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連載:M高史の駅伝まるかじり

関東インカレや駅伝にも出場! デフリンピック日本代表・岡田海緒さん

M高史の駅伝まるかじり
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デフリンピック日本代表の岡田海緒選手。関東インカレや関東大学女子駅伝にも出場しています
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さて今回は陸上のデフリンピック日本代表で、世界室内ろう陸上選手権で銀メダルを獲得した岡田海緒(みお)選手(日本女子体育大学4年、都立中央ろう学校)に取材させてもらいました。岡田選手は聴覚障がいアスリートの大会だけでなく、昨年の関東大学女子駅伝や今年の関東インカレにも出場しているんです。

両親の影響で陸上を始める

先天性聴覚障がいを持つ岡田選手。聴こえの程度は両耳とも100dB超です。これは「ジェット機のエンジン音を間近で聞いてやっと音が聞こえるレベル」なのだと教えてくれました。ご両親も聴覚障がいを持っているため「発音は祖母から習いました。その代わり祖母に手話を教えたりしました」といいます。「聴覚障がい者は肺活量が弱い傾向にありますが、肺を一番使う中・長距離をしていますね(笑)」と話してくれました。

「両親とも聴覚障がいを持っていて、父は短距離と走幅跳、母はやり投げをしていました。幼いころ、父の陸上クラブや個人練習でトラックに連れて行ってもらっているうちに、走ることに興味を持ちました」という岡田選手ですが、中学には陸上部がなかったため、バレーボール部に所属。陸上は高校から始めました。

中央ろう学校時代は東京都高校総体にも出場しました

高校時代は全国ろう学校対抗陸上大会の800mと1500mで3連覇を達成。卒業後は日本女子体育大学に進学します。

チームメイトに手話を教えることも

普段は中長距離ブロックで練習しています。「チームメイトはみんな個性が強く、明るくて元気です! シーズン前半は中距離の練習、夏合宿以降は駅伝に向けて長距離の練習をしています」。チームメイトとコミュニケーションをとるときは「相手の口を見て口話、わからないことは筆談しています。手話を勉強してる選手もいるので、手話を教えたりもします」

岡田選手は大学では健康スポーツ学を専攻しています。「学生によるノートテイク(先生の話してる内容やその場で起こってることを文字翻訳すること)に2人交代で講義を受けています。ノートテイクしてくれる人は陸上部員だったり、それ以外の学生学生だったりするので、いろいろ情報交換できて楽しいです」。オフの過ごし方について聞いたところ、「映画を見たり、ごはんを食べに行ったり、あとはプロ野球観戦が好きです!」と、笑顔で教えてくれました。

日本代表として国際大会に出場

2016年にはブルガリアで開催された「世界ろう者陸上選手権」に日本代表で出場。「初の日本代表ということで、プレッシャーや緊張もありました。また、初めての海外レースということで時差や食事、文化、天候の違いも感じました」とのことでしたが、800mと1500mともに7位と、力走を見せました。

さらに17年には、トルコで開催された夏季デフリンピックに日本代表として初出場。デフリンピックとは4年に1度、世界中から聴覚障がいのあるアスリートが集まる国際スポーツ大会、聴覚障がいアスリートにとってのオリンピックです。オリンピック、パラリンピックが開催される翌年に開催されています。(次回の夏季デフリンピックは21年開催)競技種目は陸上、バレーボール、サッカー、バスケットボール、ロードバイク、マウンテンバイクなど多数あります。

パラリンピックは身体障がい(肢体不自由)、脳性麻痺、視覚障がい、一部の種目で知的障がいのある選手が出場することができますが(そのほかにも、障がい区分が分かれています)、聴覚障がいアスリート部門はありません。

最初は海外選手との体格差やレースの駆け引きに驚いたそうです

日本代表として海外の選手と走っているうちに、「身長や体格の違いに驚きました。レース展開も駆け引きが多くて、最初ゆっくりでラスト勝負というパターンが多かったです」と、世界での戦い方を実感してきました。

今年3月の「世界ろう者室内陸上競技選手権大会」では、1500mで銀メダルを獲得。「自分のペースで最初から離していく作戦で、うまくいきました」。国際大会での経験を生かせました。「こみ上げるものがたくさんありました。家族、恩師、コーチ、支えてもらった方々に恩返しができました。祖母は泣いて喜んでくれてました!」

銀メダルを獲得した今年3月の世界ろう者室内陸上競技選手権大会。今大会日本勢唯一のメダル獲得となりました

試合前はなるべく普段食べているものを食べられるように、日本からお米を持って行ったり、レトルト食品を持って行ったりするそうです。男子マラソンの川内優輝選手が海外遠征の際にレトルトカレーを持参しているのも参考にしているそうです。

インカレや駅伝にも出場

聴覚障がい者の大会だけではなく、日本女子体育大学陸上競技部の一員としてインカレや駅伝にも出場している岡田選手。

昨年、初めてメンバー入りした関東大学女子駅伝では2区(3.3km)を担当しました。「高校では人数不足で駅伝に出たことはありませんでした。たすきをつなぐことでチームが一つになること、自分は一人ではないことを感じました」

前回の関東大学女子駅伝では2区を走り、チームが1つになることを感じたそうです

「とにかく1秒でも早くタスキを渡したいという一心で走りました。終わってから、走った選手はもちろん、マネージャーや補欠、サポートに来てくれた方、応援に来てくれた方に『お疲れさま』『ありがとう』という言葉をかけあってました」
チームメイトや関係者への感謝の気持ちも忘れません。

さらに今年は参加標準記録を突破し、関東インカレにも初出場。聴覚障がいのある選手で女子800mに出場したのは初めてだったそうです。主催の関東学生陸上競技連盟がスタートにランプを設置。雷管が鳴ると同時にランプが白く光り、岡田選手もスタートを切ることができました。

今年5月、自身初の関東インカレに800mで出場しました

岡田選手はデフ日本選手権で4冠(400m、800m、1500m、男女混合マイルリレー)、世界大会ではメダル、関東インカレ出場という目標をクリアできました。「今年の前半シーズンは自分としても大きく成長できたと思います」。それでも「まだ足りないことやもっといけたと思う部分が多いので、後半シーズンもさらに成長した姿を見せたいです。関東大学女子駅伝に向けては、大学最後の対校戦なので、同期とともに4年間頑張ってきた成果を見せたいです」と、仲間とのたすきリレーに熱い気持ちを語ってくれました。

もっと聴覚障がい、デフリンピックを知ってほしい

最後に聴覚障がい、デフリンピックに関して知ってほしいことを聞いてみました。「一見わかりにくい障がいで、重軽度も人によります。手話ができない人もいますし、発音が上手な人もいるので、人それぞれです。ひとくくりにせず、まずはどうやって話したらいいか聞いてもらえたらと思います」

聴覚障がいスポーツ部門はまだまだ認知度が低いこともあり、国際大会の代表選手に選ばれたとしても、遠征費が自己負担になることが多いそうです。「デフアスリートについての認知度が低いので『こういう人もいるんだな』と分かっていただけたらうれしいです。そしてデフリンピックという言葉も、合わせて知ってもらえたらいいですね!」

岡田選手の今後のさらなる活躍に注目です!

大学卒業後も競技を継続する岡田選手。今後のさらなる活躍に注目ですね!
そして、オリンピック、パラリンピックとともにデフリンピックも応援したいですね!

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