野球

特集:東京六大学 2020真夏の春リーグ

強心臓の神野太樹が決めた! 東京六大学史上初のタイブレークを法政大学が制す

サヨナラ犠飛を放って祝福される法政大学の神野太樹(撮影・すべて朝日新聞社)

東京六大学野球春季リーグ戦第3日第2試合

8月12日@神宮球場
早大 000 001 000 0|1
法大 000 000 100 1|2
(延長10回、10回からタイブレーク)
【早】徳山、山下、柴田-岩本【法】高田孝、鈴木、三浦、山下輝-大柿【二塁打】中川卓(早)

9回で決着がつかず、リーグ史上初めてタイブレークに突入。法政大学が早稲田大学にサヨナラ勝ちした。延長タイブレークは東都大学などの他リーグ、全日本大学選手権、明治神宮大会ではすでに採用されているが、東京六大学では新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1回戦総当たりとなった今回の春季リーグ戦で特別に採用した。

ナイターの中、午後6時前に東京六大学野球史上初のタイブレークに入った

無死一、二塁、継続打順で始まる延長10回からのタイブレーク。法大は早大の攻撃を無失点で切り抜けた。10回裏、法大の攻撃。7番・高田桐利(2年、広陵)は相手のバントシフトを見てたたきつけるバッティングに切り替え、サードゴロで走者を進めた。続く8番・大柿廉太郎(2年、健大高崎)は申告敬遠で一塁へ。1死満塁から9番・神野太樹(じんの・たいき、3年、天理)がセンターへ大きな犠牲フライを打ち上げ、三塁走者が生還しサヨナラ勝ち。前日の東京大学戦に続いての連勝となった。

サヨナラ打の神野は、10回表の守備から9番・ライトに入った選手だ。9回の攻撃が6番打者で終わり、10回の守備に入る前、法大の青木久典監督は投手を三浦銀二(3年、福岡大大濠)から山下輝(3年、木更津総合)にスイッチする際、同時に野手も2人交代した。「投手の山下を打順から遠い4番に入れて、打順がまわってくる9番には神野を入れました。勝負強い男なので、いいところで勝負が回ってくるのではないかと思いまして」と青木監督は話した。

想定通りの展開、速球を仕留める

神野は2年の秋までリーグ戦出場がなく、この試合がリーグ戦初出場だった。「普段からあまり緊張しない」という強心臓の持ち主だ。この展開を打席に入る前から頭の中で想定していたという。「表の守備交代で9番に入った時点で、この展開はだいたい想定していました。7番の高田(桐)は小技がうまいからまず送って、8番の大柿は申告敬遠される。満塁で自分にまわってくるだろうと」

ほぼ予想通りの展開。1死満塁、サヨナラのチャンスで自身に打順が回ってきた。3ボール1ストライクから早稲田大のクローザー・柴田迅(4年、早大学院)の放った145km高め速球を捉えた。

10回1死満塁、サヨナラの中犠飛を放つ神野

「ストレート一点張りでした。相手投手の球が初球は低めだったんですけど、徐々に上がってくるだろうと想像はついていたので、高めを狙って打ちました。高田の打席の時点で周りのみんなに『オレが決めてくる』と言っていたので、有言実行できてよかったです」と神野は笑顔で話した。

巡り合わせ悪かった早大

早大にとっては、ツキのないタイブレークになった。無死一、二塁から4番・岩本久重(3年、大阪桐蔭)が送りバントを仕掛けたが2球失敗し、ヒッティングに切り替えたところ、5-4-3のダブルプレーに。2死三塁から5番・蛭間拓哉(2年、浦和学院)もサードゴロに倒れ無得点に終わった。

10回無死一、二塁、早稲田大の岩本久重は三ゴロ併殺打

「通常の戦いではこういうことがないので、なかなか難しいですね。あそこで4番打者がバントで送る状況になるということが、早稲田にとっては分が悪かったということ。9回までにもっと点を取っておかないといけないという話です」と小宮山悟監督は話した。

山本泰元監督へ恩返しの白星に

法大の青木監督にはこの日、どうしても勝たなければいけない理由があった。試合前日の11日、恩師でもある法大野球部監督などを務めた山本泰氏が腹部大動脈りゅう破裂のため75歳で亡くなった。「山本監督には本当に厳しく鍛えていただきました。ノックが本当にうまい方で、山本監督のノックのおかげで僕は守備に自信をもつことができて、その後の野球人生を歩むことにつながったと思います。天国でこのゲームを見届けながら、最後、我々に力をくれたのではないかと思います」

目を潤ませながら青木監督は話した。恩師へ贈る大きな1勝となった。

 

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