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東海大・西田優大と八村阿蓮 代表選手との試合を経て、「タイトル奪還」へ思い新たに

10月10日、西田たち4年生にとって待ちに待った大学バスケ「オータムカップ2020」が開幕する(すべて撮影・松永早弥香)

10月10日、大学バスケがいよいよ開幕する。今年は春のトーナメントが中止、新人戦が延期、そして秋のリーグ戦が中止になり、秋の代替大会としてトーナメント「オータムカップ2020」が開催される。開幕に先立ち、8月の「BASKETBALL ACTION2020 SHOWCASE」に出場した東海大学の西田優大(4年、福大大濠)と八村阿蓮(3年、明成)の2人に、今年にかける思いを聞いた。

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兄・八村塁のエールに「すごくうれしい」

「BASKETBALL ACTION2020 SHOWCASE」は、日本バスケットボール協会(JBA) の「バスケットボールで日本を元気に」の理念のもとで開催されたエキシビションマッチで、今大会のために代表選手が集められた。日本バスケ界がストップしてから約5カ月。新型コロナウイルスの影響を受けて無観客での実施になったが、ライブ配信は約75万視聴者数を記録した。

5人制男子には篠山竜青 (川崎ブレイブサンダース)や富樫勇樹(千葉ジェッツ)など多くのBリーガーがそろった中、西田と八村の2人もメンバー入りを果たした。「久しぶりの試合だったのですごく楽しみでしたし、日本のみなさんを勇気づけるプレーができればいいなと思っていました」と西田。八村にとっても、代表候補合宿ではない場でA代表選手とプレーできるのは初めてのこと。兄・八村塁(ワシントン・ウィザーズ)からは個人的にも、またSNS越しにも応援メッセージがあり、「兄から応援されることはすごくうれしいし、期待されている分、頑張らないといけないな」と気が引き締まった。

試合は前半(第1~2クオーター)が女子選手、後半(第3~4クオーター)が男子選手という形式で実施され、男子の試合は56-49と2人がメンバー入りしたTeam Powerのリードで始まった。2人のコンビプレーが決まって先制点。5点リードで第4クオーターを迎えたが、日本を代表する篠山&富樫の2人のPGを同時起用したTeam Actionが追い上げを図り、辻直人(川崎ブレイブサンダース)のスリーポイントで一気に逆転。最後は86-96でTeam Powerが敗れたが、「その時にできる力を最大限発揮できたと思うのでよかったと思います」と八村は振り返った。

八村は思うように練習ができなかった中で「BASKETBALL ACTION2020 SHOWCASE」を迎えるにあたり不安もあったが、持てる力は出し切れたと振り返る

Team Powerメンバーでの練習は前日のみ。内容もセットプレーの確認程度で、「イベントだから楽しんでやろう」と言い合うような雰囲気だった。それでも代表クラスの選手が集まり、久しぶりにバスケができる環境だ。試合を終え、西田は「要所要所でガチになるというか、プロ選手はさすがだな、これからそういうところに自分も入るんだな、という楽しみを感じました」と口にした。無観客での開催に、改めて「自分がバスケをできるのは当たり前のことではない」と痛感。だからこそバスケができることに感謝し、今の自分ができることを一つひとつ取り組んでいこうという気持ちが芽生えた。

陸川監督にとっても、初めての3カ月半

東海大の今シーズンを振り返ると、今年3月末から大学の体育館が使えなくなった。高齢者がいるなど家庭の事情で寮に残った選手が数人いたが、選手のほとんどは帰省。西田も地元・徳島に帰った。緊急事態宣言の期間(4月7日~5月6日)は地元の体育館も使えなかったが、それ以外はある程度は自由に使え、ウェートトレーニングも含めて練習は滞りなくできていたという。一方、八村は寮に残った。周囲には使える施設がなかったため、自重でウェートトレーニングをするなど工夫して練習を継続したが、バスケ自体はあまりできていなかった。

大学の体育館が使えるようになったのは7月20日。人数制限や接触制限はあったものの、久しぶりにみんなそろってバスケができることが素直にうれしかったと言う。バスケができなかったこの3カ月半は、陸川章監督にとっても不安は大きかった。「初めての経験でしたから、我々の立場としては焦らずに、休んだ分をどう取り戻すかを考えました」

経験のない自粛期間を経て、陸川監督(中央)はけがなく少しずつ積み重ねていくことを意識してきた

その後の大会がいつあるのかも分からない状況ではあったが、陸川監督はまず、けがをさせないようにできる範囲のところで鍛え、少しずつ積み上げていくことをテーマにしてやってきた。その一方で、学生がみんなのことを考え、行動してくれていることを実感。学生からも提案があり、一緒になってチーム作りや強化練習をしていく雰囲気が生まれた。

夏合宿、西田「やっとやり切れました」

例年より1カ月遅れの9月に、山形蔵王での夏合宿へ。ただ、それまでバスケができる環境がなかったこともあり、今年は選手からの要望で走り込みなどの基礎体力アップよりもバスケそのものに時間を費やすメニューに切り替えた。例年、この夏合宿で心身ともに鍛えられ、メンバーたちは「それを乗り越えてこそシーガルス」と感じている。今年は感染対策の観点からプレーする人数を制限したり、時間帯を分けたりする必要があったものの、改めて戦う気持ちを高める場になった。

とくに今夏の合宿は、西田が初めてフルで参加できた。1年生の時は合宿初日30分でけがをしてしまい、2年生の時はU22日本代表チームで挑んだアジアパシフィックユニバーシティチャレンジへ、3年生の時はけがでリハビリ中だった。西田も「やっとやり切れました」と話し、陸川監督も「西田が初めて全部やり切ることができて本当によかった」と言葉を重ねた。八村もこの夏合宿でチーム全体がレベルアップしたことを肌で感じていた。

「7月20日に練習を再開できてから秋を見据えて積み上げてきたので、その結果をしっかり出したい」と八村(左)

弟・西田公陽には「意地でも負けたくない」

東海大の昨シーズンを振り返ると、春のトーナメントは6位、新人戦は2年ぶり6回目の優勝、秋のリーグ戦は6位、そしてインカレでは準々決勝敗退。けがに苦しんできた西田は、このラストイヤーで何としてもリベンジしたいと考えていた。コロナ禍で大会が中止になったことへの悔しさはありながらも、「影響を受けているのは自分たちだけではないんだから」と前を向いてきた。4年生として積極的にチームに関わることを心がけ、練習が再開されてからは「今日の練習のレビューをしよう」と、寮に帰ってからもバスケ中心の生活を続けた。

とくに今年は同じチームに弟の西田公陽(1年、福大大濠)がいる。3つ違いということもあり、大学で初めて一緒に戦うことになるが、「同じポジションということもあり、弟には意地でも負けたくないです」と兄としてのプライドをのぞかせた。それでも、このコロナ禍で前期も後期もオンライン授業になった弟のことを気遣っている。

「津屋キャプテンの元で、タイトルを取り戻したい」と西田(中央)

オータムカップ2020の後には、西田にとって最後のインカレが待っている。プロを見据えている西田の胸にあるのは「タイトル奪還」への強い思い。東海大のアイデンティティーである強固なディフェンスをしっかり体現し、個人としてもスリーポイントの確率を高め、毎試合2桁得点をあげたい。「キャプテンの津屋(一球、4年、洛南)の元、強い意志で毎日しっかり取り組んでいます」

西田の集大成となるラストイヤー。試合の数が限られているからこそ、一切の妥協なく、最後まで戦い抜く。

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