対抗戦で帝京に9年ぶりの勝利 僕たちはチャレンジャーに徹した
ラグビー関東大学対抗戦Aグループ第5週
11月10日@東京・秩父宮
早稲田大(5勝)34-32 帝京大(4勝1敗)
早稲田大学ラグビー蹴球部は創部101年目の今シーズン、関東大学対抗戦Aグループの2連覇、その先に11シーズンぶりとなる大学選手権優勝を目指しています。4years.では、早稲田のチームの司令塔役を担うSO(スタンドオフ)の岸岡智樹(4年、東海大仰星)に、試合に臨む際の思いや、試合中に何を考えていたのかといったことを日記の形でつづってもらいます。1回目は11月10日、今シーズン最初のビッグゲームとなった帝京大戦についてです。
11月9日 帝京戦前日
「ワクワク」と「ドキドキ」が、試合前の僕の心を表現するのに最適な言葉だと思います。その裏側には楽しみ、期待、高揚、不安、懸念、心配などの感情がいっぱいです。
去年、今年と夏合宿の練習試合では勝てたものの、過去3年間、対抗戦で帝京に勝ったことは一度もありませんでした。過去の「負け」という記憶は決して消えるものではなく、あの赤いジャージを前にするとマイナスの感情があふれてくることも事実です。
ですが、今年はプラスな感情が多かったのです。その理由としては、もちろん「勝つ」という成功体験を重ねたことによる自信もありますが、自分たちの立場を第三者視点でとらえることができていたのも一因でした。「今年の早稲田は強い」。そう言っていただける機会も増えました。それでも、まだ何一つ結果を残していません。この試合で残す結果が今後の僕たちの運命を左右すると考えて、挑みます。
11月10日 帝京戦当日
試合後の率直な感想としては「本当にうれしい」のひとことでした。対抗戦で早稲田が帝京に勝ったのは9年ぶりだそうです。
僕たち自身、そこに注力していたわけではありませんが、この試合にかける思いというものは本当に計り知れないほど大きなものがありました。僕自身も大学生相手の試合で唯一、公式戦では帝京に勝ったことはありませんでした。なので、ノーサイドの瞬間は涙がこみ上げてきました。早稲田の選手たちの喜びようを見ていただければ、この試合への意気込みが分かっていただけると思います。
「先手必勝」。この試合のテーマでした。早稲田のなすべきことは大学選手権優勝ですが、その過程として帝京は絶対に倒さなければならない相手だという認識は、部員全員が持っています。
チャレンジャーとして帝京よりも前へ
我々はチャレンジャーなので、試合の初めから「仕掛ける」というマインドをもって挑みました。「相手より先に仕掛けるんだ」「前に出るんだ」というマインドと、サインプレーを駆使して先手をとる準備をしていきました。プレーのことで言うと、用意したものがうまくいったこともあり、試合にはいい入りができたと感じています。
ですが、やはり帝京の強みの部分に苦戦する場面があり、スコアで負けている中で試合を折り返すことになりました。僕たちの感覚としては「攻めたい。自分たちの強みを出すことができれば確実にトライがとれる」という感覚がありました。
後半も先手ということをイメージする中で、着実に点差を詰めていくことを考えてプレーしていました。シーソーゲームのような試合展開に会場はどんどん盛り上がり、声援が本当に背中を押してくれた部分がありました。
後半に入ってすぐ1点差に追い上げたのですが、残り15分ぐらいでまたもトライを許してしまい、8点差になりました。そのとき、僕たちはこう話し合いました。「絶対にとり急がない。一つひとつ着実に返していく」
5分後、まず1トライ(5点)を返しました。トライ後のキックは決まらず、3点差。これで、早稲田の選手たちが腹をくくれたのかもしれません。もし、キックが決まり1点差になっていれば、そのあと僕たちは3点を狙いにいってたかもしれないです。でも3点差ある。勝つにはトライが必要という条件が、僕らの意思を一つにしました。
「全員がトライをとるために必要なことは何なのか」を考え、行動した結果が、ロスタイムの逆転トライにつながりました。早稲田ラグビーの長い歴史の中に、また新たな1ページを作ることができたと思います。大学選手権優勝に向けて対抗戦残り2試合も頑張ります。
SNSでは「2015年のワールドカップで日本が南アフリカに勝ったときと点数も状況も同じだ」という意見がありましたが、まさに同じだったような気がします。また、当日は2万人を超えるファンのみなさまにお越しいただき、本当に感謝しています。ラグビーワールドカップの影響もあり、ラグビーに興味を持った方が増えた影響だと思いますが、応援してくださる方の声援であったり、歓声は確実に選手の後押しになっています。本当にうれしく思います。ありがとうございます。