日大・渡邉かや 下北沢成徳時代の後輩・石川真佑にも負けない勝負強さを
全日本インカレ第3日の11月28日、3回戦の8試合があり、男女のベスト8が出そろった。4年生にとっては学生として最後の大会。負けた悔しさや、もうこのメンバーでバレーができない寂しさをかみしめて泣く姿がある。その背中を見て、下級生たちは「来年こそ」と飛躍を誓う。日大のエース、渡邉かや(3年、下北沢成徳)もその一人だ。
春高連覇、喜びよりも深く刻まれた悔しさ
渡邉は下北沢成徳高(東京)時代、日本代表でも活躍する黒後愛(東レアローズ)とともに、2、3年生と春高バレーで連覇を達成した。本人が「自信があるのはレシーブ」と言うように、当時から攻守のバランスに長(た)けた選手として活躍。最上級生となった2017年、レギュラーを目指してトレーニングに励んだが、渡邉のポジションに入ったのは1年生。この秋のワールドカップで日本代表として活躍した石川真佑(同)だった。
何としても試合に出たい。毎日ひたすらレシーブ練習や、セッターとコンビを合わせながらのスパイク練習に取り組んだ。当時を振り返り、渡邉は「死ぬ気で練習しました」と口にする。しかし、抜群のセンスと勝負強さを誇る石川は1年生と思えない存在感を発揮。渡邉がレギュラーとしてコートに立つことはかなわなかった。「春高バレー連覇」という輝かしい結果を残しても、胸の中にあった感情は喜びより、むしろ悔しさが上回っていた。より強く、逞(たくま)しい選手になるべく渡邉が選んだのが、スポーツをやる上での環境が整った日大への進学だった。
決めるべきところで決められず、未熟さを痛感
日大は2017年の秋季リーグ後に1部昇格を果たし、今年の春季リーグでは4位と躍進。その立役者となったのが、ベストスコアラー賞とレシーブ賞に輝いた渡邉だった。彼女自身も高校時代に培ったパワーを生かし、高いトスを打ちきれる。技術にも磨きがかかり、3年目の全日本インカレに臨んだ。ベスト8進出をかけて日大が対戦したのは九州の1部2位で、14年には準優勝している福岡大だった。
この日、渡邉が見せた多彩な攻撃は圧巻だったが、福岡大も彼女を警戒し、試合序盤から渡邉に対しては常に2枚、3枚のブロックをそろえ、コースを塞いだ。「1セット目は決まっても、2セット目からは相手に対応されました」と振り返ったように、日大は第1セットを先取したが、第2セットからは、苦しい状況から無理に打ち込んだスパイクが相手ブロックに屈する場面も増えた。
苦しい状況でも決めるのがエースの仕事。自らを奮い立たせるように、ラリー中もトスを呼び、前衛からだけでなくバックアタックも次々決めた。リードされた状況でも、ひるまず攻め続けた。
第2、第3セットを連続で奪われ、第4セットも6-15と一時は9ポイントのリードを許した。あきらめずに追い上げたが、追い上げたところで確実に決めきれなかった、自分の未熟さを痛感させられた。悔いが残ったのは「いつも通り」が大事な試合でできないことだ。
「普段の練習や練習試合、リーグ戦では簡単に上げられるボールに対して足が動かず、上げるべきボールを落としてしまいました。そんなプレーをしてるようでは、絶対に勝てないと実感させられました。日本代表で活躍する(黒後)愛や(石川)真佑は、こういう場面で絶対に決めてくれる。とくに真佑は身長も小さいのに世界を相手に通用してたし、ワールドカップを見て、改めてすごさを感じました。あそこで決められる実力はもちろんだけど、勝負強さがあるからみんなが『真佑に決めてほしい』と託せるし、期待に応えてくれる。私もそういう厳しい状況、苦しい場面でこそ頼られ、使ってもらえるような選手になりたいです」
「かやさんのためなら頑張れる」と思ってもらえるように
3度目の全日本インカレは、昨年と同じベスト16で終わった。4年生が抜け、新たなチームになればエースとしてだけでなく、キャプテンとしてチームを束ねる立場になる。
「高校のときは、自分が死ぬ気で頑張る。それだけ考えてればよかったんですけど、大学はそうじゃない。自分だけが頑張っても勝てないので、チームのみんなを同じ方向に引っ張っていけるように、私の背中を見て『かやさんのためなら頑張れる』と思ってもらえるような選手になりたいです。ラスト1年、いままでと比べられないぐらいにつらく、しんどいだろうけど、もっともっと成長したい。大学にきて『この4年間は本当に得るものが大きかった』と思える1年にしたいです」
悔しさをかみしめて、これからを見すえる。すべてを次への糧にして、もっともっと強くなる。最上級生として迎える新たな始まりに向け、さらなる進化を誓った。