大学陸上・駅伝

早稲田大・千明龍之佑「まだ自己記録を更新できそうな感覚」 全日本では区間賞を

けがなく練習を継続でき、自己ベストを更新できている今シーズンは、千明に自信をもたらしてくれた(撮影・松永早弥香)

早稲田大学の千明(ちぎら)龍之佑(3年、東農大二)は、7月の5000m記録会で13分54秒18という自己ベストをマークし、大迫傑(すぐる、ナイキ)が呼びかけた「Sugar Elite」の短期キャンプの選考基準タイム(13分55秒00)を突破した。「大迫選手のように世界で活躍できる選手になりたい」と大学に入ってからずっと思っていた千明は、迷うことなくキャンプに応募。大迫たちと過ごした8日間(8月17~24日)を経て、気持ち新たに来たるべき駅伝シーズンへと意識を向けている。

夏合宿ができない今夏の早稲田大、続々と自己ベストを出す選手たちの飢えた思い

大迫の姿勢に学び、同じ学生にも学ばされ

「Sugar Elite」は大学の垣根を超えて、世界で戦うために強さを求める学生たちが高め合えることを狙ったもので、今回の短期キャンプは長野県で実施された。「東京オリンピックを控えた大迫選手の元で一緒に練習したり生活したりする中で、雑誌やテレビなどを通じてとは違い、側にいられるから感じられることもあるだろうと思ったんです」と千明。気さくに話しかけてくれた大迫のおかげで「楽しいとも思える時間でした」と振り返る一方で、大迫の言葉一つひとつの重みをかみしめている。

「大迫選手はアメリカに渡るなどそれまでの日本の長距離選手とは違う道を歩んでいて、取り組みも特別なことをしているのかなと思っていました。でも『いかにいい練習をどれだけこなせるかで、競技力は変わってくる』と話されていて、『特殊なことをしていると思われがちだけど、本当にシンプルなことをひたすらやっているんだよ』という言葉が印象的でした」

大迫のキャンプに参加してから、千明は日々の練習でも、一つひとつの練習への意識をより明確にするように心がけている(撮影・松永早弥香)

同じ学生メンバーには、早稲田の同期である中谷(なかや)雄飛(佐久長聖)の他、高校の先輩でもある西山和弥(東洋大4年、東農大二)、同じく高校の後輩の石田洸介(東農大二高3年)などもいた。そんな見知った顔がそろう環境ではあったものの、それぞれの学校で特色や方針、取り組みの違いはある。「早稲田にいるだけでは感じられないことだと思いましたし、強豪校のメンバーからそんな話も聞けたのは大きかったです」。どういうことを意識ながら日々の練習に取り組めばいいのかなど、改めて競技をする上での考え方を見つめ直すきっかけになった。

立て続けに自己ベストを更新、自信をもって駅伝シーズンに

早稲田大学競走部は春以降、新型コロナウイルスの影響から大きく練習環境が制限された。2月下旬には遠征禁止、3月下旬~6月20日までは所沢の合宿所を出ての解散となった。そして今夏は合宿の許可が下りず、7月下旬より学内合宿に取り組んでいる。他大学の中には例年通り、夏合宿で走り込んでいるチームもあることを思うと、走行距離を踏めない不安はある。

それでも、限られた環境下だった春を乗り越え、5000mで自己ベストを立て続けに更新できたことは自信にもなった。とくに昨年は春先にけがをしてしまい、6月になってからレースに出始めたという状況だった。今年はけがなく練習が継続できており、それが結果につながっている。

「まだ全然、自己記録を更新できそうな感覚はあります。自粛中は目先のレースがどこになるか分からなかったので、そういう意味ではモチベーションを保つのが難しかったけど、焦らずじっくりできたというのはいいことだったのかな、と今になってそう思います。だから今年の夏も、できることを一つひとつ取り組んでいけたらいいのかな」

前回の全日本で区間3位、今年「同じ区間3位では役割が違う」

今年の早稲田大は昨年同様、学生3大駅伝で「総合3位以内」を目標に掲げている。今年は出雲駅伝が中止になったため、学生3大駅伝の初戦は全日本大学駅伝(11月1日)になる見通しだ。前回大会を振り返ると、早稲田大は1区で16位と出遅れたものの、2区で8位に盛り返し、千明が任された4区では一時、4位にまで浮上。最後は6位でゴールした。

前回の全日本大学駅伝で千明(右)は4区を任され、区間3位の走りで順位を8位から4位にまで押し上げた(撮影・安本夏望)

区間3位だったレースを振り返り、千明は「走り出してから調子がいいなって気付いたんです。1週間前には箱根駅伝予選会でハーフマラソンを走ってて、体的には結構ボロボロでした。でも走り出したら体が動いていました。あわよくば区間賞を取りたいと思っていたんですが、後半は失速してしまって……」と苦笑い。それでも、過去の駅伝の中で一番いい走りができたことで、自分の中で一つ上のレベルにいけたという手応えを感じられた。

早稲田大は千明の他にも、多くの選手が7月の記録会で自己ベストを出している。今年の全日本に向けて、「みんな(早稲田大メンバー)も去年よりレベルが上がっていますし、僕も去年と同じ区間3位では役割が違うと思っているんで」と千明。区間賞でチームに貢献し、チーム全員の力で目標の「総合3位以内」を目指す。

同期の中谷に対しては高校時代からライバル意識を持っていた。大学では仲間になったことでややライバル意識が薄れ、その間に競技力で大きく差をつけられてしまったと千明は感じている。「大迫選手のキャンプもそうですけど、(早稲田大を強くするには)僕と中谷で互いに高め合っていかないといけないと感じましたし、その意味では、今年はこれまでとはチームの意識も変わっていると思います」

千明や中谷たちの代は、自分たちが4年生になる来年は「優勝」を目指すと話している。もちろん「総合3位以内」を掲げる今年も、その思いは同じだ。

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