大学陸上・駅伝

早稲田大・宍倉健浩 ラストイヤーは箱根駅伝だけになっても悔いのない走りを

今シーズン、宍倉はトラックシーズンに結果を出したいと考えていたが、コロナの影響でまだ大会に出られていない(撮影・松永早弥香)

早稲田大学の宍倉健浩(4年、早稲田実)にとって、今年の箱根駅伝は初めての箱根路だった。過去2回はともに当日変更で出走できず。今年はアンカーを任され、駒澤大学の石川拓慎(現3年、拓大紅陵)と競り合いながら東洋大学を抜き去り、ラストスパートで石川との勝負を制しての総合7位。ラストイヤーは新型コロナウイルスの影響で大会に出場できず、全日本大学駅伝(11月1日)も前日まで教育実習という状況。だからこそ、宍倉は最後の箱根駅伝にすべてをかける。

夏合宿ができない今夏の早稲田大、続々と自己ベストを出す選手たちの飢えた思い

関東インカレ5月中止、目的を失い気持ちが切れた

最上級生としてチームを支えていくためにも、宍倉はトラックシーズンに結果を出したいと考えていた。5月の関東インカレに照準を定めて練習を積む中で、自分でも5000mで13分台を出せるところまで感覚が上がっていると実感できた。しかしコロナの影響で、所沢の合宿所を出ての解散。実家がある千葉・君津に帰り、個人練習に切り替えた。

チームからは方向性を示した上で最低限の内容だけが提示されていたため、練習はそれぞれの環境の中で自分で考えて組み立てることが求められた。宍倉は週2回のポイント練習は隣町の富津臨海陸上競技場で、普段の練習は近所を走っていたが、マスク着用が義務づけられていたこともあり、思うように練習ができない状況が続いた。それでも「関東インカレが迫っている」と自分を鼓舞(こぶ)し、限られた環境の中でできることを考えて練習を継続。しかし思っていたよりも自粛が長引き、待ち望んでいた関東インカレも5月開催中止になった。「ここで一回、気持ちが切れてしまいました」と宍倉は振り返る。

「どの大会のための練習をしていいのか分からなくなりました。箱根駅伝に向けて走行距離を踏んだ方がいいのか、まだあるトラックシーズンに向けてスピード強化をした方いいのか。はっきりできず、目的のない練習を2カ月近くダラダラしてしまいました」

合宿所に戻ってこられたのが6月20日。あまり状態が上がっておらず、十分なケアもできておらず、走れる状態ではないということが自分でも分かっていた。7月にはチームのリハビリのためという位置づけで、学内競技場での記録会が2度組まれたものの、宍倉は出走しなかった。そのレースで多くの仲間が自己ベストを出し、「このままではいけない」という危機感を抱いた。

「俺が走るようじゃ、このチームはやばいよ」

今夏は大学より夏合宿の許可が下りず、7月下旬から学内合宿に取り組んでいる。走行距離が踏めない中でどう練習をしていくか。宍倉は相楽豊駅伝監督と相談しながら、メリハリを持って練習に取り組んでいる。出雲駅伝が中止になり、チームは今、11月1日開催予定の全日本大学駅伝に向けて走り込んでいる。ただ、宍倉は10月31日まで教育実習がある。

「相楽監督からは『状況次第ではメンバーにも入れる』と言ってもらえていますし、自分も走りたい気持ちはあるんで教育実習中も準備をしようと思っています。でも、自分が走れるようじゃ、学生3大駅伝で『総合3位以内』を目指すチームとしては駄目だと思うんですよ」と宍倉。チームメートにも「全日本では俺が走る場合もある。でも俺が走るようじゃ、このチームはやばいよ」とあえて言葉にすることで、先輩としてチームに発破をかけている。

昨年、宍倉(右)は全日本大学駅伝に出走せず、学生3大駅伝は箱根駅伝のみだった。その初の箱根路で、アンカー勝負を制しての総合7位。「あの状況で自分ができることはやり遂げられたと思う」と振り返る(撮影・北川直樹)

自粛期間中もZoomを使ってミーティングをするなど、コミュニケーションをとるようにしてきた。しかし、目指す大会が見えない中で全員に共通した目標を持たせることは難しいと、宍倉も身をもって感じていた。その中でも、新体制になってから掲げてきた目標「(学生3大駅伝)総合3位以内」のために何ができるかは、常に全員が意識してきたところだ。宍倉も今は全日本大学駅伝、そして箱根駅伝を見据えている。

“谷間世代”と言われて

本音を言えば、高3の時に記録した5000m14分04秒54を更新し、大学時代の内に13分台をマークしたかったという思いはある。大会が限られてくる中で、相楽監督からも「5000mを走る機会はもうないかもしれない」と言われ、宍倉も覚悟はしている。今は大学生の内にしかできないことに意識を切り替え、最上級生として自分の姿を見せることでチームを支えていきたいと考えている。

自分が結果を出すことはもちろん、チームが結果を出せるように鼓舞することも自分の役割だと考えている(撮影・松永早弥香)

下の代には中谷雄飛(佐久長聖)や千明龍之佑(東農大二)、半澤黎斗(学法石川)、太田直希(浜松日体)などのメンバーがそろっている。「自分たちは“谷間世代”と言われているし、それは自分たちも分かっている」と宍倉は言う。もちろん悔しさはある。それでも4年生の力でチームを支え、今年こそ「総合3位以内」という結果を出せたなら、引け目を感じることなく胸を張れるんじゃないか、と宍倉たち4年生は考えている。

練習する場、戦う場が限られている今年はとくに、最上級生の力が試されるところだろう。自身の背中で宍倉もチームを前に前に押し上げていく。

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