大学陸上・駅伝

早稲田・中谷雄飛 ふるさと長野への思いで粘り、守り抜いたトップの座

後ろから設楽悠太らに追われ、「来ないでくれ」と思いながら走っていたという(撮影・藤井みさ)

第25回全国都道府県対抗男子駅伝

1月19日@広島・平和記念公園を発着点とする7区間48km
優勝 長野 2時間17分11秒(大会新記録)
第7区 中谷雄飛(早稲田大2年)37分18秒(区間2位)

1月19日の全国男子駅伝は、長野チームの3年ぶり8度目の優勝で幕を閉じた。7区(13km)でアンカーを務めたのは昨年に引き続き中谷(なかや)雄飛(早稲田大2年)。ゴールテープを切る前から右手の人さし指を立てて何度も「1」をアピールし、笑顔でゴールすると大きく2度ガッツポーズした。

早稲田・中谷雄飛 けがで苦しみ、負けて芽生えたチャレンジャー魂

精神的につらくても粘って逃げた

6区(3km)で区間新記録の区間賞だった吉岡大翔(川中島中3年)から、トップで襷(たすき)を受け取った。「前半のレース展開を見てても、まさかトップで持ってくると思ってなかった」と中谷。自分がしっかりやるだけ、ベストをつくすだけだ、という思いで走り出した。まずは速く入って、リズムを作る。最初の1kmを2分43秒で入り、理想としていたペースを作れた。

昨年は福島の相澤晃(当時東洋大3年)と同時に2位でスタートしたが、相澤に力の差を見せつけられた。中間点を過ぎてからペースが落ち、3位でのゴールとなった。その経験をもとに、リズムを作ってからも1km2分50秒ぐらいで押していきたいと考えていた。右腕の時計を見る仕草が目立ったことについては「時計をオートラップにするのを忘れてて、1kmごとに確認してました」と笑った。結果的に5kmを14分10秒、10kmを28分27秒とペースを維持。「思い描いてたような形で走ることができました」

「まさかトップで渡してくれるとは」と思いながら駆け出した(撮影・松尾誠悟)

一方、襷リレーの時点で2位兵庫の延藤(のぶとう)潤(マツダ)とは8秒差、4位埼玉の設楽悠太(ホンダ)とは21秒差があった。後ろから追ってくる、と意識しながら走った。何度も後ろを振り返ったが「設楽選手がなかなか見えなかったので、いいペースで走れてるのかなとも思いました」。だが「これ以上ペースを落としたら追いつかれる」との思いもあり、8kmを過ぎてからはペースを落とさないように意識して「追いつかないでくれ」と願いながら走った。体がキツいのはもちろんだが、「精神的なものが大きくて、そこに苦しめられました」と語る。残り2kmで「もしかしたらいけるかも」と思い、その思いは残り1kmで「いける」という確信に変わった。

地元のみなさんへ恩返しするのが、この駅伝

優勝への率直な感想を問われると「ゴールテープを切りたいなとは思ってましたけど、まさか本当に切れるなんて……。感無量です。いまでも実感がないというか」と答えた。

恩師の高見澤先生(左)と中谷(撮影・藤井みさ)

中谷はこの駅伝に対して思い入れがある。佐久長聖高校の恩師で、長野チームの監督を務めた高見澤勝先生には中学校のころからお世話になり、大学に入ってもいろいろな面で支えてもらっているという。「本当にいつも感謝してます。支えてくれるすべての方に恩返しするのがこの駅伝かなと思ってます。ここにいるスタッフ、先生方だけじゃなく、県民のみなさんにも大きなサポートや応援をもらって、その方たちのおかげで僕たちが走れると思っています。去年はとくに台風の被害もあったので、少しでもそういう人たちを勇気づけられるような結果が出せればと思ってました」。恩返しをするには、一番でゴールすること。その気持ちが中谷を最後まで動かした。

4年生のときの世界陸上が大きな目標

「今回は本当に、個人としてもある程度納得いく走りができた」という中谷。今後はトラックで結果を出したいという思いがある。「この結果をいいステップにして、トラックで世界選手権、オリンピックと活躍できるような選手になりたいです」。間近に迫った東京オリンピックというよりは、2021年に米オレゴン州のユージーンで開催される世界陸上を大きな目標として置いている。「いまは東京というよりは、少しずつ一つひとつの目標をクリアしていって、4年生のときに花開けばいいと思います」

早稲田で3年目のシーズン、中谷の会心の笑みが何度も見られるだろうか(撮影・藤井みさ)

昨年はけがなどもあり、思うように走れない時期もあった。だが、その苦しみは広島で喜びに変わった。「頑張ってよかったなと思ってます」と話す顔に、充実感がにじみ出ていた。中谷の心からの笑顔を久々に見た気がした。「いい感覚をつかめた」という大学3年目のスタート。彼の今後が、より楽しみになった。