陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

出雲駅伝こぼれ話! レース中、主務は何をしているのか教えます!

このゴールめがけて、今年も熱戦が繰り広げられました!(撮影・藤井みさ)
杜の都への切符をかけた関東大学女子駅伝の応援に行ってきました!

10月14日に第31回出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)がありまして、いよいよ学生三大駅伝が開幕しました!

令和初代王者に輝いたのは、最終6区で大逆転を演じた國學院大學!
僕の母校・駒澤大学は8秒差で惜しくも2位。「その1秒を削りだせ」でおなじみ鉄紺の襷(たすき)をつないだ東洋大学が3位。今年の箱根駅伝で初優勝を飾った東海大学は4位。前回の出雲覇者・青山学院大学は5位。また、関東の大学に勝とうと一致団結して出雲に臨んだ立命館大学は6位に入り、関西王者の意地を見せましたね!

今回の出雲駅伝、駒大OB目線で大変恐縮ではありますが(笑)、僕の学生時代の話も交えて書かせていただきます。

前田監督、大八木監督との師弟対決を制す!

國學院大の前田康弘監督は駒大OB。駒大が箱根駅伝で初優勝したときのキャプテンです。実業団の富士通での競技生活を経て、現役引退後は駒大のコーチも務められました。ちょうどそのとき僕は駒大でマネージャーをしていましたので、本当にお世話になりました。当時、学生との年齢もかなり近くてアニキ的な存在でした。明るく気さくに話かけてくださるので、監督からも選手からも信頼の厚い方でした。

師弟対決について聞かれて、思わず笑顔の前田監督(左)と大八木監督(右)(撮影・佐伯航平)

この夏、國學院大に取材に行ったときに前田監督に聞いたのですが、駒大でのコーチ経験も現在の指導に大いに生きているそうです。

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アンカーは埼玉栄OB対決

アンカー勝負を演じた國學院大の土方(ひじかた)英和選手と駒澤大の中村大聖選手は、埼玉栄高校の同級生。同級生にはほかに2017、18年と日本選手権1500mを連覇した東海大の館澤亨次選手もいます。館澤選手は出雲駅伝を欠場しましたが、同級生の頑張りが刺激になるのは間違いないです! 同じ高校出身の同級生や先輩後輩対決に注目するのも、駅伝観戦の一つの楽しみ方ですね!

ついに実現!「なかむらたいせい」リレー

僕は毎年、駒大の新入生歓迎会で余興をしているのですが、いまから3年前のこと。配られた名簿を見たときに「なかむらたいせい」選手が2人いることに気づきました!
どうやって呼び分けるのかな、と思っていましたが、後日、出身高校名にちなんで「さかえ」「とうほく」呼び分けていると聞き、驚きました(笑)。中村大聖選手は埼玉栄高校、中村大成選手は東北高校の出身です。

そして、もしも「なかむらたいせいリレー」が実現したら、実況のアナウンサーさんはどう説明するのだろうと思っていたら、今回の出雲駅伝で実現しました!

大成選手から大聖選手へ、笑顔のタスキリレーが行われました!(撮影・佐伯航平)

5区中村大成選手(4年、東北)から6区中村大聖選手(4年、埼玉栄)への襷リレー、丁寧に出身校まで入れて実況されてましたね!

続いて、僕の学生時代の出雲駅伝の思い出を振り返ってみたいと思います。

レース中の主務の動きはこうなってます

まずはスタート前、出雲大社の前で1区の選手の付き添いです。スタートを見送ったあと、主催者が用意したバスでフィニッシュ地点へ移動します。その後は監督室でテレビモニターを見ながらスタンバイ。各区間の付き添いへ連絡をとっていきます。

6区間45.1kmと短く「スピードの出雲」と言われますが、2、3、4区のコース上まで行くとなると、それなりに距離があります(笑)。しかも選手たちはすごいスピードで駆け抜けていくので、もし途中の区間で応援に行くとしたら、フィニッシュ地点から走って移動できる5区の中盤をお勧めします。

