季節は日本と逆で、いまは冬。しかし今年の日本は梅雨明けが遅く、帰国してからも涼しい気候が続いたため、たいした疲労も感じることなくホクレンに臨めたという。「留学する前に原監督から『ホクレンに2回出るから』とは言われてて、その予定で練習してきました。北見、網走と出て、ここで自己ベストが更新できればと考えてたんですけど、北見で出て(笑)。北見のときも調子がいいとは思ってなかったので、走りながらビックリしました。『自己ベスト出るかも』と思って、驚きながら走ってました」

留学先のニュージーランドでは涼しい気候の中、しっかりと走り込めた

ニュージーランドではともに留学した神林勇太(3年、九州学院)と二人きりで練習していた。チームを離れて二人だけという状況につらさを感じたこともあったが、それでも着実に練習を重ねてきた。「とくに6月は例年以上に走り込めました。月間520kmぐらい走ったかな。僕はいつも人よりちょっと距離が短いんですけど(笑)、それでも普段より100kmぐらい長いです。涼しいのもあって、6月は30km走も2回できました。そのおかげで今日もしっかり粘れたのかなと思います」。5000mに対応するようなスピード練習を一切していない中で自己ベストを出せたのは、走り込めてスタミナがつき、粘れるようになったからではないかという。

その反面、課題も感じているようだ。「キレがあまりないなと感じてて、今日もラストで差されてしまいました。今後は夏合宿なんかを通して、そういった部分も改善していければいいなと思います」

目指すは三大駅伝のエース区間で区間賞

今後の目標を尋ねると「個人的には箱根駅伝で優勝したいというのが一番にありますけど、それ以上に任された区間でしっかり区間賞を取りたいです」とはっきり口にした。昨年の全日本インカレ5000mで3位入賞を果たした𠮷田は学生三大駅伝すべてに出場し、そのすべてで区間賞を取り、青学の「エース候補」と言われるまでになった。「去年は負担が小さい区間だったので。今年は各校のエースが集まる区間で区間賞争いがしたいです。三大駅伝すべてを走って、チームにいい流れを作れるようにしたいです」

久々にチームと合流したが、「相変わらずみんな元気でした」と𠮷田が笑うように、青学の雰囲気はいいという。だが、関東インカレの長距離種目では表彰台なしに終わっている。「シーズンの前半は(チーム全体が)あまりいい結果を残せてないので、僕が少しでも4年生と一緒に引っ張っていければと思います」。チームを離れてた選手が結果を出したら、ほかの選手も頑張らないわけにはいきませんね、と水を向けると「僕と神林が帰ったことで、もっと引き締まってくれたらいいです。僕が走れたので、みんなにももっと走ってもらわないと困ります(笑)」。3年生ながら、チームを引っ張る自覚は十分のようだ。

今年は𠮷田が青学の中心となり、引っ張っていく

チーム内で期待する選手を尋ねると、一緒に留学した神林の名前を挙げた。神林は留学終了直前に交通事故にあい、今回は北海道に来られなかった。「一緒に留学してずっと一緒にやってきたので、駅伝も一緒に戦えればいいなと思ってます」

NZ留学があったから、自己ベストが出せた

あらためて留学の成果を尋ねると「留学があったから自己ベストも出たと思うし、こっちではできない距離を踏めたのもよかったと思います」。勉強面ではどうだったのだろうか。「英語を話すのはまだ少し難しいと感じますけど、聞き取りは結構できるようになったと思います。授業は英語なので、最初は内容を理解するのにもいっぱいいっぱいで、しゃべれないストレスもかなりありました。途中から少しずつしゃべれるようになって、いろんな国の人としゃべるのも楽しくて。仲よくなったので、別れるときはさみしさもありました」

陸上競技をメインとした海外派遣は他校でもあるが、本格的に競技に取り組む選手が一般的な留学に出るのは、日本ではまだ珍しい。「勉強も、走りにも、いい経験になったと思います」と話す𠮷田の表情から、充実感がにじみ出ていた。

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