アメフト

関学RB鶴留輝斗 生き残るために鍛え上げた体、ブロックと中央突破でキラッと輝け

パンと張った腕が印象的な関学RB鶴留(すべて撮影・安本夏望)

関西学生リーグ1部 第3節

9月21日@大阪・万博記念競技場
関西学院大(3勝)31-3 京大(1勝2敗)

アメフトの関西学生リーグ1部の第3節で、関西学院大が京大に31-3と完勝。1970年代からいくつもの名勝負があった「関京戦」だが、これで関学の15連勝となった。関学は後半、控えメンバーを中心に戦った。その時間帯にパワフルな走りを披露したRB(ランニングバック)にスポットライトを当てたい。

タックルをはねのけて25yd前進、鳥内監督も絶賛

試合残り10秒。敵陣28ydからの第2ダウン。ボールを託されたRB鶴留輝斗(つるとめ・きらと、3年、啓明学院)が身長168cm、体重91kgの体で相手のタックラーを次々と振り払い、引きずり、力づくでゴール前3ydまで進んだ。エンドゾーンには届かなかったが、観衆を沸かせた。「最後、タッチダウン(TD)まで持っていけなかったのは痛いです。反省しないといけません」。試合後、鶴留は悔しさをにじませて言った。

今シーズン限りで退任を表明している鳥内秀晃監督(60)は39番の走りを絶賛した。試合終わりの囲み取材で、この日チームトップの88ydを走り、タッチダウンも決めたRB齋藤陸(2年、江戸川学園取手)についての質問が出たときだった。齋藤に関しては「あんなもんやで」と返し、自分から鶴留について語り出した。「鶴留がええんよ。あいつ、デカいからタックルできへんし、あんなんに走れたら怖いやろ? 一番うっとうしいランナーになるんちゃう?」。この春、控え選手中心で臨むJV戦4試合で計295yd、4TDと走りまくった鶴留への期待を口にした。

京大ディフェンス選手たちをはねのけて突進

鶴留は関学の提携校である啓明学院の出身。高3のときはアメフト部の主将だった。秋の兵庫県大会で関学高等部の42連覇を阻止し、初優勝に導いた立役者だ。当時はスピードとパワーを兼ね備えたRBで、走りまくった。関学に進んでからも当初は走り屋としての役目を求められたが、2回生になった昨春、フルバックへの転向を告げられた。フルバックはRBの中でも相手をブロックにいき、味方を走らせる役割が多いポジション。自分自身がボールを持つチャンスは少なくなる。「入学したときから半分、分かってはいました。それでも、ボールを持ちたい気持ちはあります」。同期に三宅昂輝(関西学院)、後輩にも前田公昭(2年、同)、齋藤ら学生トップレベル走り屋たちがいる。鶴留がファイターズで生きていくためのコンバートだった。

自分のブロックでタッチダウンにつなげたい

最初は「すぐ戻してくれるだろう」と、軽く考えていた。でも、そんなことは一切なかった。気持ちを切り替え、一流のフルバックを目指して体づくりを始めた。暇さえあればトレーニングセンターへ行き、トレーナーとともに筋力トレーニング。昨年から今春にかけてベンチプレスのマックスの数値は20kg上がり、スクワットも30kg近く上がった。いまではベンチプレスで160kg、スクワットで230kgを支える。ラインの選手たちにも負けないほど強い体になった。「フルバックにいって、腐らなくてよかったです。当たることへの恐怖心はなくなりましたし、やってきたことは確実に生きてます」。自分に厳しく向き合い続けたからこそだ。いまは学生日本一に向け「重要な場面でブロックしてTDにつなげたい」と考えている。とはいえ、京大戦での走りや鳥内監督の評価を考えると、要所で中央のランを任される機会も結構出てきそうだ。

高校から一緒にプレーしてきた先輩のQB中岡(14番)を守る鶴留

優しく、気遣いのできる男だ。中学、高校では学級委員長だった。取材中、通りがかったスタッフが物を落とすと、すかさず「落ちたよ」と声をかけていた。誰にでも元気よくあいさつする。

輝斗の名には「輝く星」という意味が込められている。
関学ファイターズのフルバックとして、誰よりも輝く星となれ。

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