レースの状況にもよりますが、5区の途中で応援して、6区のラスト1km地点なんかに移動して応援、というパターンもありました。

今大会もそうでしたが、最終区での逆転劇が多いことから「逆転の出雲」とも呼ばれます。まさか優勝できると思っていなくて、主務がゴールに間に合わなかったことも! 日大の主務だったNTT西日本の野中章弘コーチがそうだったと、話してくださいました。

4年間ずっと日大主務 NTT西日本・野中コーチ

もうひとつの出雲駅伝

レースのあとは「もうひとつの出雲駅伝」と呼ばれる出雲市陸協長距離記録会の準備です。駅伝に出られなかった選手たちの意地がぶつかり合います。選手の付き添いや応援で走り回ったあとですが、好走する選手も結構出てきます。全日本大学駅伝や箱根駅伝に向けてのアピールの場でもあるんですね。

たとえば今大会では、駒大で補欠に回った神戸駿介選手(3年、松が谷)です。第3中継所で4区の小林歩選手(3年、関大北陽)の付き添いにまわり、3区でトップに立つ激走だった田澤廉選手(1年、青森山田)を出迎えるシーンがテレビに映ってましたね。神戸選手はそのあとの記録会で14分1秒12(全体3位)と、自己ベストに迫る走り! 東海大学の箱根優勝メンバーである小松陽平選手(4年、東海大札幌)と郡司陽大選手(同、那須拓陽)に次ぐ好走でした。

中盤までトップでレースを引っ張った神戸選手。今後の走りにも期待です!(撮影・佐伯航平)

駒大の青山尚大主務(3年、中京大中京)は「神戸は付き添いをしながら、出雲を走れなかった悔しい気持ちをずっと持ってたそうです。記録会では途中から先頭でも引っ張り、ラストは惜しくも負けてしまいましたが、出雲を走れなかった気持ちを前面に出した走りで感動しました!」と話してくれました。

このときマネージャーは駅伝モードから通常の記録会モードに。選手が走るための準備にあたり、レース中はタイム計測(400mごと、1000mごと)や声かけ、レース後は記録速報を確認し、片付けをします。

さよならパーティーで他大学と交流!

記録会が終わり、夜は島根ワイナリーにて地元の方(炉談の会)が主催してくださるパーティーがあります。こういうレース後の交流会があるのは、三大駅伝の中で出雲だけです。選手たちもほかの大学の選手と交流します。マネージャーは名刺を持ち、グラスを持って挨拶(あいさつ)まわりです。大学関係者の方、卒業生の方、陸上部後援会の方、応援していただいた方にもご挨拶して回ります。ほかの大学のマネージャーとは、ねぎらい合います。

ほかの大学のマネージャーさんたち、何人かの方にはいまでもお世話になってます。ご縁の大切さ、ありがたさを感じます。

出雲駅伝、一番の思い出エピソード

僕の1学年後輩になるのですが、駒大OBの安西秀幸さん(安西商会)は今年1月の都道府県対抗男子駅伝で福島県チームの監督を務め、初優勝を飾りました。

学生時代の私(右)、中央は当時3年生ながら駅伝主将を務めた安西秀幸さん(写真は本人提供)

僕が4年生のとき、安西さんは3年生ながら駅伝主将としてチームを引っ張る存在でした。出雲では1区を走ることになり、レース前日一緒に下見しました。ラスト300mあたりで目立つ看板があり「この看板が見えたらスパートしますね!」と、戦略を話してくれました。

翌日、1区は大集団で進み、残り1kmを切って並走する選手たちも火花を散らします。「そろそろ看板が見えてくる……」とドキドキしながら戦況を見つめていたところ、安西さんは宣言通りに看板が見えたところでスパートをかけ、有言実行の区間賞! しかも区間新記録(当時)でした。いまでもスパートのシーンは鮮明に覚えてますし、「出雲といえば」と、ふたりで話すときに毎回話題に上がります(笑)。

駅伝観戦のとき、選手のスパートのタイミング、仕草、視線にも注目していただくと、より深く楽しみめるかもしれません!

来年からは10月の第2日曜日に日程が変更になる出雲駅伝ですが、これからも自分たちの襷に思いを込めたみなさんの変わらぬ熱い走りに期待したいです!

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M高史の陸上まるかじり

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