出雲駅伝Vの國學院 目標に届かず7位、前田康弘監督「もう1度気を引き締めて」
第51回全日本大学駅伝
11月3日@愛知・熱田神宮西門前~三重・伊勢神宮内宮宇治橋前の8区間106.8km
7位 國學院大 5時間17分34秒
10月の出雲駅伝で初優勝した國學院大は、11月3日の全日本大学駅伝で7位だった。シード権は獲得したが、「三大駅伝すべて3位以内」を目標に掲げて走ってきた選手たちに、笑顔はなかった。
目標の「3位以内」はならず、笑顔なし
アンカーで主将の土方英和(4年、埼玉栄)はゴールに飛び込む前に、両手で「ごめん」の仕草をした。迎える選手たちの表情からも、一様にこの結果に満足していない心の内が見てとれた。去年だったら、シード権を取れたことに喜んでいただろう。しかし今年はもっと上を目指せるチームになっている。誰もがそう確信しているからこその「ノー笑顔」だった。
最近はどの駅伝指導者も「ミスをしたところが負ける」と口をそろえて言う。各チームの力が高いところで拮抗する「戦国駅伝時代」だ。全日本のレース後、國學院の前田康弘監督(41)も言った。「出雲はミスなく走れましたが、今回は2区間で大きなミスがありました。『5強』といわれる大学だけではなく、選考会から勝ち上がってきているチームも、力は同じなんだと感じさせられました。どこのチームも一つはミスをしていますが、私どもは二つやっているので、自分たちの目標としていたところにも届きませんでした」
2区間で大きなミス、流れに乗れず
出雲駅伝優勝チームとして、いままでにない注目を集めていた國學院。1区(9.5km)はこの夏トラックで好調ぶりを見せていた島崎慎愛(よしのり、2年、藤岡中央)。三大駅伝デビューの島崎はトップから28秒差の12位で襷(たすき)をつなぐ。2区(11.1km)には当日のエントリー変更でエース浦野雄平(4年、富山商)が入った。順調にペースを刻み先頭をうかがうが、後ろから猛烈な勢いで追ってきた東京国際大の伊藤達彦(4年、浜松商)が全員を抜き去っていく。前田監督は「浦野は区間新(31分38秒)だし、ある程度は目標値の通りに走ったんですが、伊藤君はちょっと……。あのタイム(31分17秒)はなかなか破られないんじゃないですかね。(浦野も)1km2分50秒で押せてたんですけど……」と振り返った。
3区(11.9km)は藤木宏太(2年、北海道栄)。前田監督が来シーズン以降のエースとして期待する選手だが、区間12位に沈み、4位から9位へと後退してしまう。しかし、このままでは終わらない。4区(11.8km)はルーキーの中西大翔(たいが、金沢龍谷)。後半に若干の失速はあったが、区間4位の堅実な走りでチームを6位に押し上げた。5区(12.4km)の青木祐人(4年、愛知)は國學院初となる全日本の区間賞に輝いた。トップと29秒差まで迫り、再び優勝の可能性を引き寄せた。6区(12.8km)の中西唯翔(ゆいと、1年、金沢龍谷)は4区を走った中西の双子の兄。区間5位、弟同様の安定感で4位をキープした。
しかし7区(17.6km)を任された副将の茂原(もはら)大悟(4年、高崎)が踏ん張れない。区間17位と奮わず、先頭の青山学院大との差は3分3秒に広がった。最終8区(19.7km)の土方も出雲で見せたような強気の走りが出せず、7位でのゴールとなった。
もう1度、気を引き締めて
出雲で優勝して注目されたことが影響しましたか? と問われた前田監督は「注目されたからからどうというのはないけど、選手の中に見えないものがあったんだと思います。ただこれでつぶれるような選手たちではないので」と、信頼の厚さを強調した。「昨年の全日本6位、箱根駅伝は7位で史上初のシード権、春も個々に頑張ってくれて、出雲駅伝で初優勝。それで今回この結果というのは、もう1回気を引き締めるという点ではよかったと思います。じっくり私なりにも総括して、あと2カ月過ごしたいです」と話した。
結果的に3区藤木、7区茂原の遅れが響いた。「藤木は気負ってしまったかな。駅伝経験が少なかったので、この失敗で彼の中で何かが動いてくれれば。相澤君が来て(抜かされて)から、リズムが崩れてます。あれが学生トップの走りだというのを見て、うちにも浦野がいるから、一緒に練習を積み重ねてほしいです」と前田監督。そして副将として土方とともにチームを引っ張ってきた茂原について「彼も悔しいと思います。でも彼がブレーキしたということは、まだまだチームとして力がないんだと思います」と語った。
今後につながる1年生中西ツインズの走り
落ち込んだような表情でゴールした土方は「レースの流れに乗ることができませんでした」と振り返った。「4強といわれる大学(青学、東海、東洋、駒澤)としっかり競れず、離される展開が多かったです。各区間、数秒数秒が足りなかったと思います。出雲で勝ったのも僕たちが強かったからじゃなく、力が拮抗してたのでたまたま勝ったと思ってます。気を引き締めてしっかり、と思ってやってきました」。だが、課題と自覚していた選手層の薄さが目に見えて出てしまった。「箱根はさらに増えて(走るのが)10人になるので、それ(選手層の薄さ)をしっかりカバーできるようにやっていきたいと思います」
収穫もあった。4区の中西大翔、6区の唯翔という双子ルーキーの快走だ。前田監督、土方ともに、ふたりの走りを「今後につながる」と評した。弟の大翔は「自分が出るのは不安もありましたけど、目標の3位以内をチームのために達成したくて、そのために何が何でもいい走りをして喜びを味わいたいと思いました」。兄の唯翔は「監督から前との位置を気にして積極的に走ってほしいと言われたので、それを気にして走りました。今日の走りは80点ぐらいです」。お互いに刺激し合って「負けたくない存在」として切磋琢磨しているという。次は11月17日の上尾ハーフをターゲットに練習を積んでいきたい、と話してくれた。
箱根駅伝での目標は「往路優勝、総合3位以内」だ。次は大手町のゴール地点でみんなで笑えるように。國學院の挑戦は続く。