「有言実行」を胸に 慶應主将・佐藤海徳が駆け抜けた悔いなき4年間
慶應義塾大学ソッカー部は2部リーグ優勝と1部リーグ昇格という快挙をなし遂げた。そのチームを主将として率いたのは佐藤海徳(みとく、4年、桐光学園)だ。佐藤はラストイヤー、チームが掲げたスローガンに「有言実行」を胸に、駆け抜けた。
まさかの長期離脱
チームは淺海友峰監督による「走るサッカー」を体現し、開幕3連勝でスタートダッシュに成功。佐藤は主将としてチームをまとめるだけではなく、プレーでも開幕6戦で1ゴール3アシストをマークし、好調のチームを支えた。
しかし、けがと手術による長期離脱を余儀なくされる。リーグ戦だけではなくチームの目標であったアミノバイタルカップ、そして佐藤自身も強い思い入れがあった早慶定期戦(早慶クラシコ)でもピッチに立てなかった。そのときに佐藤は「何のためにサッカーをしてきたのか、もう復帰しなくてもいいのでは」と思ってしまったと、ソッカー部のブログでつづっている。
そんな苦境に立たされた主将を救ったのはチームメートだった。第7節の立教大戦、佐藤自身は手術で会場に行けなかった。それでもグラウンドには佐藤の応援歌が鳴り響き、得点を決めるとチームメートが佐藤の背番号である7を指で作るパフォーマンスをしてみせた。チームは4-0で快勝した。
「慶應に来て一番うれしい瞬間」
それを転機に、佐藤はみんなのために復帰し、主将として勝利に導くことを決断した。そして離脱期間中も、チームスタッフとして仲間を支えた。献身的な主将の姿を見て、チーム全体で「海徳のために」という団結が生まれ、“荒鷲軍団”はまた一つ成長した。惜しくもアミノバイタルカップと早慶定期戦には敗れてしまったが、チームの進む道は明確だった。残された最後の目標である、リーグ最少失点で2部優勝の「有言実行」だ。
9月には佐藤も復帰を果たし、ピッチでもチームを支えた。後期はどの対戦相手も首位の慶應に対して守りを固め、簡単に勝たせてもらえない試合が多くなった。それでも慶應は勝ち点を着実に積み上げ、最終節を残して昇格を決めた。
最終節は負ければ優勝を逃す可能性もある大一番。自分たちのしてきたことを出せば絶対に勝てるという確信が、佐藤にはあった。雨でグラウンドのコンディションもよくはなかったが、結果は2-0の勝利、そして最少失点での2部優勝を果たした。「慶應に来て一番うれしい瞬間でしたし、優勝した後に野村京平(4年、國學院久我山)や沼崎和弥(4年、暁星)らと抱き合った瞬間は一生忘れないと思います」と佐藤は言い、喜びをかみしめた。
「この4年間に悔いはない」
2年のときに2部に降格。1年で1部復帰を目指したものの、3年生のときは昇格どころか一時は残留争いにもなった。そしてチームを引っ張ろうと臨んだラストイヤーは、けがによる長期離脱。佐藤にとって大学サッカーは苦しみそのものだった。
しかし最後は、笑顔で終われた。「この4年間に悔いはない」と言い、1部でプレーする後輩に対して「絶対に諦めずに頑張ってほしい」とエールを送った。
今シーズンから1部という大舞台で戦う慶應義塾大学ソッカー部。これまでよりも手強い相手が待っているが、どのようなサッカーを繰り広げるか。大舞台で羽ばたく“荒鷲軍団”の真価が問われる。