ラグビー

特集:第56回全国大学ラグビー選手権

早明戦に輝いた明治LO箸本龍雅 歩んできたエリート街道、立ち止まって鍛え直した

試合前に笑顔を見せる明治大のLO箸本(中央、すべて撮影・斉藤健仁)

関東大学対抗戦Aグループ 第7週

12月1日@東京・秩父宮
明治大(7勝)36-7 早稲田大(6勝1敗)

25年ぶりの全勝対決となった早明戦で、最も輝いたのは紫紺の5番だった。
12月1日、関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦がキックオフを迎えた。ともに開幕から6連勝で優勝のかかった試合のチケットは早々に完売し、22987人の観衆が集まった。

先制トライに始まり、体を張って早明戦の主役に

試合開始早々は早稲田が有利に進めたが、明治がボールをキープして前に出続け、徐々にペースを握った。SH飯沼蓮(2年、日川)からのワンパスでボールキャリアとしてその中核を担ったのがキャプテンHO武井日向(4年、國學院栃木)、そして、この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出されたLO箸本龍雅(はしもと・りゅうが、3年、東福岡)だった。

8kg絞った体で相手をかわしにいく

前半17分、箸本はゴール前に走り込んでボールをもらうと、そのままボールをインゴールに持ち込んだ。さらに10-7で迎えた後半2分、相手を引きつけてSO山沢京平(3年、深谷)へパスし、最後は武井が右中間に飛び込んだ。その後も後半33分までプレーした箸本はスクラム、ラインアウトでも体を張り、明治の勝利に大きく寄与した。

「体がよく動いてました」という箸本は、冷静にこう振り返った。「1本目は滝澤(佳之)コーチに教わったので、走り込んだら取れました。2本目は前半のボールキャリーがいいダミーになったと思います。(山沢)京平からコールがあったので、パスしました」

一昨年、昨年の箸本は高校日本代表、U20日本代表での合宿、遠征も含めて1年中、ラグビー漬けだった。昨シーズンの大学選手権の途中で、やや心身の疲れが見えたこともあり、首脳陣があえて試合に出さないこともあったほどだ。今年の箸本は対抗戦の開幕から好調をキープし続けている。その要因について本人は「1年間ずっと明治でプレーできてるのが大きいです」と語る。

時間を確保して、もう1度鍛え直した

鍛え直して節制、豚骨ラーメンは試合の日だけ

高校時代から注目されていた箸本はユース代表に選ばれ続けて、春のシーズンは海外遠征や合宿が多かった。だが今年は招集を断って体のメンテナンスをしつつ、もう1度鍛えることに決めた。トレーナーや栄養士と相談。大好きな豚骨ラーメンも試合の日にしか食べず、摂生にも努めた。

身長188cmと上背のある箸本は、スクワットでは200kgを挙げられるようになった。その一方で、体重は114kgから106kgに落ち、体脂肪も18%から14%に減った。肉体改造に成功したというわけだ。

またプレー面では、ボールキャリアとしても少しでも前に出るために「常に前を見て判断すること」を意識して練習に臨んだ。全体練習後にステップのトレーニングも続けている。夏ごろはステップだけを考えてしまい、タックルをまともに受けてしまうこともあったが、いまでは「ステップを踏んだ方がいいか、低く前に出た方がいいのか、使い分けられるようになった」と語る。

田中監督「成長意欲が高く、常に考えてる選手」

間近で成長を見てきた田中澄憲監督も箸本に対して「成長意欲の高い選手で、体のことから、どうすればいいプレーできるかまで、常に考えてます。とくに今シーズンはその意識が高く、そうした姿勢がパフォーマンスに反映されています」と目を細めた。また監督によると、箸本は練習中によく質問してくる選手の一人で、アタックにおけるFWの立ち位置などを聞かれてアドバイスしたという。

タックルを受ける直前に冷静にパス

小学校からラグビースクールに入ると同時にサッカーもプレーしていたが、高校からラグビーに専念する。東福岡の藤田雄一郎監督のアドバイスもあって、BKからFWに転向。高校2年生から主力の一人として頭角を現し、2016年度はキャプテンとして高校3冠を達成した。 

高校卒業後にそのままトップリーグでプレーすることも頭をよぎったというが、明治の丹羽政彦前監督に誘われ「勉強もしたかったし、大学でも自分を伸ばせる環境がある」と、進学した。「高校ではBKラインに入ってランやパスもしてて、そういうところがいまも生きてます。大学に入ってからはFWとして力強さを勉強させてもらっています。明治に来て後悔はありません」

「次のワールドカップはめっちゃ出たい」

17歳からユース代表で桜のジャージーを着ていた箸本にとって、日本代表は夢ではなく現実的な目標だろう。好きな選手は日本代表No.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)であり、海外の大きな選手にも力強いプレーを見せているLO/FL姫野和樹(トヨタ自動車)のプレーを参考にしているという。

10月にはラグビーワールドカップの予選プール4戦目、日本代表 vsコットランド代表の試合を現地で明治の仲間たちと観戦し、「日本代表がみんなに応援されてて、次のワールドカップは、めっちゃ出たいと思った」と、2023年大会への出場に意欲を示した。

大学3年生になって、チームトークでも積極的に自分から話すようになり、責任感も出てきた。「アタックはよくなってきた」と感じている箸本の現在の課題はディフェンス面だ。「1対1のタックルや、接点でのしつこさ、ジャッカルなどが出てくればもっとよくなる」と先を見すえた。

将来的にはLOではなく、主にFLやNo.8といったバックローでプレーすることになるだろう。ただ、いまは「監督に言われた、どのポジションでもやる」と謙虚な姿勢を貫いている。好きな言葉は、高校時代にチームで大事にしていた「小事大事」である。少しずつ、一歩ずつ前へと成長しつつ、まずは大学選手権の連覇へと邁進する。

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