陸上・駅伝

特集:第97回箱根駅伝

箱根駅伝・関東学生連合の目標は総合10位以内 「何を成し遂げたいか」を考えて

この日初めてリアルで集まった学生連合のメンバー。授業で欠席した者もおり14人での集合写真に(すべて撮影・藤井みさ)

11月23日、関東学連主催の10000m記録挑戦競技会のあと、箱根駅伝関東学生連合チームの合同取材が開催された。メンバーが発表されてから、監督・コーチを含め全員が直接顔を合わせるのはこれが初めての機会。今年はどんなチームになっていくのか、監督を務める筑波大学の弘山勉監督とキャプテンの杉浦慧(慶應義塾大3年、成蹊)に話を聞いた。

データで示した「戦えるチーム」の姿

取材の前にはミーティングがあった。ここで弘山監督は全員の持ちタイムや、今年の箱根本戦のデータ、各校の予選会のトップ3、ボトム3などのデータを示し、「充分戦えるチーム」と学生たちに伝えた。このミーティングでは選手一人ひとりに、どの区間を走りたいなどといった目標ではなく「この関東学生連合の活動を通して何を成し遂げたいか」を発表してもらう時間を設けた。「結果的にはなると思いますが、そのために何をするか、というのを考えてほしいと思いました」と弘山監督。

関東学生連合チームのルールとして、1回でも箱根駅伝を走ったことがある選手はメンバーに選出されない。筑波大学は前回の箱根駅伝に出場したため、予選会上位の成績を残した選手はこのルールにかかり、出場が叶わなかった。自分のチームの選手が一人もいない状態に、弘山監督ははじめ戸惑いもあったという。「引き受けるからには一生懸命やろうと切り替えました。オープン参加とはいえど、上を目指して頑張ってもらいたい。各校のエースがこの活動を通して成長してもらって、自分のチームに帰ったときにいい反応が起こって、学生長距離界、箱根駅伝がもっと熾烈な争いになればいいと思います」

予選会11位とチーム内最高位だった麗澤大学の難波天。支えてくれる周りの人のために頑張りたいと語る

前回箱根駅伝に出た経験が生かせるのでは? と尋ねると「まだ1回ですからね」とかわしつつ、「ベテランがいますから」とコーチを務める中央学院大学の川崎勇二監督の方をチラリ。「箱根駅伝に監督として参加できることは経験値を上げることになるし、一生懸命やらないと経験値にはなりませんから」と前向きな姿勢を示した。

戦い方としてはまだわからないとしながらも、予選会上位10人の平均タイムが62分43秒というレベルの高さに触れ、今後適材適所で選手たちを見極めていきたいと口にした。

キャプテン・杉浦は「僕がやるべきなんじゃないかな」と立候補

関東学生連合チームのキャプテンとなった杉浦。学生主体のzoomミーティングで「誰が主将になるか」という話が出た際に、自分から立候補して決まった。慶應長距離ブロックの主将を務めている杉浦は、ここで主将を務めることにも抵抗はなかったという。「それに今回は若いチームなので(4年生3人、3年生4人、2年生6人、1年生3人)、キャプテンやってる選手もいないんじゃないかなと。それを考えると僕がやるべきなんじゃないかなと思いました」とも言う。実際に今日初めて顔を合わせてみて、「まだみんなシャイかなと思います。内に秘めたガツガツ感が出てくるといいなと。もっとコミュニケーションを取っていけたらいいなと思います」とすでにキャプテンらしい言動を見せる。

今まで杉浦は揉まれた環境にいたことがなかった、という。今回、各大学のエースが集まる環境に刺激をもらえるのではないか、自分の殻を破るチャンスなのではないかとも考えている。箱根駅伝を通して得たいものについてたずねると「各校のトップ10が出てくる贅沢なレースなので、打ちのめされても上のレベルを感じたいです。今の課題として理想がないということがあって、もうちょっとリアルに目指すべき姿が見つかったらなと思います」と口にする。杉浦の自己ベストは10000m29分22秒26、5000mは14分32秒。記録会では戦えないビッグネームの選手と同じ土俵に立てるのも駅伝の魅力だ。

「ダークホースとして適任です」

持ち味について聞かれると「粘り強さとかスピードはないんですが、きちんと準備できた時は150%の力を発揮できるところ。ダークホースとして適任です」とちょっと変わったことを言う。ピーキングに自信がある? 「というよりは、はまった時の伸びしろです。はめないといけないんですけど(笑)」。当日まで最善の準備を尽くして臨むつもりだ。「なので、ダークホースとどんどん言っていただいて、警戒してほしいです。是非お願いします」と取材陣への売り込みも欠かさない。

慶應の「K」ポーズで撮影に応じてくれた杉浦

受験時には筑波大も受けたが不合格だったという杉浦は、「弘山さんのもとで学びたいという気持ちもあったので、今回の機会でいろいろなものを吸収していきたい」と貪欲な姿勢を見せる。弘山監督は選手主体で任せてくれると言い、「積極的に動けたら」と前向きだ。例年よりさらに集合機会が少ないため、Zoomを活用するなどして積極的にコミュニケーションをとり、お互いを知っていくことがまず重要だと考えている。「知った上で個々の強みが最大限発揮できるように、みんながのびのびと満足できるチームかつ目標達成意欲が高いチームになるといいと思います」

慶應を代表して走ることについては「『陸の王者』として恥じない走りをしたいと思っている」という杉浦。「慶應は箱根駅伝プロジェクトを始めて、いま大学長距離界の中で最もタイムの伸び率が上がっています。その勢いを見せたいし、それが今後のチームに還元されたらいいと思います」

関東学生連合チームの目標は「総合10位以内」。選手たちが話し合って決めた。しかし弘山監督は「あとは明確に順位を決めるのか、漠然と10位以内と決めるのかは学生次第ですね」と含みをもたせた。少ない機会を最大限に生かし、「チーム」として箱根路に挑む。

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