野球

特集:僕らの甲子園~100回大会の記憶

木更津総合の“二刀流”野尻幸輝「この仲間との高校野球が終わったんだな」 

昨夏1回戦の敦賀気比戦、雨の中で力投する野尻(撮影・松本俊)

夏の甲子園で連日熱戦が繰り広げられています。4years.は特集「僕らの甲子園~100回大会の記憶」を選手権期間中に随時お届けしています。第8回は昨夏、木更津総合高(千葉)で投打に活躍し、法政大学に進んだ野尻幸輝です。

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法大で春からベンチ入りし、初安打も記録

あの夏から1年、投打の軸として木更津総合のベスト16入りに貢献した野尻幸輝は新潟県三条市にいた。1、2年生の育成を目的とした「大学野球サマーリーグ」に法大野球部の一員として参加。初戦となった8月9日の新潟大戦では6番ファーストでスタメン出場し、2打席連続ホームランと、持ち前の長打力を発揮した。9~11日の3日間で計6試合とタイトなスケジュール。それでもこう言った。「大学に入ってから、高校と違って出場機会が少なくなったので、このサマーリーグは自分のためになってます。たくさん打席に立てるうれしさを感じますね」

新潟でのサマーリーグでバッティングを磨いた(撮影・武山智史)

早くも東京六大学野球春季リーグ戦からベンチ入りを果たし、5月27日の明治大戦ではリーグ戦初安打を記録した。高校と大学のピッチャーの違いをどう感じているのだろう。「同じ球速でも大学のピッチャーの方がボールにキレがあるし、伸びがあります。それに六大学はプロの予備軍と呼ばれるほどレベルの高いリーグです。その舞台を1年の春から経験させていただいたことは、今後の糧になると感じてます」

最終学年になり、異例の投手兼任

野尻は岐阜出身。中3のときには根尾昂(大阪桐蔭~中日)とともに岐阜選抜で戦った。高校では関東の強豪校で自分を磨きたいと、木更津総合に進んだ。早くも1年生の春からベンチ入り。1年生の夏はベンチで、2年生の夏は5番サードで甲子園を経験している。最上級生となった新チームでは4番に座り、打線を引っ張った。

秋の大会が終わり、ターニングポイントが訪れた。チームの課題となっていた投手力アップのため、五島卓道監督は野尻の肩の強さを見込んで「投手をやってみないか」と、投手兼任を打診した。野尻は言う。「ピッチャーの経験は中学時代に少しあっただけです。高校ではピッチャーはないだろうと思ってたので、最初は驚きました。でも監督さんの強い思いを感じたので、その思いに応えようと、やることに決めました」

「自分がチームを背負う気持ちで投げる」。投手の道を歩み始めた野尻は、140kmを超えるストレートを武器に台頭。3年生の夏、東千葉大会の決勝では成田を相手に完投勝ちし、3年連続の甲子園出場を決めた。東千葉大会で5だった背番号は、甲子園で1に変わった。投手として甲子園のマウンドに上がることには、格別な思いがあったと野尻は振り返る。

「甲子園のバッターボックスにも特別な思いはありましたけど、マウンドはまた違った感情が生まれました。去年の夏は甲子園練習がなくて見学という形でしたけど、マウンドに立って「早くここで投げたい」と思いました。実際に投げやすいマウンドでしたし、広く見渡せるんです」

昨夏1回戦の敦賀気比戦、野尻は投打にわたってチームを引っ張った(撮影・清水貴仁)

1回戦の敦賀気比(福井)戦では8回途中まで1失点、4番打者としては4打数2安打と投打で活躍。2回戦の興南(沖縄)戦は8回途中まで無失点とピッチングがさえ渡った。ベスト16に進出し、続く相手は下関国際(山口)だった。野尻は「甲子園の3試合で、この試合が一番印象に残ってます」と語る。

投げられず、打てなかった下関国際戦

この試合、野尻は4番サードで出場する。その背景には右ひじの痛みがあった。
「東千葉大会決勝の日に痛み始めて、あまり状態はよくなかったです。甲子園で2試合先発したあと、投げられない状態になりました。それで下関国際戦の前日、監督さんから『明日は(2年生の)根本に託して、バッティングで頑張ってくれ』と言われました」

下関国際戦では1回裏、先制のチャンスで打席に立ったが、併殺打に倒れてしまう。直後の2回表、バント処理で一塁へ悪送球をしてしまい、2失点につながってしまった。下関国際の先発・鶴田克樹の前に木更津総合打線は1点に抑えられ、1-4で敗れた。「4番として打ててたら、と思います」と、野尻は悔しさをにじませた。

仲間ともう少し一緒に野球をやりたかった。悔いの残るベスト16だった(撮影・藤原伸雄)

同時に「仲間のために勝ちたかった」という気持ちが野尻の胸中にはあった。「抑えられて負けたのも悔しいですけど、仲間ともう少し一緒に野球をやりたかった気持ちが強かったです。ベスト8に入れば、秋の国体にも出場できますから。負けてしまったことは仲間に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。「この仲間との高校野球が終わるんだな……」と思うと、悲しくなってきました」

負けて宿舎に戻った夜、野尻は仲間たちと一つの部屋に集まり、夜2時まで語り合った。

サマーリーグでバッティングに手応え

「ボールもよく見えてますし、しっかりバットを振れてる実感もあります」。サマーリーグを経て、持ち味であるバッティングに手応えを感じつつある。大学では野手に専念し、現在掲げるテーマはバッティングの確実性を上げることだ。その意図を、こう説明する。

「大学野球では1球で確実にしとめることが重要です。芯でしっかりとらえることや、打率を残せるバッティング。ボールをしっかりとらえられれば、ホームランに持っていける自信はあるので、そこを目標に取り組んでます」

大学では野手に専念している野尻。さらなる飛躍を誓う(撮影・武山智史)

9月14日に開幕する東京六大学野球秋季リーグ戦。春よりも出場機会を増やし、ファーストのレギュラー争いに加わることが目標だ。よく日焼けした野尻は真夏の新潟での経験を生かし、神宮で活躍する姿を思い描いている。

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