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オータムカップ、東海大が大東大を圧倒して優勝 強固な守りで「昔の東海」に回帰

東海大のスーパールーキー河村(左)は「しっかりと東海大学らしいディフェンスを意識できたことがこの結果につながりました」と決勝を振り返った(すべて撮影・松永早弥香)

オータムカップ2020 決勝

11月7日@茨城・つくばカピオ
東海大 79-47 大東文化大

関東大学男子バスケットボールのリーグ戦代替大会であるオータムカップは11月7日、決勝を迎えた。対戦カードは東海大vs大東文化大。強固なディフェンスから流れをつくった東海大が試合をリードし、79-47で大東大を圧倒した。津屋一球(4年、洛南)が東海大の主将就任直後に宣言した、「昔の東海、ディフェンスからみんなで走ることを取り戻す」という言葉を体現したような試合だった。

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ディフェンスから試合の流れをつくる

試合の序盤こそ両チームともに攻めのリズムがつかめず、ロースコアな展開だったが、東海大は攻守の素早い切り替えから攻撃のチャンスを増やす。東海大・西田優大(4年、福大大濠)のスリーポイントも決まり、22-11とリードして第1クオーター(Q)を終える。

第2Qは東海大・佐土原遼(3年、東海大相模)の体を張ったプレーから先制点をもぎ取り、坂本聖芽(3年、中部第一)も積極的なゴール下へのアタックでチームを盛り上げる。大東大のインサイドには身長205cmのクリバリ バトゥマニ(1年、中部第一)が控えていたが、八村阿蓮(3年、明成)が粘り強いディフェンスを続け、インサイドで大東大に優位を与えない。東海大はさらに、大倉颯太(3年、北陸学院)と河村勇輝(1年、福岡第一)のツーガードで攻め、40-25とリードを広げて試合を折り返した。

決勝で佐土原(左)は攻守にわたって活躍し、両チーム最多の20得点をあげた

第3Qも東海大の勢いは止まらない。とりわけ、リバウンドからボールをフロントコートに運び、そのままシュートまで決める佐土原のプレーにチームは沸き、この試合で佐土原は両チーム最多の20得点をあげた。第4Qは大東大に5得点しか許さず、東海大はさらに19得点を積み上げ、79-47と大差で勝利した。

津屋主将がチームを変えた

試合後、東海大の陸川章監督はまず、大会が開催されたことへの感謝の気持ちを述べ、「これがなければ、とくに4年生は何もない時期になったので」と、ラストイヤーを戦う4年生への思いを口にした。東海大は今年3月末から大学の体育館が使えなくなり、選手のほとんどが帰省。チーム練習が再開されたのは7月20日になってからだった。大会中止・延期が続いた中でなんとか開催された今大会は、2週間おきに試合が組まれるというスケジュールだったが、東海大は試合を重ねる度にチームの完成度を高め、決勝で圧倒的な力を発揮した。

チームを変えた選手として、陸川監督は主将の津屋の名前を挙げた。昨年12月のインカレ終了後に津屋は主将に就任。最初の練習で冒頭の通り、東海大のアイデンティティーである強固なディフェンスを全員に意識させた。「彼が声を出してディフェンスから盛り上げるなど、本当にみんなを引っ張ってくれました」と陸川監督もたたえる。

そんな津屋に対し、河村は「頼もしい存在です。キャプテンなしではここまでのチームにはなれなかった。感謝の気持ちもすごくありますし、シュート精度が高くて、泥臭い部分でチームを鼓舞(こぶ)してくれます」と話す。とくにルーキーの河村は上級生に気を遣ってしまうこともあるが、その度に津屋は「思い切ってやれよ」と声をかけてくれるという。

津屋(28番)は主将としてチームを盛り上げ、試合中もチームを鼓舞し続けた

今年のチームは昨年に比べてサイズダウンしたものの、昨年にはない強みが今のチームにある。河村が加わったことで攻守の切り替えやオフェンスでのスピードアップ、さらに坂本が見せるアグレッシブなアタック、持ち前のバスケIQの高さを生かした大倉のゲームメイク……。陸川監督は「我々のいいところは、先発とバックアップメンバーの差がなくできているところです。だからプレーの質が全然落ちない」と今年のチームの強さを誇る。

大倉と河村のコンビネーション

スター選手がそろう今年の東海大の中でも、とりわけ大倉と河村のコンビネーションには大きな注目が集まっている。「ハーフコートでは大倉で落ち着いた流れをつくり、河村でギアチェンジをできます」と陸川監督。さらにツーガードになれば、大倉は2番(シューティングガード)としてリングに走り、リバウンドなど得点以外の場面でも体を張ったプレーで役割を果たす。

大倉と河村はプライベートでも仲がよく、河村は大倉に対して「価値観が合うというか、寮の部屋も隣で、だいたいどちらかの部屋にいます。オフコートではバスケットの話よりは私生活の話、たまにバスケットの映像をどっちかが見ていた時に会話があったりして、プライベートで一番接しています」と語る。大倉からの声かけで普段は大倉のことを「颯太」と呼んでいるものの、「でもメディアの前では『颯太さん』と言うようにしています」と笑顔で明かした。

コロナ禍で芽生えた危機感

今シーズンは新型コロナウイルスの影響でチーム練習ができない日々が続き、河村など1年生はチームへの合流が遅れた。その分、個人練習の間もコミュニケーションをとるように務め、練習が再開されてからは練習が終わった後もフィードバックを欠かさなかった。「学生コーチにもすごい時間をとらせてしまっているんですけど、みんなで集まってミーティングをしたり、1年生は分からない部分を積極的に聞いて勉強したりとか、チームとしてケミストリーが起きました。それは去年になかった部分だと思います」と大倉は言う。

例年と違う今年を戦うにあたり、全員にある種の危機感があった。だからこそ一人ひとりがよりよい練習、試合ができるように考えて行動し、それが今のチームの強さにつながっている。

圧勝した決勝に対しても「決して満足のいく結果ではなかった」と大倉(左)は言う

今大会を振り返り、大倉は「今日のゲームもそうなんですけど、今大会を通して全然伸びしろのあるチームだと思っていますし、決して満足のいく結果ではなかったです」とコメント。決勝ではディフェンスでやってきたことを出せた反面、オフェンスでボールがつながらなかったりシュートも単調になったりする部分もあり、得点効率が想定を下回っていたことを課題に挙げた。

現在地に満足していない東海大はここから更に強化を図り、12月、チームにとって最大の舞台であるインカレに挑む。

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