アメフト

桜美林大学のカギを握る新人QB水越直、TOP8にスリーネイルズクラウンズ旋風

TOP8に初めて挑んでいる桜美林大学の1年生QB水越直(撮影・すべて北川直樹)

アメリカンフットボールの関東大学TOP8に初めて挑んでいる桜美林大学スリーネイルズクラウンズが奮闘している。開幕戦(10月17日)はリーグ3連覇を狙う早稲田大学に6-9と惜敗したが、2試合目の明治大学戦(同31日)を17-7で制して初勝利を挙げた。桜美林が秋に甲子園ボウル出場経験もある明大に勝ったのは初めてという。勢いを増すチームのオフェンスの司令塔を任されているのが、ルーキーの水越直(なお、横浜)だ。

関口順久監督、涙の初勝利

記録は平凡、プレーはキラリ

まだ、1年生。水越は明大戦の開始1プレー目で投げたパスを、相手の守備選手にインターセプトされる洗礼を浴びたが、崩れることなく冷静にオフェンスを引っ張った。試合を通し、パスは20回投げて9回成功し1タッチダウン(TD)、ランは2回走って14ydと、記録上は特筆する成績ではなかったが、随所に好プレーが光った。

迷いなく、思い切りのよいパスを投げ込む

物おじせずに思い切りよくパスを投げ込んだ。ピンポイントのパスを、WRがはじいてしまうこともあったが、第4クオーター(Q)には勝ち越しのTDパスを決めた。一度手渡したボールを水越に戻し、そこからパスを投げる、「フリーフリッカー」というスペシャルプレーだった。シチュエーション的に、緊張してもおかしくないプレーだったが、設計通りにフリーになったWR宮澤稜(2年、埼玉栄)に、しっかりとパスを通した。

1試合を通じて、「ノーハドル中心で決め打ちのプレーが多かったので、余計なことを気にせずにやれました」と、落ち着いて攻撃を組み立てた。関口順久監督は「言ったことを素直にやってくれるので、僕らはやりやすい。(高校時代)あまり高いレベルでプレーしたこともないが、能力は高い。できることからちょっとずつやっている。ハドルを組んでゆっくりやると、いろんなものが見えてくる。(ノーハドルが)当たっている」と信頼を置く。

横浜高からアメフト、雰囲気合う桜美林へ

水越は、横浜高校でアメフトを始めた。ポジションは一貫してQB。チームとしては目立った成績を残せなかったが、高校2年の冬には神奈川県選抜に選出され、優秀選手賞を受賞。神奈川県では好QBとして鳴らした存在だった。進学先を選ぶにあたり、複数の大学から誘いを受け、いくつかの大学の練習に参加。同じQBの野地健太(4年)ら、横浜高の先輩がいて、「フットボールをしやすい環境」と、雰囲気が自分に合った桜美林を進学先に選んだ。

冷静なプレーで信頼も厚い

新型コロナウイルスの影響で、例年通りの練習を積むことはできなかったが、自粛期間中に体重を約10kg増やした。ウェートトレーニングを重ね、身長176cmに対し体重を80kgまで増量。大学アメフトで戦える体を作り上げた。グラウンドでのチーム練習が例年より遅い始動となったこともあり、水越がレギュラーの座をつかんだのは9月半ばだったという。

関口監督が「OL(オフェンスライン)に4年生が多く、そこを中心に頑張ってくれている」と言う下支えと、室伏夏清主将からの「緊張する部分もあると思うが、レシーバーのことを信じてしっかり投げ込め」との激励は大きいが、水越の迷わずハイテンポに正確なパスを投げる能力は、TOP8の大学の中でも遜色ないだろう。

「展開的に熱くなってしまう選手もいましたが、自分が乱れるとチームの士気に影響するので、常に落ち着いてやるよう心がけていました」

水越の言葉からは、1年生らしからぬ風格と、司令塔としての自覚が垣間見える。

名QB菅原俊先輩の背中追う

目指すのは、「走って投げれるQB」。横浜高の先輩にあたる、元日本代表の菅原俊(法政大学→オービックシーガルズ)と、関西学院大学で同じ背番号3を着ける奥野耕世(4年、関西学院)を目標に掲げている。

表情から充実感が漂う

くしくも、現在桜美林のオフェンスコーディネーターを務める富永一コーチは、菅原がオフェンスを率いたオービックが、日本選手権(ライスボウル)で初の4連覇(2011~14年)を達成した際にオフェンスコーディネーターを務めていた。富永コーチの元で、偉大な先輩の背中を追う戦いは、始まったばかりだ。

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