大学ラグビー

明治ラグビーの新米SO山沢京平 無限の可能性を抱えて帝京、早稲田、選手権へ挑む

新しいポジションで奮闘する明治のSO山沢(中央、すべて撮影・谷本結利)

ラグビー関東大学対抗戦 Aグループ第5節

11月10日@東京・秩父宮
明治大(5勝)40-3 慶應義塾大(2勝3敗)

昨年度の大学王者である明治大を開幕から引っ張るのは、今年からFBからSOに転向している山沢京平(3年、深谷)だ。日本代表やトップリーグでも活躍する兄でSOの拓也(パナソニック)にも負けない才能を持つ男が、慶應相手に格の違いを見せつけた。

慶應戦で最初の中央からのPGに失敗

 1110日、明治は慶應との伝統の一戦に臨んだ。明治にとって慶應は一昨年、昨年、そしてこの夏の練習試合でも負けている相手だった。慶應も大学選手権出場に向け、何とか強豪に勝って連敗を止めたい。 

秩父宮ラグビー場に17000人を超える観衆を集め、両校とも序盤から気合いが入っていた。前半3分、先制のチャンスを得たのは明治だった。相手の反則からほぼ中央のPGを得てSO山沢が狙う。だが、簡単なキックだったにもかかわらず、山沢は右に外してしまう。逆に9分、慶應にPGを決められて0-3とリードされた。 

明治の山沢(中央)はSOとして初めて、シーズン終盤の戦いに臨んでいる

山沢は「久しぶりの秩父宮ラグビー場だったし、SOとして大きな試合は初めてでした。緊張を楽しめてるつもりでしたけど、ミスをしてしまった……。先制点を取れずにチームのリズムを手放しかけてしまった。次は修正したいです」と、反省を口にした。

 ただ、SO山沢はキックのミスで落ち込むことはなく、逆に輝きを増した。

 しっかりと攻撃を組み立て、17分にCTB射場大輔(4年、常翔学園)のトライで逆転すると、24分にはディフェンスラインの裏へのキックでFB雲山弘貴(2年、報徳学園)のトライを演出。34分には自ら相手のディフェンスラインを切り裂いてトライを挙げて21-3と大きくリードした。その後は慶應に得点を許さず、403で快勝。開幕からの連勝を5として、早稲田とともに首位に立った。

 紫紺の10番をつける山沢は「ミスしたときに深く考えず、いかに平常心でいられるか。次のプレーに集中できました。そこだけはよかったです」と言えば、明治を率いる田中澄憲監督は「プレッシャーのあるゲームですから、彼は納得してないかもしれないけど、合格点かな」と話した。

中学生のころまで、地元埼玉の強豪クラブでサッカーをしていた

 監督のアドバイス「80点を目指すマインドで」

 今年の初め、田中監督は「スピードもあり、パス、キックのスキルも高い」と評価する山沢を、本人とも話した上でFBからSOへコンバートした。ただ慶應戦の前、まだSOとして波のある山沢にアドバイスした。「毎回、100点の試合を目指すのではなく、80点を目指すマインドでプレーしてみよう。本当に大事な試合で100点になればいい」と。その言葉通りのパフォーマンスだったというわけだ。

山沢が本格的にラグビーを始めたのは埼玉県熊谷市立熊谷東中2年生のころだった。2人の兄が深谷高でプレーしていたが、彼自身は小さいころ、さほどラグビーに興味がなかったという。中学までは地元の強豪クラブでサッカーをしていて、J1サンフレッチェ広島のMF松本泰志と一緒にプレーしていた。

中学では部活に入ることが義務づけられていたため、山沢は「兄のジャージとかあって、お金がかからなかったので」という理由で、ラグビー部に籍を置いた。1年生のときはほとんどプレーすることはなかったが、2年生になると顧問が変わって、周りの選手たちが熱心に練習するようになると、山沢も徐々にラグビーにのめり込んでいった。

3のときには「その前まで埼玉県で下の方だった」(山沢)というチームが、県で2位となり、東日本中学生大会にも出場。山沢は「すごくうれしかったですし、そのときからサッカーではなく、ラグビーでやっていこうと思いました」と振り返る。1回戦で桐蔭学園中(神奈川)に大敗したが、それでも仲間とともに得た成功体験が大きかった。

課題のゲームコントロールを、いかに向上させていけるか

大学選手権2連覇のキーマン 

高校は兄たちと同じ深谷に進学し、高1のころからFBとして注目され、花園にも3年連続出場を果たした。高校ジャパンにも選出され、明治に進学しても1年生からFBとして活躍。一瞬のスピードがあり、キックは多彩。ライン際ではアウトサイドで蹴ってタッチラインを狙うロングキッカーでもある。 

今年からFBからSOに移り、田中監督に「スキルは申し分ないが、課題はゲームコントロール」と言われているように、本人も「チームを動かしきれていないあたりはまだまだダメです」と自覚する。ただ山沢は「SOの出来は試合の勝敗に直結しますし、(一番後ろにいる)FBより相手に近い部分で駆け引きするのは楽しい」と、声を弾ませる。 

今後の活躍次第では当然、日本代表として4年後のワールドカップフランス大会に出ることも視野に入ってくる選手の一人だろう。ただ本人は今年からSOになったばかりで「そんなに(次のワールドカップを)はっきり目指しているとは言えない」と謙虚に語る。「いまは先を見る前に目の前の目標をクリアして、一試合ずつ積み上げていきたい」と意気込んだ。 

優勝を争う明治は1124日には対抗戦の帝京大戦、121日には早稲田戦が控える。そして大学選手権で勝ち上がれば、来年111日は新しい国立競技場での決勝戦が待っている。山沢が80点以上のプレーを続けて、一番の勝負の試合で100点のゲームコントロールができれば、明治の大学選手権2連覇は現実のものとなるはずだ。