「日体大がいない箱根駅伝はない」70人全員で勝ち取った73年連続本戦出場
第97回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会
10月17日@陸上自衛隊立川駐屯地周回コース(21.0975km)
6位 日本体育大学 10時間30分49秒
10月17日に箱根駅伝予選会が行われ、日本体育大は6位で本戦出場を決めた。「一丸となって全員でつかんだ6位。これが今のうちの力だなと感じております」。7月に就任した玉城良二監督は、伝統校として73年連続本戦出場を勝ち取った選手たちをたたえた。
日体大のエースとして日本人トップを
冷たい雨が降る中での予選会、日体大は2月の丸亀国際ハーフマラソンで日本人学生歴代10位タイの1時間1分36秒をマークしたエースの池田耀平(4年、島田)と藤本珠輝(2年、西脇工)をフリーで走らせ、他は集団で押し切る戦略を立てていた。池田は日本人トップが自分の役割と考え、留学生の先頭集団に続く6人の第2集団の中でレースを進めた。この第2集団のメンバー内で日本人トップを争うことになると思っていた池田は15km地点、三浦龍司(順天堂大1年、洛南)らの大集団が迫っていることに気がつき、焦る気持ちが募ったという。
第2集団は15人ほどにもなり、池田もその集団に食らいついた。ラストで勝負。そう心に決めて挑んだものの、追い上げてきた選手の勢いに勝てず、池田は7位(日本人3位)でフィニッシュ。1時間1分44秒という結果に、「日本人トップがとれなかったことは悔しいし、ラストで粘りきれなかったところもあるんですけど、トータルで見たら自分の役割は果たせたのかな」と口にした。
池田が目指していた日本人1位は最後に追い上げてきた三浦だった。三浦は初のハーフマラソンながら1時間1分41秒と、大迫傑(現・ナイキ)が持っていた1時間1分47秒のハーフマラソンU20日本記録を更新。池田は三浦に対し、「最初は目立っていなかったけど、残り1周からきたという感じで、気がついたら(日本人)1着。1年生ですごい選手だなと思いました」とその強さを認めている。
日体大2位には藤本が入り、1時間2分13秒で22位。上位10人は150位以内にゴールし、日体大は山梨学院大と1秒差での総合6位だった。
途絶えた伝統の襷、責任の重さを痛感
前回の箱根駅伝、日体大は復路の鶴見中継所で襷(たすき)が途絶えての繰り上げスタートとなった。「伝統校である日体大の責任をすごく感じました」と主将の嶋野太海(4年、拓大紅陵)は言い、箱根駅伝直後の1月4日、新チームの目標を「箱根駅伝でシード権獲得」と定めた。新型コロナウイルスの影響で全体練習ができない時期も、箱根駅伝に対する思いは揺るがなかった。
前述の通り、7月から玉城監督体制での練習が始まった。玉城監督はそれまで諏訪実高と長野東高で女子選手を指導し、2017、18年と全国高校女子駅伝では長野東高を2年連続2位に導いている。日体大は18年9月に当時の駅伝監督が解任となり、以降は選手主体での運営が続いていた。玉城監督就任後も選手主体というスタイルは変わらないものの、「自分たちも信じていく方向性が決まり、この練習はどういう意図があってやっているのかなどをより理解でき、普段の生活も監督がいることで気が引き締まりました」と、嶋野は経験豊富な指導者がそばにいることに心強さを感じている。
70人全員で挑んだ50日間の長い夏合宿
今夏は前年より2週間ほど長い50日間の合宿を設け、70人全員で取り組んだ。練習メニューには30km走を6本盛り込み、基礎的な走り込みを徹底。合宿中には学年間でのミーティングも行い、一人ひとりが自分の役割を考え、4年生たちは長い期間の合宿でもモチベーションを保てるような環境作りに心を砕いた。とくに池田は前年、故障で夏合宿を走りきれなかった。ラストイヤーこそはという思いで夏合宿に臨み、4年間で一番充実した合宿になったと振り返る。
70人全員でそんな長い夏を越え、チームは箱根駅伝予選会に照準を合わせて調整を続けてきた。嶋野は言う。「予選会を通過することは至上命題だと思っていましたし、全員がこの予選会に向けてやってきました。もちろんプレッシャーもありましたけど、OBへの感謝の気持ちを込めて、なにより日体大がいない箱根駅伝はないと思っていたので、モチベーションやプラスに考えてレースに臨めました」
73年連続本戦出場を決められたことで安堵はある。しかし、チームの目標である「箱根駅伝でシード権獲得」のためには、この結果に甘んじてはいけないという思いもある。「本大会ではシード校、また今日決まったほか9校のライバルと戦ってシード権を取りたいです」。嶋野はまっすぐな目で答えた。
箱根駅伝予選会から2週間後の11月1日には全日本大学駅伝が控えている。「正直、この予選会がすべてだと思っていましたので、全日本に関してはまったく考えておりません」と玉城監督。前回の全日本大学駅伝では地区選考会を勝ち上がり、3大会ぶり42回目の出場をつかんだ。前回大会は14位。玉城監督の経験が合わさった日体大は今年、伊勢路でどんな走りを見せてくれるのだろうか。