慶應アメフト東方嘉永 明治のエースレシーバーを封じ、優勝候補撃破
関東大学リーグ1部TOP8 第3節
9月28日@東京・駒沢第二球技場
慶應義塾大(2勝1敗)20-10 明治大(2勝1敗)
アメリカンフットボールの関東大学リーグ1部TOP8第3節で、慶応義塾大が優勝候補の明治大に土をつけた。明治のミスに助けられた部分もあったが、慶應ディフェンスが五つものターンオーバーを奪って逆転勝ちした。
明治のオフェンスが陥った大乱調
前半は明治のペースで進んだ。慶應は明治のQB西本晟(じょう、3年、箕面自由学園)がタッチダウン(TD)をねらったパスをインターセプト。ディフェンスはいいところを見せたが、オフェンスは沈黙。0-10で試合を折り返した。流れが変わったのは第3クオーター(Q)。慶應のCB(コーナーバック)山本小次郎(3年、青山学院)が西本のパスを奪い、敵陣32ydと絶好のフィールドポジションからの攻撃権を得た。慶應のオフェンスがこの日初めて機能して、ゴール前へ攻め込む。最後はRB根岸真也(4年、慶應義塾)がエンドゾーンに飛び込んでTD。7-10だ。ここから明治のオフェンスが大乱調に陥る。2シリーズ連続でファンブルロスト。慶應はこのチャンスを二つのフィールドゴール(FG)成功につなげて逆転に成功。続く明治のオフェンスシリーズではパントをブロックし、リターンTD。第3Qのわずか7分弱の間に慶應が20得点。このまま20-10で慶應が勝った。
慶應の勝利を支えたのはディフェンス陣だった。完成度の高い明治のオフェンスと対峙‘(たいじ)するにあたって、慶應は早いタイミングのショートパスで余分なゲインを許さないことを徹底した。捕られても、そこから走られなければ大けがはしない。慶應のCB東方嘉永(ひがしかた・よしなが、4年、芝)は明治のエースWR九里(くのり)遼太(4年、明大明治)を徹底マークし、走らせなかった。東方と逆サイドのCBである山本は二つのインターセプトを決める活躍。チームとして、明治に一発のパスで最長24ydしか前進させなかった。
当たり負けしない体をつくり、余裕が出た
明治のエース九里を封じた東方は芝高校(東京)時代、野球に打ち込んでいた。強豪ぞろいの東京ではなかなか勝ち上がれず、やりきった実感が持てなかった。大学では新しいスポーツで活躍し、トップを目指したいと思った。慶應に進学し、「カッコいいし、日本ではそんなにメジャーじゃなさそうだから活躍できるかも」と、新天地をアメフト部に決めた。慶應義塾高アメフト部上がりの選手が多い中、持ち前の負けん気で頭角を現し、3年生になった昨シーズンにCBのスターターとなった。「経験が少なかったことで緊張してしまい、慌ててプレーすることも多かったです」と振り返る。今シーズンはトレーニングで体が大きくなり、自信もついた。当たり負けない体になると、余裕を持ってプレーできるようになった。
慶應は前節、法政に負けた。しかし、明治に勝てばまだ優勝のチャンスはある。徹底的に明治オフェンスをスカウティングした。これまで明治の対戦相手がやられていたのは、タイミングの早いショートパスからのレシーバーのランだった。絶対に走らせないという覚悟で練習した。そして試合でもほぼ完璧に抑え込んだ。東方は自分の役割をまっとうした。
全員でやりきって早稲田にも勝つ!
4年生の今シーズンは、DB(ディフェンスバック)のパートリーダーを務める。日ごろから意識しているのは、個々のプレーヤーがしっかりと責任を果たす気持ちをつくること。 ほかのポジションに比べて選手層が薄いDBにおいては、一人ひとりの出来が試合の行方に大きく影響する。仲間を励まし、ディフェンス全体のムードを盛り上げることが、試合でのナイスプレーに直結すると考えている。
今シーズン、慶應ディフェンスが掲げたテーマのひとつに「ターンオーバーで勝つ」というものがある。その通りに5度もボールを奪い、優勝候補の明治を倒した。次節の13日には2年連続の甲子園ボウル出場を狙う早稲田に挑む。慶應はいまの4年生が1年生の秋に勝って以来、早稲田に負け続けている。東方は言う。「明治戦の前は、もう負けられないという緊張の中で、全員が前向きに取り組めました。いい練習ができたときは勝てる。慢心せず、全員でやりきって早稲田にも勝ちます」。実現すれば、慶應はTOP8の“台風の目”となる。