帝京大・小野寺悠 高め合った夏合宿を経て、駅伝でも個人でも大学記録を目指す
前回の全日本大学駅伝を振り返ると、帝京大学は1区で18位と出遅れたものの、最後は8位まで追い上げ、シード権をつかんだ。「過去最高順位」を掲げているチームは、5位だった2018年大会を上回る4位以上が目標。小野寺悠(4年、加藤学園)は自身最後の全日本大学駅伝に向け、「区間賞をとってチームに貢献したい」と話す。
箱根後も距離を踏むも、ニューヨークシティハーフ中止
小野寺は今年の箱根駅伝後、招待された3月15日開催のニューヨークシティハーフマラソンを走るため、長い距離の練習を継続して調整を続けていた。しかし新型コロナウイルスの影響で、渡米当日に大会中止が決定。3月末からは帝京大の全体練習がストップし、ほぼ全員が寮に留まっての個人練習に切り替わった。個人練習中は小野寺も5月の関東インカレを目指して走っていたが、大会は5月開催中止となった。それでも「自分たちは駅伝がメインなので、駅伝に向けて、駅伝があると信じて練習していくしかない」と気持ちを入れ替え、個人練習を継続した。
チームでの練習を再開できたのは6月19日になってから。「一人の練習ではずっと引っ張らないといけなくてきつかったけど、久々に全員でやると楽だなと感じました」と小野寺。次の大会が見えない中だったこともあり、中野孝行監督はまず、選手たちに自信をつけさせることを意識しながら段階的に練習の強度を高めていった。
今夏は全体合宿の後に選抜合宿へ
今シーズンは小野寺も含め、ほぼ全員がまだ大会に出場していない。例年であればトラックシーズンでの結果を見て夏合宿の選抜メンバーを決め、先に選抜合宿を行い、その後、全体合宿へと移行していた。今年は方針を変え、新潟・妙高高原での一次合宿は全員で取り組み、一次合宿の様子を見て選抜メンバーを定め、選抜メンバーで群馬・万座での二次合宿、北海道・士別での三次合宿をこなすというスケジュールになった。
夏前は思うように練習が積めなかったこともあり、小野寺も合宿初期は例年よりもきつく感じ、体も動かなかったという。ただ、ここでの結果で選抜メンバーが決まるという状況。「ある意味、全員が同じスタートラインに立って始まったので、選抜に入りたいという気持ちで、みんな練習に励んでいるのを感じました。合宿中も『選抜合宿に行きたい』という声も後輩たちの中からあって、雰囲気が高まっているなと思いました」
小野寺も次第に調子を上げていき、三次合宿を経た今、チームの状況は60%まで高まったと感じている。「我慢強さも含めて、チームも徐々に仕上がってきました。これから試合に向けて気持ちを高めていき、全日本大学駅伝では100%にもっていきます」。合宿中も小野寺たち4年生が積極的に練習を引っ張り、チームを引き上げてきた。トラックシーズンにレースができていない不安はあるも、だからこそ、限られたレースを一つひとつしっかり走り抜くという覚悟が芽生えた。
全日本大学駅伝、1区での勝負を希望
前回の全日本大学駅伝で小野寺は3区を任され、順位を3つ上げての区間9位だった。追い上げるチームに流れを生み出す走りになったものの、個人としては悔しさの残るレースだったという。
今大会では「基本、任されたらどこでもいいけど」と言いつつも、「1区を走ってみたい」という思いはある。今年の箱根駅伝では1区を走り、トップと19秒差での区間8位で襷(たすき)をつないだ。「ラスト勝負でちょっと出し切れませんでした。自分の力が足りないところがあったので、1区のラストのスピード感は自分としてももっと経験を積みたいなというのはあります」。1区で区間賞を狙うのであれば、それは間違いなく、トップでの襷リレーとなる。帝京大初の優勝を自身の走りで引き寄せたい。
個人としても、このラストイヤーで大学記録をすべて更新したいと考えている。昨年の日本インカレで小野寺は5000mに出走し、14分06秒58をマークして10位だった。今年も出走を予定していたが、コロナ対策で出場選手数が制限され、出走できなかった。「今後も出られるレースがあれば出たいですし、5000mでは13分50秒を、10000mでは28分30秒は切りたいです」。現在の記録は5000mが13分57秒08、10000mは29分14秒22。次のレースはまだ決まっていないものの、大会の数が限られている今年だからこそ、しっかりと照準を定めて記録を狙う。
今年の箱根駅伝1区で区間3位だった池田耀平(日体大4年、島田)は同じ静岡出身で、高校時代から競り合ってきた仲だ。ラストイヤーでは勝ちたいという思いはある。そして大学1年生の時から抜きつ抜かれつしてきた同期の星岳(帝京大4年、明成)も、小野寺にとって一番身近な目標だ。ライバルたちと高め合いながら、チームとしても個人としても「過去最高」を目指す。