陸上・駅伝

順大・泉谷駿介 東京選手権110mHで3位、浮き彫りになった課題と向き合い

110mH決勝、スタートで泉谷(中央)は頭一つ抜けたが、2台目で高山(手前)に並ばれた(撮影・松永早弥香)

第83回東京陸上競技選手権大会

7月23~26日@駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場
泉谷駿介(順天堂大)
男子走幅跳 1位 7m92(追い風1.1m)大会新記録、自己ベストタイ
男子110mH 3位 13秒80(向かい風1.1m)

昨年9~10月のドーハ世界選手権を右太もも裏肉離れのために棄権した泉谷駿介(現3年、武相)にとって、今大会は昨年9月の日本インカレ以降、初のレースとなった。110mハードル(H)のほか、走り幅跳びや三段跳びなどにも取り組んでいる中で、今大会には「うまくまとまっている方に出よう」と考え、110mHと走り幅跳びの2種目にエントリー。優勝した走り幅跳びでは次につながるいい感覚を得られたが、メインで取り組んでいる110mHでは課題の残るレースとなった。

走り幅跳びは初戦で自己ベストタイ

大会2日目の24日、9時40分から110mHの予選に出場し、13秒91(向かい風0.4m)で1着。その後、15時からの走り幅跳びに臨んだ。2回目に7m67(追い風0.9m)を跳んでトップに立つと、3回目には大会新記録で自己ベストタイの7m92(追い風1.1m)を記録。以降も7m70台を出しながら、そのまま優勝を決めた。

走り幅跳びを終え、「はまり過ぎちゃうと傾いてコントロールが難しいので、浮くのももうちょっと前に抜けれたらいいな」とコメント(撮影・松永早弥香)

冬季練習と春以降の大会がない期間、「ひたすら走っていました」と言うように、今シーズンに向けてスプリント力を高めてきた。その成果は助走にも現れ、加速をそのまま浮く力につなげられた。その反面、浮きすぎて空中でのバランスがうまくとれず、傾いたまま着地になる跳躍が続いた。元々、着地に苦手意識があったと言うが、「着地はまだまだ課題ですけど脚が先に落ちてしまっているので、もうちょっと耐えられるようにしたらもうちょっと記録も伸びるかな」と泉谷。初戦での自己ベストタイに手応えを感じつつ、技術的な課題をクリアできれば8mを超えられるという自信につなげられた。

スピードが上がった分、ハードルの歩数に悩み

翌25日は10時50分に110mH準決勝、14時には決勝に出場。ともに雨の中でのレースとなり、決勝は向かい風だった。走り幅跳びとは違い、100mHでは予選でも準決勝でも思うような走りができていないという感覚があり、とくにスピードがついた分、スタートから1台目までの歩数で悩まされた。

予選では13秒91、準決勝では13秒95を記録した(撮影・藤井みさ)

準決勝では7歩だったが、決勝は向かい風も加味して8歩で調整。好スタートを切って最初に1台目を越えたものの、1台目と2台目で詰まった影響もあり、2台目で高山峻野(ゼンリン)に、3台目で石川周平(富士通)に並ばれ、3位でゴール。レース後、「だらしのないレースをしてしまったという感じですね。2台目でぶつけてしまったのでなんとも言えないレース。ほんと情けない」と言葉を漏らした。

昨年8月には100mで10秒37(追い風0.7m)を記録し、日本選手権の参加標準記録A(10秒40)を突破している。スプリントが上がった一方で昨年の日本インカレ以降、8歩では詰まってしまう感覚があり、7歩に変えながら試行錯誤を続けてきた。今後は7歩で練習を重ね、招待されれば8月23日開催予定のセイコーゴールデングランプリ、8月29日開催予定のAthlete Night Games(ANG) in FUKUI 2020にも挑むつもりだ。

泉谷は昨年5月のセイコーゴールデングランプリにて、2.9mの追い風参考ながら当時の日本記録を0秒1上回る13秒26で優勝している。7歩がはまれば13秒20台も安定して出せそうかという質問にも、「ちょっと言い切れないです。ハードルの技術が落ちてしまって、前できていたいいところもなくなってて、今は迷走中かな」と返した。

世界選手権棄権を経験して

昨年の日本インカレで右太もも裏肉離れを起こし、その約2週間後には世界選手権に向けてドーハに渡った。しかしレース2日前に刺激を入れた際に強い痛みを感じ、今後のために棄権を決意。現地で他の選手の動きを見ながら、「本当は自分もここで走れたはずなのに」という悔しさがこみ上げてきた。その一方で、現地で見たリオデジャネイロオリンピック110mH金メダリストのオマール・マクレオド(ジャマイカ)などの動きを動画で撮っては、自分の技術につなげることに意識を向けた。

今年3月にもまた右太もも裏を痛めてしまい、全治に8週間程度を要した。これだけ長くけがが続いたことが今までなかったため、焦りもあったが、再発しないように下半身のトレーニングにも取り組むなど、長く競技を続けるために考えるきっかけにもなった。

昨年の日本選手権110mH決勝では、高山(左)と泉谷は13秒35の日本タイ記録で駆け抜け、1000分の2秒差で高山が勝った(撮影・藤井みさ)

昨年はセイコーグランプリで注目を集め、6月の日本選手権では当時の日本記録である13秒36(向かい風0.6m)を記録するも、1000分の2秒差で優勝を逃した。そんな大学2年目を終え、3年目は改めて自分を見つめ直すときなのかもしれない。東京オリンピックが1年延期になった今シーズンは、技術面の確認をしながら記録も狙っていく。今目標にしている記録は、110mHは13秒30切り、走り幅跳びは8m10~20台、三段跳びは16m50超え。「焦らず今まで通りやっていこうと思っています」と決意を込めた。

東京オリンピックを見すえ、昨年7月から自分が好きなお菓子を禁止していたが、延期を受けて今はちょっとだけお菓子も食べている。「いろんな先輩に食べさせられるんで……。でもオリンピックもあるのでまた禁止します」と笑顔で答えた。現在地と照らし合わせながら、また新たなスタートを切る。

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