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特集:UNIVASは日本の大学スポーツを変えるか

独自改革の先駆者・筑波大、練習時間見直した男子ハンドが14年ぶりにインカレV

UNIVASは日本の大学スポーツを変えるか
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筑波大硬式野球部の集中応援日の様子(写真は提供・筑波大学新聞)

連載の最終回は独自に大学スポーツ改革に取り組む先駆者的な存在となっている筑波大学について。2016年にアメリカのテンプル大学、スポーツブランド「アンダーアーマー」などを扱う株式会社ドームとともに共同研究にあたり、翌17年にはスポーツ局に相当する「アスレチックデパートメント(AD)」の設立準備室を設置、18年にADをスタートさせた。

筑波大でスポーツアドミニストレーターを務める佐藤氏(撮影・渡辺史敏)

ADの目標は「最高の学校スポーツプログラム作り」

ADがスタートして1年半が経った。スポーツアドミニストレーターを務める佐藤壮二郎氏は現状について「試行錯誤の真っ最中」と表現した。その理由について佐藤氏は「課外活動である部活とさらにそれを規定する競技団体の間で成立しているスポーツ活動に、これから学校が主体者としてどう関わっていくかの事例を積み重ねている段階です」と語る。その上でADの目標に「最高の学校スポーツプログラム作り」と掲げる。具体的には「スポーツを通じてしか出会えない能力を育て、次の時代の人材を育成していく機関にならなければならない。そして本来一体にならない人たちがスポーツを通じて一体になれるような、スポーツしか持っていない本来の価値が学校にあるということの最大化」という2点を挙げている。

副アスレチックディレクターの山田晋三氏。かつてアメフトの名選手だった(撮影・渡辺史敏)

一方で副アスレチックディレクターの山田晋三氏は「まだ大学の中でスポーツの位置づけが決まってないんです。ただ議論が始まっているのは大きい。経営陣でスポーツをどう位置づけるのか、課外活動をどう位置づけるか。そこを大学側が決めないといけない」と、難しさも口にした。さらにスポーツやコーチングを専門とする教員も多数在籍していることもあって、十分に意思統一できていないのが現状だという。ただ学長や副学長といった経営陣までがADの議論に加わっていることが強みだとも語った。

現状45チーム中5チームがADに参加

そうしたこともあって筑波大に存在する45チームのうち、ADに参加しているのは現在硬式野球部、男女のバレーボール部、男女のハンドボール部と5チームに留まる。ただ、佐藤氏はもし45チーム全部が参加したら現在のADではマネジメントできないとした上で「例えば野球は150~160人います。バレーボールは20人とチームのサイズが違います。できることも違うし、目指すところも違う、アリーナ系の種目とグラウンド系の種目では安全対策のあり方も違う。チームの規模感とかシチュエーションの違うチームと議論をすることは、すごく重要です」と、現在の効用も強調する。

ADが現在取り組んでいることの一つが、学業基準の設定だ。現在5チームの監督たちと学生の成績評価値GPAの基準作りが進められている。目標は3.2で、これは5チームの全学生の平均という。ちなみにオールBで3.0となる。また学業成績が優秀なアスリートの表彰や成績が著しく低い学生に対する面談などはすでに実施されているということである。

男子ハンドボール部は秋のインカレで優勝した(写真は提供・筑波大学新聞)

さらに佐藤氏が「実績が出ている」と強調するのが、練習時間の見直しだ。男子ハンドボール部が監督との議論を経て、部が主体的に練習時間を1週間20時間にするという基準を設け、実践した結果、この春の大会で優勝、さらには秋の全日本インカレで14年ぶりに優勝したのである。同様に硬式野球部も夏の熱中症防止のため、コアタイムの練習を制限し、熱中症の減少とともに成績の向上にもつながっている。

また学生の成長をうながすとともにスポーツ活動と学外の人が一体になるということを目的にして、地元つくば市などと連携し、お祭りに部活生が全員参加したり、SDGsの一環として貧困に苦しんでいる子どもたちを対象にしたスポーツ教室といった活動にも取り組む。

喫緊の課題は継続性

そんな筑波大に対し、やはり改革を目指す他大学も注目しているようだ。佐藤氏は言う。「いくつかの大学とは密に連絡を取りあっています。それが結構な数になってきています。いつでも連絡を取り合える大学はかなり増えてきています」。さらに最近は中学校、高校からも高い関心が寄せられるようになっており、山田氏は「大学スポーツの変革事例は、中学や高校にも大きな影響を与える」と話す。現在では中学校の教員を相手に講演会を開くまでになっているとのことだ。

試行錯誤中だとは言いながらも、日本では先駆者的存在となっている筑波大学のADだが、喫緊の課題は何かと尋ねると、佐藤氏と山田氏が口をそろえて答えたのはサステナビリティ、継続性だった。山田氏は「正直、日本でこの課題を解決しないとどうしようもない、というのがお金のことです。サステナビリティを保つには。ここをどうするのかが次のステップかもしれません」と打ち明ける。さらに佐藤氏は「大学がちゃんと組織上も予算上も中長期的に、学内でどう位置づけていくのかは課題です」とした上で「お金だけでなく人がちゃんとそこにいつづけるという、お金の面のサステナビリティにプラス、エネルギーの面のサステナビリティが重要ですね」と語った。確かに大学スポーツ改革はこの先長い年月を必要とするのは確実で、この面は非常に重要になりそうである。

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