陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

青学・中村友哉の4年生としての覚悟 最初で最後の箱根駅伝でやりきる

冷たい雨風にさらされながらのレースで、中村(中央)は最後まで岸本(右端)と競い合った(撮影・松永早弥香)

10000m記録挑戦競技会 男子10000mタイムレース

11月23日@横浜市・慶應義塾大学日吉陸上競技場
1位 中村友哉(青山学院大4年) 28分31秒68(自己ベスト)

雨の中でのレースとなった11月23日の10000m記録挑戦会で、総合トップの記録を出したのは青山学院大の中村友哉(4年、大阪桐蔭)だった。28分31秒68の自己ベスト。しかし中村は「記録は狙ってたんですけどコンディションがあまりよくなかったんで、29分切れればいいかなってぐらいでした」と振り返った。

岸本大紀との一騎打ち、4年生として勝ちたかった

中村が出走したのは、設定タイムが28分15~50秒と全12組で2番目に速い9組だった。同じ組には青学から鈴木塁人(4年、流経大柏)や吉田祐也(4年、東農大第三)、吉田圭太(3年、世羅)、岸本大紀(1年、三条)ら11人がそろっていた。レースが始まると鈴木が先頭に立ち、1km2分50秒ほどのハイペースで大きな集団を引っ張った。4000mのところで早稲田大の太田智樹(4年、浜松日体)がスッと前に出ると、その後ろに早稲田の新迫志希(4年、世羅)が続いた。

残り10周あたりから先頭は青学集団に代わった。中村から吉田圭太へ、そして吉田祐也と先頭が代わり、残り7周からは岸本を先頭にして中村と吉田祐也の3人が先頭になった。残り5周からは岸本と中村の一騎打ち。残り2周になる直前に中村が岸本の前に出ると、そのままフィニッシュ。中村は笑顔で岸本とハイタッチをすると、冷えた体を抱えるようにトラックを後にした。

この9組に青学から11人の選手が出走し、中村を含め6人が自己ベストを出した(撮影・松永早弥香)

記録を狙って調整をしてきたレースだったが、いざトラックに立つと雨に加えて想像以上に風があった。28分台が出ればいい方かもしれない。そう思いながら走り始めた。しかしレースが岸本との一騎打ちになってからは勝負にこだわった。ラストまで勝ちきり、記録は自己ベスト。中村は「4年生として最後は勝ちたかったです。でも途中まで引っ張ってくれたのは吉田圭太だったり岸本だったんで、そういう意味ではラストで勝っただけ」と後輩たちの名前をまず挙げた。

原監督がどう評価しようと、箱根に向けて全力を尽くす

ラストイヤーの今年、出雲駅伝で初めて学生三大駅伝を走った。最終6区を任されるも、3位から5位に順位を落とした。「駅伝力ゼロ。アンカーなんだから、そこはもうなりふり構わずいかないと」と原晋監督に喝を入れられた。

リベンジをかけた全日本大学駅伝では、7位だった青学を区間2位の走りで3位まで上げ、7区の吉田圭太に襷(たすき)をつないだ。中村の奮起を受け、原監督は「(中村を)箱根も走らせる」と明言。それを受けて中村に質問してみると「(全日本大学駅伝の走りを)監督にどう評価されようとも、自分は箱根を走るつもりでいるんで、最大限にやるべきことをやるだけです」と言いきった。

全日本大学駅伝では区間2位の快走で青学の準優勝に貢献した(撮影・安本夏望)

箱根駅伝まであと1カ月。10000mでの自己ベストは自信にもなったが、箱根路の勝負はその倍の距離となる。「もっと持久力が必要になってくるんで、それ相当の走り込みをしてスタミナを強化していきます」と目指すべき走りを思い描いている。

昨シーズンに比べて変わったと思うところを尋ねると、「けがしなくなったことぐらいですかね」と答えた。ただ中村の言葉の節々から伝わるのは「4年生」としての覚悟だ。中村にとって最初で最後の箱根駅伝。目指す優勝は、自分の走りで引き寄せる。

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