陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

けがからの復活途上にある東海大の館澤亨次と關颯人、ラストシーズンへの思い

走り終わって笑顔で引き上げる館澤(左)と關(撮影・藤井みさ)

11月17日の上尾シティマラソンで、スタートから70分を過ぎたころに競技場へ戻ってきたふたりがいた。東海大のキャプテン館澤亨次(4年、埼玉栄)と關颯人(同、佐久長聖)だ。

關「キツいっす」館澤「すごい楽だった」

ふたりはユニフォームではなくTシャツ姿。けがからの回復途上にあるためペース走のつもりで走ったそうで、ともに1時間14分2秒のタイムだった。關は9月の全日本インカレのころから足が痛かったといい、2カ月ほど走らない期間があり、この大会の1週間ほど前に走り始めたばかりだと明かした。「もう状態がどうとかじゃなく、箱根にむけて走らないといけないんで。今日は(1km)3分40秒ぐらいでっていう話で館澤についていったら、3分30秒で走られて……。だいぶ速かったです」と、少し疲れた様子だった。

隣にいた館澤は前週にあった世田谷246ハーフマラソンからの連続出場となったが「先週は(1km)4分ぐらいでもめっちゃキツかったけど、今日はすごい楽でした。いい練習ができました」と笑顔。その受け答えを見た關は「裏切られました」とこぼす。館澤が關を見やりながら「すごいですよね。復帰してすぐ、このペースでついてくると思わなかった。靴もジョグシューだし、絶対きつかったと思います」と言うと、關は「キツいっす」。館澤は「めちゃくちゃ楽だったので、いじめました」と言って笑った。

自分の体と向き合い、得るものも多かった

高校時代から輝かしい実績を残し、「黄金世代」と呼ばれてきた彼ら。今年1月の箱根駅伝で初の総合優勝をなし遂げたが、その後は思うようにシーズンを過ごせていない選手が多かった。とくに館澤は4月の時点からハムストリングスを痛めていたことが夏になってから発覚。恥骨結合炎とも診断され、リハビリに専念する時期が長く続いた。

けがの種類が違うので、リハビリも別々で行っていたという

陸上人生ではじめての停滞期をすごした館澤だが、リハビリを通じたトレーナーとの出会いが大きかったという。「いままでけがすることがなかったので、自分の体と向き合うってことがなかったんです。けがをすると、何が足りなくて何が長所なのかとか、自分自身とゆっくり向き合える経験になりました」。足踏みをして苦しい期間でもあったが、自分自身を見つめ直すいい機会にもなった。「この経験がいつかいい結果につながると思うし、つなげていきたいですね」。走れるようになってどうですか? と聞くと「やっぱり気持ちいいですね」と笑った。「早くスピードを出したいんですけど、痛みもまだあって。練習でも本番でも、スピードを出したときって気持ちよく走れるので、早く出したいです」

戦えるレベルまでもっていきたい

全日本大学駅伝では「黄金世代」のどまん中と言われる4年生の館澤、阪口竜平(洛南)、鬼塚翔太(大牟田)、關を欠いても優勝。東海大はチームとしての層の厚さを見せつけた。チーム内の競争も激しいが、館澤は淡々と言う。「(3年生も)もともとみんな強いメンバーです。高校時代は自分のほうが遅かったし、伸びるスピードが違っただけで実力通りかなと。自分のほうが速いとは思ってないんで、切磋琢磨(せっさたくま)して伸ばしていきたいです」。

このあともけがなく。ふたりの走りを箱根で見たいと思う駅伝ファンは多いはずだ

この日で箱根駅伝まで1カ月半になった。1年生のとき以来箱根を走れていない關は「あとは練習して箱根に出るだけです。日々の練習がアピールになると思うので、しっかりやっていきたい」と前を向く。館澤は「優勝自体はかなり自信があります」とさらり。しかし、こうも続けた。「出雲駅伝のこと(5位)もあるし、そんなに甘くはないとも思うので、油断せず。自分自身でもチームのため、戦えるレベルまで持っていきたいです」

思わず「楽しみですね」と言うと、館澤はまたやわらかい笑顔になって「ここから期待に応えられるように頑張ります」と返した。

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