陸上・駅伝

特集:第88回日本学生陸上競技対校選手権

日本インカレ10000m優勝の立命館・佐藤成葉「5000も勝って自信つける」

立命館大の主将でエースの佐藤が、最後の日本インカレで初優勝を飾った(撮影・松尾誠悟)

第88回日本学生陸上競技対校選手権 女子10000m決勝

9月12日@岐阜メモリアルセンター 長良川競技場

1位 佐藤成葉(立命館大4年、荏田)33分24秒98
2位 五島莉乃 (中央大4年、星稜) 33分25秒65
3位 加世田梨花 (名城大3年、成田) 33分27秒47

陸上の日本学生対校選手権大会(日本インカレ)が9月12日に開幕した。トラック種目最初の決勝となった女子10000mは、立命館大主将の佐藤成葉(なるは、4年、荏田)が制した。佐藤は「キャプテンとして、やっぱりいままでの結果以上のものを出さないと、みんなに元気を与えることはできないと思ってました。いまは1種目終わって、それが果たせたのかなと思って安心してます」と言って笑った。

8年ぶりの女子駅伝無冠、立命館時代の終焉

予想外のスローペース、勝負のときを待った

28人が参加したレースは志村野々花(大阪芸術大3年、新栄)を先頭にスローペースで進み、先頭は変わりながらも、5000m付近でもひとつの大集団で動いた。そこから上田雪菜(筑波大4年、奈良育英)が前に出ると先頭集団は20人程度になり、残り3000m付近で6人に絞られた。

5000m時点まで、大きな集団でレースが進んだ(撮影・安本夏望)

先頭の上田の後ろに鈴木優花(大東文化大2年、大曲)、佐藤、五島(ごしま)莉乃(中央大4年、星稜)と続いた。残り4周となったところで鈴木と五島が前に出ると、佐藤が追う。ラスト2周で、ついに佐藤が前に出た。ここからロングスパートとなり、粘って追いかけてきた五島を振り切り、佐藤が歓喜のフィニッシュ。ゴールするなり涙をあふれさせた五島とは対照的に、佐藤はホッとしたような表情を浮かべながら、スタンドの仲間に手を振った。

スローペースは佐藤にとって予想外だった。前に出たい気持ちもあったが、2日後の5000mに照準を合わせていたこともあり、消耗しないようになるべく後ろの方にいて勝負するというプランに徹した。焦らず落ちついて、集中力を最後まで保つ。それが優勝につながった。

駅伝無冠に終わった昨年、今年はみんなで勝つ!

5月の関西インカレでは5000mで優勝し、10000mは2位に入った佐藤も、これまでの日本インカレでは悔しい思いをしてきた。「今年にかけてるのは、どの4回生も同じだと思うんですけど、その中で2種目走らせてもらえるという責任が自分にはありました。不安の中で走ってきて今日を迎えたので、いまは1種目終わってちょっと安心してます」。佐藤は晴れやかな表情でそう言った。

佐藤(右端)はラスト2周で勝負に出た(撮影・松永早弥香)

5000mでも優勝を狙う。昨シーズン、立命館は富士山女子駅伝6連覇を逃し、8年ぶりの女子駅伝無冠に終わった。「最後はみんなで勝ちたいです。そのためにも5000mも優勝して自分に自信をつけたいと思ってるので、気持ちを切らさ、明日1日空くので切り替えてまた走りたいです」。主将としてエースとして、佐藤は誰よりも強い心で勝ちにいく。

涙の五島、出られない仲間のためにも勝ちたかった

2位に終わった五島は、残り200mで佐藤を抜き、優勝する自分を思い描いていた。しかしあと一歩届かず、悔し涙を流した。

「今回、同じ4年生でも試合に出られない選手がけっこういて、その人たちの思いを全部受け取って走ろうと思ってて……。『莉乃が優勝するためにサポートするから』って、みんなもすごい応援してくれてたので、ずっと優勝することだけを考えてました。だから2位という結果ですごい、すごい、申し訳ないというか、みんなの思いをかなえられなくて悔しいです」

ゴール後に泣き崩れた五島(右)に、3位になった加世田梨花(名城大3年、成田)が手を差し伸べた(撮影・松尾誠悟)

そう一気に言うと、「駅伝に向けて弾みをつけられるように、5000mもあるんで、こんなところでくよくよして泣いてても何も変わらないので、私は5000mで優勝します」と決意を口にした。

佐藤にとっても五島にとっても、最後となる学生駅伝のシーズンが間もなく始まる。
チームのために。ふたりのその思いが、5000m決勝で再びぶつかり合う。

in Additionあわせて読みたい