野球

立教大学野球部新生活ルール 作成・運用のマネージャー奮闘記

新型コロナウイルス感染予防に奮闘する立教大学野球部マネージャー(写真は立大野球部提供)

「立教のコロナ対策、すごくね」「うちなんて恥ずかしいぐらい」。他大学から一目置かれているのが「立教大学野球部新生活ルール」だ。作成から運用、徹底まで、マネージャーたちが奮闘している。

優勝の喜び、勝利の美酒を後輩たちにも知ってほしい 立教大学・宮慎太朗主将

過去の生活はないと思え

立教大学野球部が活動を再開したのは6月27日。4月初めに停止したあとも寮に残ったのは就活生25人だけ。あとは帰省したり、実家に帰ったりしていた。再開直前にオンラインミーティングをして、溝口智成監督が全部員に宣言した。「過去の生活はないと思え」

その約1カ月前から、溝口監督とマネージャーたちは活動再開に向けた準備を進めてきた。「野球部として絶対に感染者を出さない。そういう独自のルールをつくろう」。監督の思いを聞いて、高橋嶺一(れい)主務(4年、立教池袋)は「これは大変なことだぞ」と思ったという。「とにかく初めてのことなので。新型コロナウイルスの知識も必要だし、どこから手をつければいいのか。そんな思いだった」

グラウンドのベンチにも密にならないよう貼り紙が。使用後は必ず消毒する

まず、「寮生活」「グラウンド」「外出」の3項目に分けて、部員の生活を洗い出した。「食堂、入浴、トイレ、洗濯……。1日の生活を想定して細かくルールを決めていった」と高橋主務は言う。最終的に選手に配布した新生活ルールの冊子はA4版で10ページになった。

たとえば、食堂ルールを見てみよう。
1.配膳 白米、味噌汁は各自でよそうことにするが、手指の消毒とマスク着用は必須に。提供口、片付け口にはビニールカーテンをつける。
2.人数制限 1テーブル4席から2席に減らし、ミーティングルームを臨時食堂として開設してその分をカバーする。
3.並び方 密にならないよう、床にテープを貼って間隔を空ける。
4.テーブルの消毒 食事が終わったら各自で消毒できるようアルコール消毒液とふきんを置く。食事時間が終わったら、最後にマネージャーが全体や備品を徹底的に消毒する。
5.服装 ユニホーム、外出した服での入室禁止。

生活しながら見直しも

これについては新生活がスタートして問題が発生した。野球部員は現在、155人(4年46人、3年37人、2年38人、1年34人)。ほぼ全員が新座キャンパス内(埼玉県新座市)にある第1寮(智徳寮)と、隣接する第2寮、第3寮(体育会寮)で生活している。

ふだんはすぐに行き来できるのだが、オンライン授業で一般学生がいない現在は、閉鎖されている出入り口が多い。開いている門を使うと、かなり遠くなってしまう。「ランチは全員が第1寮でとるんですが、他の寮まで着替えに戻っていたら大変という声が出たため、激しく汚れてなければユニホームでの入室も緩和しました」。新生活責任者の大河原すみれマネージャー(2年)は打ち明ける。

智徳寮の食堂では人数を制限し、並び方もルール化されている

食堂の入り口には注意書きが貼ってある。いかにも運動部らしい項目も。

入室の挨拶は省略
他人へのお茶出し、お水出し、配膳、下げ膳禁止

「気遣い、心遣いができる人になるよう礼儀作法は大切にしているが、今はそれより優先すべきことがあるので」と溝口監督は言う。

最初から徹底できたわけではない。ついマスクを忘れる選手、手指の消毒をしない選手、食後の消毒作業をさぼる選手もいた。「○○大学はこんなだけど」「△△大学はオッケーで、埼玉にある立教がダメなんておかしくないか」という愚痴もでた。

「学生は危機感がない。自分もそうです。ルールを与えられて縛られている。バレなければいい。つい思ってしまうんです」。高橋主務は言う。「これをやらないと、リーグ戦ができないかもしれない。その危機感、責任感を共有することを心がけました」。マネージャーだけでなく、宮慎一朗主将(4年、市船橋)、学生コーチの小松田卓宏(4年、報徳学園)と広田祥一朗(4年、新潟明訓)ら幹部部員も1人ひとりに声をかけ、ルール徹底を促してくれた。

7月から8月にかけて、ツイッターの立教大学野球部のオフィシャルアカウント(@rikkiobbc)で新生活ルールを紹介した。「公表することで自分たちの意識付けにもなると考えたからです」と高橋主務。

不要不急の外出は禁止。就職活動や治療で出かける場合は必ず事前に届け出る。外食も原則として禁止された。今のところ、違反者はいない。「風呂上がりにマスクを忘れるようなミスはあるが、根本的なとことでみんな、よく我慢がしてくれていると思う」と溝口監督は目を細めた。

新生活に慣れも、手を抜いては意味ない

8月に春季リーグ戦に無事に参加した後は、寮で食事が出ないオフ(週1日)に限って外食が認められた。ただし、部外者は入れず、部員だけで最大4人、2時間以内。飲酒喫煙は禁止という条件はついている。

マネージャーを中心に新生活ルールを徹底し、チームは8月の春季リーグを戦った(撮影・朝日新聞社)

9月19日開幕の秋季リーグ戦という次の目標に向かう中、新生活責任者の大河原さんは「新生活に慣れてきて意識が薄れている面がある」と感じている。智徳寮だと8カ所に設置している消毒液の置き方や、注意を呼びかける貼り紙の新しくしようと話し合っているという。

寮内・グラウンドの消毒作業や、消毒液などの見回り・補充……。ただでさえ忙しいマネージャーの仕事はさらに増えた。「でも、これからはコロナと共存していくしかない。私たちが疲弊して手を抜いてしまったら意味がないですから」と大河原さんは語る。

「昨日も遅くまで作業していたよね」「いつもありがとう」。選手がかけてくれるねぎらいのひと言が、何よりの活力だという。

奮闘する前列左から柿沼千尋、福家紗也子(ともに3年)、大河原すみれ、白石優依(ともに2年)、後列左から中澤智恵美(1年)、竹間心(3年)、髙橋嶺一、浅井奏子(ともに4年)、篠崎芽生(1年)の各マネージャー

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