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ゴルフ信夫杯 東北福祉大が2連覇、「6人目」の主将・関将太が決めた

自らのパットで劇的な勝利をつかみ、関は叫んだ(すべて撮影・北川直樹)

第63回信夫杯争奪日本大学ゴルフ対抗戦

10月31日、11月1日@千葉カントリークラブ・梅郷コース
優勝 東北福祉大 551(271、280)
2位  日大    551(275、276)

10月31日と11月1日にあったゴルフ団体戦の信夫(しのぶ)杯で、東北福祉大が2年連続15度目の優勝を飾った。最後の最後まで行方の分からない展開に、選手たちは歓喜を爆発させ、そして涙した。優勝を決めたのが、主将の関将太(4年、水城)だった。自らのパットで優勝を決めたが、その瞬間のことは「何も覚えてません」と振り返った。

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初日は出番なし

信夫杯は各校から6人がエントリーされ、5人が他校のライバルとともにラウンドする。各校の上位4人のトータルスコアで順位を決める。

東北福祉大は上々のスタートを切った。初日には、10月の国内男子プロ下部ツアーで史上3人目となるアマチュア優勝を果たした杉原大河(2年、生光学園)が6アンダーと好調。チーム全体で271と、2位の日大に4打差をつけていた。

「これくらいのレベルになると、なかなか差を詰めるのは難しいんですよ。例年は(初日に)4、5打離したら勝てたし、何なら2日目でさらに離す展開になってました」。そう話す関は「6人目の選手」として、初日はプレーしなかった。しかし、8月に世界アマチュアランキングでトップに立った金谷拓実(3年、広島国際学院)が3オーバーをたたくと、彼の代わりに2日目の最終ラウンドで出番が来た。

「6人目」の選手だった関は初日、好調なチームを支える裏方に回っていた

最後にめぐってきた重大な責任

関を含めて昨年の優勝メンバーが4人いるが、4年生は関だけだ。初日の上位4校の20選手がきれいに5組に分かれて最終ラウンドの競技が始まった。上位組の最初のグループで出ていった東北福祉大1年生の鈴木晃祐(西武台千葉)が崩れる。前半だけで四つスコアを落とした。

チームとして前半で日大に4打差をひっくり返され、逆に5打差をつけられてしまう。初日好調だった杉原も崩れた。4アンダーで進んでいたが、突然OBを打ったかと思えば、そのホールで8打の大たたき。しかし、東北福祉大は何とか日大に食らいついていった。

混沌とした状況で、最終組で最終18番にいた関に情報が入った。ティーショットを打った後だった。「お前がバーディーを取ったら勝ちだぞ、って言われて」。一気に重大な責任が関の両肩にのしかかった。

自分のパットですべてが決まる。関はその責任を強く強く感じていた

要するにこういうことだ。最終組を前に日大が東北福祉大を1打リードしていた。関が1打差を詰めてイーブンにすれば、東北福祉大の勝ちとなる。というのも5人中上位4人のトータルスコアで並んだときは、本来カウントされることのない5人目の2日間のスコアを加えて比べる。その5人目の成績が日大149、東北福祉大148。たった1打、東北福祉大が上回っていたのだ。「バーディーを取ったら勝ち」には「1打差を縮めろ」の思いがこもっていた。

18番のグリーン上、日大の岩崎亜久竜(4年、クラーク記念国際)がバーディーパットを外す。「10年くらいゴルフをやって、いろんな試合に出てきたんですけど、あそこまで緊張した瞬間はありませんでした」と関。約5mのバーディーパットに挑む。絶妙のタッチで放たれたボールがラインに乗り、ホールへと消えた。関は「よっしゃ! 」と力強く腕を突き上げた。喜び過ぎたのに気付いて、あわてて口を押えた。見守る仲間が大いに沸く中で、杉原が「OBして8打を打った僕のせいで負けたら、申し訳なさすぎて……」と号泣していた。まさに東北福祉大チームの総合力で、連覇を手にした。

関(中央)が決めた瞬間、杉原は涙しながら関を迎え入れた

「僕の人生で絶対に忘れない思い出」

あまりにも劇的すぎて、関の興奮が収まらない。

「いろいろありすぎて。とにかく、一つひとつのいいことが重なったんじゃないですかね。本当に全員のどれか1打でも悪かったら負けていたので。まさかというようなミスをそれぞれはしましたけど、とにかく全員が自分のプレーに徹しました。アプローチや飛距離と、それぞれの持ち味で補うマネジメント。そういうものが重なった結果、僕らがギリギリで勝ったという感じです」と、一気に話した。

最終ラウンドの後半に崩れはしたが、杉原の初日の好スコアがなければ優勝はなかった。初日に調子が出ない中でも74でまとめた金谷、2日目の前半にスコアを四つ落としながら、後半を35で回ってきた鈴木。二人の踏ん張りが、最後は勝敗を分けたのだ。

そして、主将の存在だ。関は昨年の信夫杯で、2日目にメンバーを外された。今年は初日にプレーできず、「2日目はやってやる」と18ホールにすべてを注いだ。最後の最後にとんでもない大役が回ってきた。「急にプレッシャーがかかりましたけど、こんな緊張感でできるというのは楽しいな、と思って」。4年間、丹力を積み上げてきた主将に、大きな大きなご褒美が待っていた。

大学最後の団体戦は、関(右から3人目)にとって忘れられない思い出となった

ゴルフは孤独なスポーツだ。目標とするプロの道に進めば、なおさら実感することだろう。だからこそ、関は学生ゴルフの醍醐味をかみしめる。

「ゴルフは個人競技じゃないですか。だからこうやってみんなで喜びを分かち合うことは、個人戦ではできないと思うんですよ。最後に団体戦で優勝して、飛び跳ねて喜べる瞬間を味わえたことは、僕の人生で絶対に忘れない思い出になると思います」

記憶も記録も、鮮明に。大会の歴史に堂々とその名を刻んだ。

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