大学陸上・駅伝

特集:出雲駅伝2019

鮮やかな逆転劇で三大駅伝初優勝 國學院大キャプテン土方英和、充実のラストイヤー

「1」のポーズでゴールにとびこむ土方(撮影・藤井みさ)

第31回出雲全日本大学選抜駅伝競走

10月14日@島根・出雲大社~出雲ドームの6区間45.1km
優勝 國學院大 2時間9分58秒
6区(10.2km) 土方英和 29分5秒(区間賞)

10月14日の出雲駅伝で、7年ぶりに出場した國學院大學が初めて三大駅伝の優勝をつかんだ。春のトラックシーズンからチームとして好結果を出してきた流れのままに、駅伝シーズンの開幕戦でタイトルをつかみとった。レース後、6区で37秒差を逆転したキャプテンの土方(ひじかた)秀和(4年、埼玉栄)に話を聞いた。

大聖に追いつけるとは思ってなかった

ゴールの出雲ドームに向けてまっすぐに伸びた道の両側には、大勢の駅伝ファンが待ち受ける。そこに真っ先に飛び込んできたのは、黒と赤のユニフォーム、國學院大のアンカー土方の姿だった。指で「1」の形をつくりながらフィニッシュテープをきり、ガッツポーズ。「よっしゃー!」と雄叫びをあげた。

襷(たすき)を受け取った時点では4位。この時点でトップの駒澤大のアンカー、中村大聖(4年、埼玉栄)は高校の同級生だ。いまでも仲がいいというふたりは中継所でも「けっこう話しました」という。「駒澤の優勝はかたいんだろうな、という話をしてて、『とにかく追うよ』って大聖に言いました」。その言葉通り、土方は37秒先に出て行った中村に追いつけるとは思っていなかった。「(東海大の)西田(壮志、3年、九州学院)君が『攻めます』と言って、すごい勢いで出ていったので、2人で追って3番以内に入れればいいのかなと思ってました。チーム目標は3位以内で、もらったときに4位だったので、とにかく3位以内に入ろうと思いました。正直、追いつけるとは思ってなかったです」

ゴール直後、チームメイトとしっかり抱き合う(撮影・安本夏望)

だが土方は、残り2kmほどで前を行く中村の動きがバラバラになっていることに気づく。「後半になってから、もしかしたらいけるかもしれないという状態で、本当に抜くまでキツかったです。でも抜いてからも大聖の動きが変わらなかったので、スパートをかければいけるな、と。突き放すつもりで、とにかく走りました」。スパートするための足を残していたのだろうか? 「残ってはなかったんですけど、勝ちたいという気持ちが強く出ました。いっぱいいっぱいだったけど、とにかく前に出ようと思いました」。残り700mで中村を追い抜き、真っ先にゴールへ飛び込んだ。土方と中村の差はわずかに8秒だった。

目標を可視化し、モチベーションをアップ

國學院大陸上部の今年のテーマは「歴史を変える挑戦」だ。シーズン序盤、関東インカレ2部のハーフマラソンで土方が優勝、ダブルエースの浦野雄平(4年、富山商)は5000、10000mともにトップ。「今年の國學院は違う」とのインパクトを周囲に与え、選手たち自身もその流れに乗って、メキメキと力をつけていった。トラックシーズンの目標は「全員自己ベスト更新」だった。4月から寮の廊下に目標のタイム表を貼り、自己ベストを更新した選手だけがシールを貼れるようにした。誰が目標を達成しているのかが可視化されたことで、「チーム全体のモチベーションが上がったのは間違いないです」と土方は言う。土方、浦野のほか、1区を走った藤木宏太(2年、北海道栄)、2区の中西大翔(1年、金沢龍谷)らも次々に自己ベストを更新。「浦野がとにかく結果を残すので、僕も負けずに。去年から監督には『浦野より目立つ走りをしろ』と言われてました。いいところを持っていけたのかなと思います」。土方はそう言って笑った。

逆転でゴールテープを切る。一躍このレースの主役になった(撮影・安本夏望)

チームの雰囲気を聞かれると「下級生の突き上げが力になってます」と返した。しかし「僕たち4年生が抜けたあとの穴が大きくなってしまうので、そこが課題です」とも口にした。「なかなか3年生が台頭してこないです。今回のレースを刺激にして、メンバー外だった選手は来週記録会もあるので、しっかり3年生以下の選手が走りで自分を表現してくれれば、もっと國學院の力が上がってくると思う」と、キャプテンらしくチームを俯瞰(ふかん)した視点で語った。

泥臭い取り組みを後輩にも見てほしい

今年は好調な土方だが、大学に入った当初から走れる選手だったわけではない。彼が1年生のときに4年生のエースだった蜂須賀源(現・コニカミノルタ)に学んだことが、土方や浦野の原点になっているという。「蜂須賀さんが泥臭くやってることを真似して、この夏もしっかりやってきて。それを後輩にも真似してほしいという思いはあります。夏合宿も本当に走り込む人だったので、僕たちもそれに影響を受けてます」。たとえば、120~130分間のジョグをしたあとに30km走に取り組む。体が重い中でどれだけ動かせるか、けがをするリスクギリギリのところでやってきたこともあるという。「後輩たちには『僕たちだからできる』じゃなくて『僕たちもそういう段階を踏んだからこそできるようになった』と話してるので、そういう姿を見て強くなってきてもらいたいです」

伊勢路でも自分の走りで勝負を決めたい

レース直後には「ゴールテープを切ることは考えてなかったです。まさか達成できるとは思わなくて、正直まだ実感がない、今は出し切ったというぐらいの感じしかない」と口にしていた土方。3週間後にはもう全日本大学駅伝がやってくる。今回はチーム全員が初めて臨む出雲で楽しんで走り、全日本、箱根につながるような走りをしようと思っていたという。経験は生かせそうですか? と問われると「いままで単独走をほとんどしたことがなかったんですけど、後半は自分のペースでしっかり追うことができました」と、収穫を口にした。

ここにいるメンバーだけではない。國學院のチーム力は高まっている(撮影・藤井みさ)

9月の日本インカレで自信をつけ、さらに今回の出雲で自信が深まったという土方。今月の目標である「区間賞」も達成できた。「今日の結果は僕だけじゃなくて、そこまで5人が襷をつないできてくれた結果です。それから、ライバル校と競っていた結果で僕の好走を生むことができたと思ってます。チームのみんなにも、ライバル校のみんなにも感謝の気持ちです」と語った。ライバル校への感謝をなかなか口にできるものではない。こんなところにも土方の人柄がにじみ出ていると感じさせられた。

全日本大学駅伝に向けての抱負を聞いた。「何区になるかわからないけど、おそらく後半の長い距離だと思います。(勝負を)決定づけるような走りをして、チームでは3位以内、個人では区間賞という目標を達成したいです」。そう言った土方の表情は充実感に満ちていた。3週間後、伊勢路での國學院が楽しみだ。

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